第34話 悪役令嬢は町人Sと二人で出国する無茶はしなかったけど
「そういえば、サイファ様の誕生日はいつ?」
「7月27日。デゼルは?」
「9月7日」
「乙女座だね、デゼルらしい」
サイファは獅子座なのね。
もっと、おとなしい星座のイメージだったけど、でも、よく考えてみたら獅子座でも違和感ないかも。
ジャイロとも、ガゼルとも、怯まずに対決できるんだもの。
サイファの誕生日、知ってたらお祝いしたのになぁ。
少し、遅れてのお祝いでもいいのかな。
「サイファ様、誕生日はどんなお祝いが嬉しい?」
「デゼルがいてくれたら、嬉しい。時の神殿まで一緒に歩いた日だったから、楽しかったよ。デゼルは?」
今、私達はカモメが飛んでいたりする海の上。
さすがに豪華客船とはいかないけど、客船に乗ってトランスサタニアン帝国の港を目指しているの。
三日の船旅になる予定で、今回はジャイロにも一緒に来てもらったんだけど、客室で唸ってる。船酔いよ。
ガゼルが知ったら怒るかなぁ。
サイファと二人で出国するような無茶はしないようにと言われて、ジャイロと一緒の三人にしたんだけど。
ジャイロがよもや、船酔いで戦力外になるとは思わなかったのよ。
「私も、サイファ様が傍にいてくれるのが嬉しいな」
客室に戻ると、私はガゼルへの手紙の続きに取りかかったの。
なるべく、対面で伝えるつもりだけど、対面だと、伝えないといけないことを漏らすかもしれないから。
「読んでもいい?」
「うん」
少し目を通したサイファが、目を見張って辞書を手に取った。
サイファ、本格的に読んでくれるのね。
私も辞書を頼りながら、何時間もかかって下書きしたの。
船上じゃ字が乱れるから、戻ってから書き直すつもりよ。
「デゼルって、ほんとにすごいね」
「どうかな、サイファ様の目から見ても、ガゼル様に失礼じゃないかな」
「僕だったら、こんな手紙をもらえたら嬉しいよ。――だけど」
「よかった。――だけど?」
「余計に、つらくはなりそうかな」
ほどほどにねって、サイファが頭をなでてくれた後、ジャイロの様子を見に船室を出て行ったの。
**――*――**
ジャイロがおえぇえええってなってたこともあって、無事にトランスサタニアン帝国の港に辿り着くと、時の精霊との契約だけ済ませて、私達はいったん、クロノスで闇神殿に戻ることにしたの。
この先はさすがに、ジャイロが本調子じゃないと危ないもの。トランスサタニアン帝国は今、皇帝と皇太子の悪政の影響で、とても、荒れているの。
戻るとすぐ、私はマリベル様にあるものを頼んだの。
サイファに喜んでもらえるといいんだけどな。






