第54話 災禍の女神はよろこんでシナリオを守りたい
「だめよ、デゼル、シナリオを無視するなんてお行儀が悪いわ? あなたはここにさらわれて来るんでしょう?」
エリス様の手の中に、禍々しい首飾りが生まれて浮いたの。
「デゼルにプレゼントよ、災禍の首飾り」
首飾りがすいっと空を渡って、私の首にかかった。
「うふふ、その首飾りはネプチューンにしか外せない。シナリオ通り、あなたがネプチューンに犯られたら外れるわ。その首飾りがかかっている間は、神与のスキルも魔法も使えない。ステキでしょ? 『夜明けの守護』だけはあなたのスキルじゃないから使えるけど、あなたのダメージをガゼルに引き受けさせるなんて、デゼルにできるかな?」
怖くて震えが止まらないの。
災禍を封印するまで、サイファにもガゼルにも会えない。
災禍を封印するスキルは存在しているの。祝福条件にロックがかかっていて、私はまだ、取得できていないけど。
エリス様に遭遇後、十三日経過でロックが外れて、祝福条件がわかるはずなの。
「デゼル、公国滅亡の阻止は随分、周到にうまくやったじゃない? ネプチューンはおろか、闇の十二使徒まで取り込むなんて。そのあなたがどうして、デゼルの闇落ちイベントに限って『グノースに近づかない』なんて、消極的な対処しか取らなかったのかしら。あなたをマワしてくれるグノースのならず者達は、この辺りで多くの人間を殺めたり苦しめたりしているのよ? ガゼルに言って、討伐隊を派遣してグノースの村を助けてあげようとは、どうして、考えなかったのかしら。ほんとはマワされたかった?」
「――!!」
私、思いつかなかった。
エリス様の仰る通りよ、そうするべきだった。
私、怖くてグノースに近づきたくなかった。
水神があるから、襲われるはずがないと思って、踏み込んで考えなかった。
戦争が起こらなければ、私がグノースに連れてこられるはずもないと思っていたのよ。
「でもね、やっぱり、おイタはいけないわ。すべてはシナリオ通りに――まずは、ティニーに死んでもらいましょうね?」
「やめて!!」
エリス様の手の中に、ドス黒い闇が生まれたの。
だけど、その闇は直後、光に撃ち抜かれて消えた。
「主神ッ!」
「ルシフェルには帰ってもらった。エリス、すでに、書き換えられたシナリオへの手出しはルール違反だ」
「なによ、ボロゾーキンがッ!」
「ルシフェルに至っては瀕死だよ、帰って見てきたら?」
「カエレ」
エリス様が主神に向かって闇を薙ぐようにすると、主神は光になって消えてしまったけど、ティニーを助けにきてくれたの……?
「よかったわねぇ、デゼル? ティニーを殺しちゃいけないんですって」
よかった。
「言っておくけど、あなたのシナリオはまだ、書き換わっていないわよ? 主神は、あなたがあたしに何をされるか承知で、十三霊の中にあたしを置いているの。あなたを惨たらしい目に遭わせるためにね?」
まるで、お茶会をしましょうと誘うようにエリス様が笑うの。
落ちていた汚い縄が浮いて、私の手をそばにあった杭に縛りつけた。
「十日もまともに食べさせてもらえなかったら、死んでしまうわ? 悪くて汚い男達に、よぉくご奉仕して、食べ物をもらいなさいね? 彼らの言うことをよぉく聞いて、悦ばせてあげるの。デゼルの大切なサイファとガゼルを守る方法を教えてあげるなんて、あたしってホント親切」
「いや……」
「いや? 好きにしていいのよ。他人のために、何にも、我慢することなんてない。舌を噛み切って二度死ねば、まず、ガゼルが死んで、二度目にサイファと一緒に死ねる、ステキでしょ? 二人とも永遠にあなたのものよ」
ガタガタと震えながら泣く私のあごを取って上向かせたエリス様が、妖艶に笑ったの。
「あら、デゼルったら、嬉し泣きまでして感激してくれるの? ほら、悪い男達がきたわ。首飾りが外れたら、心のままに、デゼルが望むことをなさいね? どんなことをしたって許されるわよ。だぁれも、あなたほど酷い目には遭わないもの。そんなのいやよね? みんなを、あなたと同じくらい不幸にするべきよ、その権利がデゼルにはあるの。首飾りが外れる日が、とっても楽しみ」
エリス様の姿が消えた。
すぐに、見知らぬ男達が私を取り囲んで、そのうちの一人が、下卑た笑いを浮かべて、私をつかみ上げた。
「いやぁああああああ!!」
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頂いたご感想
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★☆ しき様より ☆★
エリス様の能力はレベチですね…。
この段階のエリス様は正に完全な悪という印象を受けます。
この物語でまだ敵とか悪みたいな対象って出て来ていなかった気がするので、ここからが第一戦という感じでしょうか?(三章があるので、ルシフェル様がラスボスなのかなというメタ推理をしています。)
やっぱりシナリオの強制力には抗えないのか…こんなに頑張ったのに……
嫌がらせの仕方も、自分が傷つけられるより他の人が傷つけられる方が辛いというデゼルさんの考え方をよく理解したやり方でとてもタチが悪い…。
しかも自分が死んだらサイファ様とガゼルさんも巻き添いになるから、死ねない生き地獄ですよ……惨い仕打ちです…
★☆ 作者より ☆★
読み応え抜群のご感想、ありがとうございます♪(*´▽`*)
エリス様、印象は極悪だけど、なにげにゲームのルールを守っているし、騙し討ちもしないし、いつでも本当のことしか言わないあたり、完全な悪と呼ぶには崇高かもしれません。
物語の真ヒロイン、真の悪役令嬢にあらせられる気がします✨(笑)
というわけで、はい、初めての強敵です!(`・ω・´)9
(さいふぁ様にとっては、むしろ、デゼるんと出会う前のジャイロ&スニールとの闘いが一番厳しかったかもしれませんが……なにげに瀕死……)
戦闘そのものは、デゼるんが無双した(?)のとか、カットされた闇の十二使徒の闇落ち阻止ツアーでこなしてきているのですが、エリス戦はまさにレベチです。
これまでの敵のレベルなんて1~2桁だったのに、エリス様は9999レベルらしいです。(デゼるんとさいふぁ様は第二章の時点で30レベルあたり)
フフフ、ルシ様は最後まで、見~て~る~だ~け~♪(  ̄∇ ̄)
ならば、ラスボスは果たして……!?
エリス様はルールを守るので、シナリオの強制力に抗う方法は何を隠そうあったのですが、どんなに頑張っても、正しい方法を思いつけないことはありますよね……。
ガゼるんに頼んで、ならず者たちをあらかじめ討伐してもらっておく、という極めてまっとうな正攻法でシナリオの書き換えは可能だったのですが。
そして、恐るべきことに、とてもタチが悪くて惨い仕打ちなのに、さいふぁ様的には、エリス様はよいお仕事をなさったそうです。
デゼるんがどんなに辛くても苦しくても死んじゃったらいやだったから、死ねない生き地獄でよかったそうです。
さいふぁ様、恐ろしい子!( ゜Д゜) サスガドS






