第44話 悪役令嬢は初めての戦闘で無双する
いよいよ、ネプチューンとの謁見の日。
こちらの人数が多いものだから、私達は略式の謁見の間に通されたの。
客間ではちょっと狭いもの。
「これは、どういう趣向かな? オレは子供に用はないんだが?」
わ、さすがファン投票一位の悪役令息。
見た目だけなら超イケメン。
態度や姿勢はあまりよくないのね。
小国の年少の公子とはいえ、ガゼルがいるのに、ネプチューンは偉そうに足を組んで座って、値踏みするように私達を見たの。
子供がたくさんで、さすがに驚いてるみたい。
「初めまして。私がガゼル・オーブ・オプスキュリテ。この度は謁見に応じて頂き、御礼申し上げます」
ネプチューンがどんな態度でも、ガゼルは普段通りの礼儀正しさを崩さなかった。
ガゼルが本題に入ろうとした、その時よ。
謁見の間に配されていた衛兵たちが、一斉に剣を抜いたの。
どうして!?
今、ガゼルを殺す必要なんてネプチューンにはないはずよ!?
そう思ったら、舌打ちしたネプチューンもまた剣を抜いてマントを払い、背後を取られないように壁際に下がったの。
衛兵たちの狙いはガゼル――
だけじゃない、むしろ、ネプチューン!
「右を崩して右奥へ!」
ガゼルもまた急いで剣を抜きながら、私達に指示したの。
最終的に皆殺しにするつもりにしても、刺客たちはまずネプチューンとガゼル、それにガゼルの近衛を狙って斬りつけてきた。
そうか、私達が右奥へ向かうなら、つまり、逃げないなら女子供は後回しよ。
即断で、すごい判断力。
「闇の神オプスキュリテに願う、夜明けの祝福を与えたまえ!」
近衛とジャイロに右を任せて、私達を左から庇うようにしながら、ガゼルが高らかに声を張り上げた。
子供に見えても、私達は強いわよ!
たぶん、子供達の中ではガゼルが一番、戦闘力を持たないの。
庇ってもらってる場合じゃない――と、思った私が間違ってた。
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夜明けの祝福により、ガゼルのすべてのステータスが一時的に三段階、パラメータが120上昇しました。
夜明けの祝福により、デゼルのすべてのステータスが一時的に二段階、パラメータが80上昇しました。
…
夜明けの祝福により、クライスのすべてのステータスが一時的にニ段階、パラメータが80上昇しました。
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吹くかと思った。
なにそれ!?
ネプチューンを除く、仲間の八人全員にステータス上昇!?
しかも、上昇幅がえげつない! パラメータまで上昇するの!?
「うらぁあああ!」
ジャイロが小学生のくせに、一撃で刺客を斬り倒した。
私がサポートして右を突破。
ていうか、ネプチューン!
あなたが一番、この中では強いはずでしょ!?
夜明けの祝福でうっかり魅力がSSランクに到達した八歳児に見惚れてないでよ!
刺客の何人かも見惚れてくれてるのはいいけど!
ガゼルに斬りつけてきた刺客の一人をサイファが止めた。
サイファの武器は懐剣と小盾で、サイファはそもそも攻撃の意志をまだ持てないから、戦力にはなれないけど、ガードくらいはできるのよ。
それにしても、ガゼルが強い。
剣術と光魔法で敵を寄せつけないのよ。
公子様とはいえ、立派なモブなのに。
ガゼルの指示通り、右奥にユリシーズとクライスを庇う態勢ができた時だった。
ユリシーズが呪文の詠唱を始めて、ネプチューンを狙っていた刺客の一人を呪殺したの。
血の色の闇が刺客の足元に生まれて、狙われた刺客が何本もの漆黒の手によって闇の底なし沼に沈められる様子は、さすが闇幽鬼、見ていて、背筋が凍るような光景だった。
刺客たちはもちろん恐慌状態よ。
何事かと思うわよ。
そうかと思えば。
ズガーン!!
すごい銃声が響いた。
ちょっと待って、クライスがピストル持ってる!
この世界にそんなもの、まだないはずよ!?
クライスがピストルを開発するのはクライマックス、ヒロインがネプチューンの城に乗り込む頃よ!?
そんなもの、今から量産されたら、この世界の軍事バランスが崩れる!
もう、刺客たちは完全に恐慌状態。
蜘蛛の子を散らしたように逃げ出し始めた。
すごい、私達、無傷で戦闘終了した。
ネプチューンも絶句して私達を見てる。
あ、私だけ、ほとんど何もしなかった。
でも、もしかしたら私が一番、活躍したの?
かなりの数の敵が、私に見惚れてぼんやりしてた。
何この、突然のロリ・ワールド。
うん、子供達の中ではガゼルが一番、強かった。






