第47話 隻眼の魔女は闇の皇子が恋しくてならない
刺客に襲われた時にはどうなることかと思ったけど、ネプチューンとの初顔合わせは首尾よく終わって、皇宮内の時の精霊との契約にも成功したの。
皇帝とか皇太子とかの暗殺そのものはかんたんなのよ。
顔さえわかれば、水神にモード・チェンジして水道管から侵入するもよし、公式行事の場を狙うもよし。
水神にモード・チェンジしている間は無敵な上に、小人のようにも、巨人のようにもなれるの。
そして、水神の力をもってすれば、血液を意のままにできるから、考えると激烈に気分が悪くなるけど、その意思さえあれば秒殺できると思う。
だけど、私が独断でそんな真似をしたら、かえって戦争になりかねないもの。
シナリオ通り、ネプチューンが帝位に就く意志を固めて、皇帝と皇太子を暗殺するよう、闇の十二使徒に命じるのを待つ必要があると思うの。
それに、私は正直――
私に暗殺なんてできるのか、自信がないの。
襲撃された時にも、私とサイファは攻撃に回れなかったもの。
攻撃なんて考えたら思考がフリーズしてしまうから、とにかく、なかまを守ることを考えてた。
「デゼル」
帰りの船の中。
ユリシーズが私達の船室を訪ねてきて、話があると言うから、その間、サイファにはジャイロの船室の方にいてもらうことにしたの。
襲撃された時の、初めての呪殺がショックだったのかなと思った。
「デゼル、闇巫女様の奥義はあといくつ……?」
え。
「ええと、あと二回よ」
途端に、ユリシーズが恐怖に彩られた目で私を見たの。
「一回、使ったの……? もう……? ああ、使わないで、使わないで、私の分を残しておいて……」
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闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv4】になりました。
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えぇっ!?
「お願いよ……」
美しい片目から涙を伝わせて、ユリシーズが私を見たの。
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闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv5】になりました。
闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv6】になりました。
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えぇえっ!?
「あの、大丈夫よ。一回は予定通りなの。次はユリシーズの予定だから」
闇幽鬼のレベルアップ条件って何なの!?
「私、今日、ネプチューン様をお守りしたよね……? ネプチューン様、見ていて下さったよね……? ああでも、この醜い顔を見られてしまった! こんな顔じゃ、こんな顔じゃ!」
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闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv7】になりました。
闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv8】になりました。
闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv9】になりました。
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「ユリシーズ、落ち着いて!」
なんか、闇幽鬼のレベルアップって喜んじゃいけない気がする!
これ、おめでたくないやつよね!?
「素敵な人だった。とても素敵な人だった。私、あの人の傍にいたい……傍にいたいのに……! こんな顔じゃだめ、こんな顔じゃだめ!」
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闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv10】になりました。
闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv11】になりました。
闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv12】になりました。
闇幽鬼ユリシーズがレベルアップしました。闇幽鬼【Lv13】になりました。
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わぁあああ!
怖い、なんか怖い!
さっきまで【Lv3】だったのに、もう【Lv13】なの!?
「ユリシーズ、大丈夫、大丈夫よ! 約束する、必ず、ユリシーズのために残しておくから!」
「本当ね? デゼル、本当ね? 嘘ついたら針千本……呪殺してあげる……痛く、惨たらしく、苦しみ抜くように呪殺してあげるから……!!」
ユリシーズの泣きはらした、真っ赤な目が私を見たの。
――怖いッ!
これがもう一人の悪役令嬢ユリシーズ、隻眼の魔女なの!?
「私、疲れた……」
うん、疲れたと思う。
短時間に10レベルもアップするような精神状態だったんだもの。
クライスといい、ユリシーズといい、やっぱり、闇の十二使徒は違った。
サイファやガゼルが懸命に努力して到達する強さを、軽々と超えていくんだって実感した。






