第42話 闇主覚醒
翌朝。
鳥の声が聞こえて、サイファの腕の中で目を覚ました私は、小さな悲鳴を上げてしまったの。
だって、もう、クロノスが解けて八歳のデゼルに戻ってしまっていたけど、一糸まとわぬ姿だったんだもの。
あわてて身を起こしかけた私を、サイファがつかまえたの。
抱き締められて、キスで口を塞がれていなかったら、私、絶対に悲鳴を上げてた。
甘くて深いキスを、寝てるのか起きてるのか、よくわからないサイファがしてきて、身体を絡めてきたんだもの。
ようやく、離してもらう頃には、私、耳まで赤くなって震えてた。
「デゼルって可愛いね」
「サイファ様……」
涙ぐんだ私が服を着るのを、サイファったら、にこにこ眺めてるのよ。
「よかった」
「?」
手の平から闇の魔力を舞わせたサイファが、初めて見せる妖艶さで笑ったの。
サイファが普段着じゃなく、闇主の礼装を身にまとって、私に礼を取って見せたの。
私、胸が高鳴って、サイファに聞こえてしまうんじゃないかと思った。
昨日、贈ってくれたイヤリングを、サイファが私の耳に飾って、微笑んでくれた。
「これなら、デゼルを守れそう。覚醒した闇主って、こんな感じなんだ」
おいでって、サイファが手を差し伸べてくれたから、その手につかまったら、力強く抱き締められたの。
私も、昨日までのサイファと違うと思った。
優しいのは同じなの。
でも、闇主として覚醒したサイファに抱かれると、私、胸が高鳴るの。
こんな感じ、今までなかった。
私の部屋でサイファのステータスを確認してみたら、すべてのステータスが二段階上がって、闇主【Lv19】になってた。
好感度が★四つで、信頼度も☆四つ。
前は星二つずつだったから、随分、上がってた。
嬉しくて、頬が緩んでしまうの。
――あれ?
いつの間にか、『なかま』にガゼルが追加されてた。
あれ!?
私は目を疑ったの。
だって、闇主【Lv1】なのよ!
式典の時にキスされたから――!?
夜明けの公子【Lv24】で、好感度が★五つ、信頼度も☆五つ。
……振り切ってる……。
えっと、でも私、サイファと結婚してるのよね?
ガゼルは正式にサイファを私の闇主と認める承認を出してくれたはずよね?
……。
ええと、見なかったことにしよう。
私が持っている好感度や信頼度じゃなくて、私に向けられている好感度や信頼度だもの。
サイファがどうして、昨夜、契りたかったか、私、たぶんわかってるよ。
明日から豪華客船でトランスサタニアン帝国に向かって、十二日には、第二皇子ネプチューンに会う予定なの。
三年後とはいえ、サイファはネプチューンがガゼルを斬り殺す未来を見たんだもの。
闘えないままで、ネプチューンとガゼルが対面する場に居合わせたくなかったんだと思う。
夏休み中、時の精霊を探して回った時にも、ガラの悪い連中に絡まれる度に撃退してくれたのはジャイロなの。
まともに地図を読めるのはサイファだけで、すごく助かってたんだけど、サイファはたぶん、悔しかったんだと思う。
戦闘訓練でも、ジャイロが死鬼に覚醒してからは、サイファではもう、ジャイロの相手にはならなかったみたいなの。
サイファはきっと、ジャイロに守ってもらうんじゃなく、ジャイロと一緒に守りたかったのよね。
私のことも、ガゼルのことも、他の誰のことも。
ジャイロの方は死鬼【Lv18】だから、ほぼ、拮抗した。
ゲイルを倒したくて、ジャイロったら、夏休みは宿題そっちのけで、戦闘訓練に励んでいたのよ。最後の日に、サイファの宿題を借りて写してた。
小学生あるある過ぎて、見つけた時には笑っちゃった。
サイファに飾ってもらったイヤリングが、鏡の中に揺れていて、綺麗だった。
私、サイファが好き。
誰よりも、何よりも。
どうか、ずっと、ずっと、サイファの傍にいられますように――






