第52話 公子様は悪役令嬢をどうしても守りたい
「ねぇ、デゼルってそれ、いつも、何してるの? 僕が見てもいい?」
「えっと……」
学校をやめても、勉強は遅れないように自習で進めていたサイファが、私を振り向いた。
攻略ノートはすでに三冊目。
パラパラとノートをめくったサイファが、軽く目を見張った。
「闇の神の予知って、すごいんだね。ティニーがいつどうして亡くなるかまで、あらかじめ、わかってたんだ。予定日を過ぎてるから、ティニーはもう、助かったんだよね?」
「うん」
私がにっこり笑うと、サイファも笑ってくれた。
真っ青な顔をしたガゼルが訪ねてきたのは、そんな、平和な時間のことだった。
「デゼル、少し、つきあってもらいたいんだけど」
「ガゼル様? サイファも一緒に――」
「いや、今日はデゼルひとりで」
私がサイファの顔を見ると、サイファもうなずいてくれた。
「わかりました。どちらへ?」
「公邸に跳べる?」
何度か、ネプチューンとの打ち合わせにガゼルを連れて帝国に跳んだことがあるから、ガゼルはクロノスのことを知っているの。
私はガゼルにうなずいてから、サイファを振り向いたの。
「サイファ様、行ってくるね」
「うん、気をつけて」
「時空【Lv2】――目標、公邸」
公邸に跳ぶと、急ぎ足のガゼルに手を引かれて、私は初めてガゼルの私室に通された。
うわぁ、綺麗。
大理石の壁と柱に、落ち着いた雰囲気の布がかけてあって、神様が住む場所みたい。
「デゼル、ごめんね」
「えっ……」
唇が重なって、すぐに、舌が絡んだ。
「んっ……!」
身体が動かない、ガゼル!?
「夜明けの守護をかけるから。デゼルが魔法を使おうとしたら、今みたいにして止める」
「やっ……! ガゼル様、どうして!?」
夜明けの守護って、契るってことよ!?
いつかと同じ、ガゼルにされると苦しくて、すぐ、魂を縛られたように身体が動かなくなるの。
身体の自由がきかない私を、ガゼルが寝台に横たえた。
衣装を解いた胸元に口づけられて、私は悲鳴を上げて懇願したの。
「やめて! ガゼル様、お願い、やめて!」
「聴こえるんだ、声が。とても、空耳だとは思えない」
声!? 声って何の!?
「――災禍の女神エリスが、君をさらう」






