【Side】 主神 ~神様は心配です~
「……オーブ絡みの仕様は、少々、趣味が悪くありませんかね」
例によって、私が考えたロマンティックな仕様に不満そうなのは軍神マルス。
「そんなこと言ったって、ガゼルが闇主に選ばれないなんて事態は、想定外だったんだよ」
デゼルが公子様を闇主に選ぶことを前提に、それはロマンティックな仕様を色々と用意してあげていたのが、見事に、裏目に出てしまった。
他の貴公子達も、闇主がただの公民でさらに小学生とか、誰も本気にしていなくて、暴走しそうだったんだよね。
七歳とはいえ、六霊の祝福を集めたデゼルの魅力は既にAランク。
礼法も修めてしまって、なにげない立ち居振る舞いさえ美しくなってしまっているから、大変なんだよ。
ガゼルが庇ってくれなかったら、それはもう、ややこしい事態になっていただろう。
「それに、デゼルが『六霊の祝福』をそろえてしまったものだから、ちょっと、心配なんだよね」
「あー」
「五霊までにしておいてくれたらよかったんだけど、でも、デゼルは闇の十二使徒の闇落ちを阻止したがっていたし、そのためにはアテナの祝福は必須だし……」
「あー」
「デゼルが公国の滅亡の阻止に成功するまでの間、ルシフェルがこちらの動きに気づかなければいいんだけどね」
私は深々とため息をついた。
十三霊のうち、十二霊までは私が創造した善なる神霊なんだけど。
一霊だけ、ルシフェルが創造した殺戮の女神が混ざってるんだよ。
ルシフェルが創造した世界を999界に渡って滅ぼした、恐るべき災禍の女神エリス。
「絶対に気づきそうな感じはしますね」
「やっぱり?」
「あの方が、三年もこの動きに気づかない間抜けだとは思えませんからね」
「やっぱり?」
エリスの祝福を受ける条件が、条件というより制限式でね。
完全攻略ガイドでは ≪Secret≫ 項目なんだけど、デゼルが十三歳になるか、六霊の祝福を集めるまでは、エリスの手出しは制限されていたんだ。
デゼルが十歳になる前に六霊の祝福を集めてしまったのは、もう、完全に神様の想定外。ナイトメアモードもいいところだ。
「まぁ、万が一の事態への備えだよ。ガゼルが持ってるオーブの加護が必要になるかもしれないから。私がルシフェルをしっかり撃退できればいいんだけど」
はぁ、と私が嘆息すると、マルスが容赦のないことを言った。
「ルシフェル様に限って、要のタイミングで主神に撃退されるような攻め込み方はしてくれない気がしますね」
「……マルス、私をディスっているのかな?」
「いえ、率直な所感ですが」
そりゃね。
創世からこの方、ルシフェルが私に痛む傷を負わせずに撤退したことなんてないからね。
私のワールドで争っている以上、私が有利なはずなのに、どうしてなんだ。
ルシフェルっていうのは、一柱の異世界の神。
この世界の神は、正確には私一柱なんだ。だから、ルシフェルとは私しか闘えない。
マルス達がルシフェルと闘おうものなら、赤子の手をひねるように滅ぼされてしまうくらいには、強烈で残酷な魔神だよ。
ルシフェルがこのゲームに気づいて手を出してきたら、ちょっと、私でもデゼルを庇い切れるかわからなくなる。
だから、念のためにね。
災禍の女神エリスの前には、気やすめ程度の備えに過ぎないけど、それでも、ガゼルがデゼルに施せる『夜明けの守護』がデゼルの生死をわけないとも限らない。
デゼルがサイファを大好きな気持ちは知っているんだけど。
ごめんね、デゼル。






