第45話 悪役令嬢は悪役令息との交渉に臨む
「どーも。助かった、部屋をかえるか」
うんざりした顔で、ネプチューンが適当に言う。
それは、そうよね。
城内で刺客に襲われてたんじゃ、うんざりもする。
幸いなことに、ネプチューンは今の騒ぎで私達を敵じゃないと判断してくれたらしくて、今度は衛兵のいない、広めの客間に通されたの。
**――*――**
「で? お子様がたがオレに何の用だ」
ガゼルの目配せを受けて、私が一歩前に進み出た。
「私は闇巫女デゼル。単刀直入にうかがいますが、先ほどの刺客は、皇太子ウラノスによって差し向けられたものでしょうか?」
ネプチューンが軽く目を見張って私を見た。
「なぜ、そう思う?」
「私達は闇の神の警告により、三年後、皇太子があなたにオプスキュリテ公国への侵攻を命じることを知りました。ですが、皇太子の狙いは外征のどさくさにまぎれてあなたを暗殺することに他なりません。それは成功しませんが、あなたが城を留守にしている間に、ユリア様が皇太子に襲われ殺害されます」
さすがに、ネプチューンが椅子を蹴立てた。
「なぜ、ユリアのことを知っている!」
私は答えず、静かに、ネプチューンを見詰めた。
だって、答えは最初に言ったもの。闇の神の警告よ。
「――まぁ、オレとしても、ウラノスの仕業だとは思うが。だったら、どうなんだ?」
「私達は公国の滅亡を望みません」
「そうだろうな」
「あなたが皇帝と皇太子を打倒し、帝位に就く意志を持たれる場合には、公国から闇巫女デゼル、闇幽鬼ユリシーズ、研究員クライス・アスターの三者があなたの陣営に与し、あなたに帝位を献上する心づもりであることを、お伝えに参りました」
「物騒な話だな」
唇の端を引き上げてニヤリと笑ったネプチューンが、私ではなく、クライスに聞いた。
「そうでない場合には、オレの招へいには応じないというわけか? クライス」
クライスもニヤリと不敵に笑って応じた。
「我が主はオプスキュリテ、闇巫女様のご意向がすべてであると申し上げておきましょう」
クライスって、闇落ちしてなくてもマッド・サイエンティストの片りんを見せるのね。
とにかく、この段階でピストルを開発してしまっているクライスをネプチューンには渡せない。
後でクライスによくお願いして、ピストルの技術は封印してもらわなくちゃ。
「おまえもか? ユリシーズとやら」
じっと、瞬きも忘れたようにネプチューンを見詰めていたユリシーズが、彼から目を離さないままでうなずいた。
「用向きはわかった、考えておこう。まさか、今すぐに決断しろなんて話じゃないだろうな?」
「はい。貴国がオプスキュリテ公国への侵攻をしないで下さるのなら、永遠に、決断して頂かなくても構いません」
何が面白いのか、ネプチューンが声を立てて笑ったの。
「なかなか、わかりやすい話だ。気に入ったぞ、デゼル」
ちょいちょい、とネプチューンに手招かれたけど、私、ネプチューンには近寄りたくないの。
だって、ゲームでもどうしてなのか、デゼルを副官にしているんだもの。
さっきも、あんなに大変な時に、私に見惚れていたし。
嫌な予感がするのよ。
だから、私は話題を変えた。
「よろしければ、ユリア様に私を会わせて頂けないでしょうか。私だけで構いません」
ユリアね、と、ネプチューンが不思議そうに私を見て、
「まぁ、おまえだけならな」
意外にも、快諾してくれたの。
そういえば、さっきの戦闘でも、私はほとんど何もしなかったものね。
危険はないと判断してもらえたなら、よかった。
「ユリア、闇巫女様のご指名だ、隣室で話してくるといい」
えっ。
いたの!?
部屋の隅に控えていた侍女が一礼して、隣室に続く扉を開いたの。






