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悪役令嬢と十三霊の神々 ~悪役令嬢はどうしても町人Sを救いたい ~  作者: 冴條玲
第一章 悪役令嬢はナイトメアモードを選ぶ
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第38話 四年二組のクラス発表『水神様への願い事』

 四年二組のクラス発表『水神様への願い事』は、初日、河川敷に堤防を整備するところから始まったの。


 十数年に一度の大氾濫で、何度も、農地が水浸しになったり、家が流されたりして、流域の住民を苦しめてきたんだって。

 本番の前に少し試してみたけど、水の力ってすごいのよ。

 河川敷くらい大量の水があれば、簡単に地形を変えられるの。


 初日、クラスの代表として壇上に上がったのはスニール。

 うふふ。

 スニールったら、大公陛下の御前での発表ってことで、公費でつくってもらった一張羅のスーツを着て、どこからどうみても七五三だった。綺麗にとかした前髪を七三にきっちり分けて、真っ赤な顔をして震えながら、それでも胸を張って、発表してた。

 かわいい。


 何を隠そう、本人がやりたがったのよ、初日の代表生徒を。

 読み間違えないように、発表の練習も熱心にしてた。

 最終日とかの代表になって、自分が発表する前に行事がキャンセルされたらいやなんだってスニールは言ってて、みんな、そんなの心配性だって笑ってたけど。

 私だって、サイファとデートできるとなったら『明日にでも!』と思うから、スニールの気持ち、わかるな。

 来週とかじゃ、サイファの気が変わったらどうしようって心配だもの。

 そこ。毎日してるじゃんって言ったの誰よ。

 今日まで毎日一緒でも、明日も一緒がいいの! それはそれ、これはこれなの!


 自己肯定感の低いスニールにとって、一生の宝物になる晴れの舞台よ。

 これからもつらいことはたくさんあって、何度も(くじ)けてしまうと思うけど、大公陛下の御前で代表生徒として願い事を読み上げて、その願いを実際に叶えてもらって、それでたくさんの人が守られた、自分にもそんな日があった、今日の記憶を、つらい時には思い出して、『ゴミじゃない自分』を諦めないで欲しいの。

 そうしたら、もう、サイファにしていたような嫌がらせはしないはずよ。

 自分をゴミだと思っているから、ああいうことをするんだもの。


 私が助けてあげられるのはここまでだけど、強くなってくれるといいな。



 二日目は港と生け()の整備。


 三日目は地下水脈を利用しての井戸の掘り上げ。

 地下水脈を掘り当てるんじゃなく、地下水脈から掘り上げたの。


 どれも、水神の力をもってしても、数時間で完成できるような仕事ではなくて、私がおおまかに地形を整備した後、やり方がわかっている人達に任せたの。

 たくさんの人達に喜んでもらえたし、水神の力を操るいい練習にもなって、一石二鳥よ。



 最終日の発表はマリアで、堂々とした発表が好評を博したの。

 お姫様みたいなドレスなんて生まれて初めてよって、マリア、すごく嬉しそうだったのに、ジャイロの朴念仁(ぼくねんじん)()めないもんだから台なしよ。

 ジャイロったら、三日にも渡ってあっちこっち行くのはかったるいって顔して、うんざりしているばかりで、せっかく、マリアが綺麗にしているのに見ちゃいないんだもの。



 それでも、うまくいったと思っていたのよ。

 断り切れなくて、仕方なくデゼルとして出席した授賞式までは。



 三日間、発表の間はずっと水神の姿でガゼルの傍についていた私だけど、大公陛下にまでお出まし頂いた行事の中心となった闇巫女がまったく姿を現さないんじゃいけないって、押し切られてしまったの。

 中心になったのはマリアなんだけどな……。

 私、そう言ってはみたんだけど、公家につなげた水神様が何を言っているのかって、私の言い分は一笑にふされてしまったの。



 壇上でガゼルにちょっと最敬礼して、トロフィーを受け取るだけのことがどうしてそんなに嫌なのかって、マリベル様は不思議がってた。

 嫌に決まってるじゃないの。

 本物の水神様を見られると聞いた人々が詰めかけて、ものすごい大群衆なのよ?

 私、この三日間、デゼルとしては出席さえしていなかったのに、どうして代表なの。気まずいにもほどがあるのよ。

 しかも、『公国の秘宝と(うた)われる美しさの闇巫女様を見られる』なんていう、意味のわからない(うわさ)まで流されていて、みんな、水神様がもういなくなっても帰ってくれないの。私なんてただの七歳児なのに、闇巫女様だからってありがたがって、みんな、私をパンダかコアラみたいに思っているの。


 あぅ、イヤだよぅ。

 はやく、神殿に帰ってサイファに甘えたいよぅ。


 大群衆に迎えられ、恐怖と緊張で震えがきている状態で、私は倒れそうになりながら、ガゼルに最敬礼したの。

 ガゼルからトロフィーを受け取って、御前からさがろうとしたの。

 その私を、どうしてか、ガゼルが引き寄せたのよ。

 何が起きているのかわからなくて、恐怖のあまり声も出ない私を、ガゼルが壇上で抱き寄せて、そうして――

 私を軽く抱き上げるようにしたガゼルに、唇を重ねられたの。


「――っ!?」


 どうして!?

 どうして、ガゼルが私にキスするの!?

 授賞式の最中に、何かの縁起かつぎなの!?


 それに、ガゼルのキス、サイファのと全然違う!

 サイファのキスは甘くて優しくて、すごく心地好くなるのに。

 ガゼルのは、苦しいの。

 私は恐怖と混乱でいっぱいになって、苦しいのに、すごく苦しいのに、魂を縛られたように体が痺れて動かなくて、ただ泣いて震えるしかできずにいたら、ガゼルが舌まで挿して絡めてきたの。


「んっ! ん――っ!!」


 ガゼルから灼熱の何かを送り込まれて、気が遠くなって、私の意識は途切れたの。

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