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悪役令嬢と十三霊の神々 ~悪役令嬢はどうしても町人Sを救いたい ~  作者: 冴條玲
第一章 悪役令嬢はナイトメアモードを選ぶ
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第24話 怖い夢

 私、本当は怖いの。

 ユリシーズの火傷をすぐに癒さないのは、ネプチューンが帝位につくまでの間は、シナリオの呪いがまた発動するかもしれないと思うから。

 癒したそばから、また、隻眼になるような何かが起きたら目も当てられないもの。

 だから、ユリシーズを癒すのは、シナリオの変更に成功したという手応えを得てからにしたいの。

 水神の奥義は三度までしか、使えないんだもの。


 それに、デゼルの悲劇も――

 水神様の祝福もあるし、デゼルの闇落ちイベントは阻止できるはずだと思うんだけど、なんだか、不安なの。

 隻眼になったユリシーズを見て、運命の強制力を思い知ったのかもしれない。

 だから、サイファになら、もっと、されたかったのかもしれない。

 初めては、サイファがいいの。

 私のぜんぶを、サイファがしたいようにして欲しいの。


 私、もしも、デゼルの闇落ちイベントを阻止できない時には、死ぬつもりでいた。

 でも。

 サイファは公国と運命を共にするんだと思ってたけど、ユリシーズのモブリーダーはまず間違いなくジャイロだし、だとしたら、デゼルのモブリーダーもサイファよね?

 サイファがデゼルのモブリーダーだとしたら、シナリオの通りになってしまった時にも、私が生きていれば、サイファも生き残れる――

 それを考えたら、ゾクっとして、怖くてたまらなくなったの。

 だって、そうだとしたら。

 私が死を選んだら、サイファを殺すことになる。


「デゼル、どうしたの?」


 いつの間にか、私、泣いてた。


「わかんない、怖い夢を見たの――」



  **――*――**



 ヒロインが最初にデゼルと出会うのは、聖サファイア王国の森の中。

 デゼル率いる闇主軍団にヒロインが襲われるの。

 だけど、これは、旅人ネルに扮したネプチューンがヒロインに近づくための狂言よ。

 苦戦するヒロインをネルが助けに入って、闇主軍団をネルが斬り捨て始めると、デゼルが冷たく笑って言うの。


「あら、聖女様は運がいいのね。今日のところは退くことにしましょう」


 デゼルを庇ったザコの闇主が斬り捨てられても、顔色一つ変えずに、モブリーダーの闇主、つまり、サイファと一緒にデゼルは去る。

 この邂逅で、デゼルは魅了スキルで逆ハーレムをつくったあげく、そのメンバーを使い捨てる冷酷な魔女としてヒロインに認識されるの。



 ヒロインが二度目にデゼルと出会うのは、とある小さな村が山賊に襲われた時のこと。

 村人に助けを求められたヒロイン達が駆けつけると、山賊とデゼルの闇主軍団が戦っていて。

 駆けつけたヒロイン達に気づくと、デゼルは逃げ遅れた小さな子供をさらって、サイファと一緒に去ろうとするの。

 この時、ヒロインはデゼルの魅了を解くための杖を手に入れているから、させまいとしてサイファに使うんだけど、サイファには効果がないのね。

 どうして、とあせったヒロインが同じ杖を闇主軍団に使うと、魅了を解いてもらってヒロインに感謝するはずの闇主軍団が、山賊と一緒になってヒロインに襲いかかってくるの。

 デゼルの闇主軍団は、魅了が解けるとかえって悪逆の限りを尽くすという、衝撃の事実が明らかになるイベントよ。

 さらわれた子供だけど、ヒロインが村に戻ってみると、無事に家に帰っているの。


「やさしいおねえちゃんと、おにいちゃんがたすけてくれたの。おねえちゃん、きれいだったぁ」


 子供はこれしか言わない。

 このイベントから、次のイベントまでの間にオプスキュリテ公国の廃村を訪ねると、近くの洞窟のかべに『しにたい』って、子供の字で書かれていて。

 廃村にぽつんと佇む老婆が、その洞窟について話してくれるの。


「公国が滅ぼされた戦争の時にねぇ、綺麗な銀色の髪の可愛い女の子が、ならず者達にさらわれてきて、あの洞窟でひどい目に遭わされていたみたいなんだよ。だけど、誰にもどうすることもできないでいたら、ある日、黒髪の立派な青年が現れて、次の日には、ならず者達も女の子もみんないなくなっていた。争った跡さえなかったのが不思議でねぇ」


 それから、『壊れたイヤリング』をくれるの。


「あの洞窟で拾ったんだけど、あなたは旅をしているようだから、いつか、落とし主を見つけたら返してあげておくれ」


 どう考えても、無理のある『老婆のお願い』なんだけど、ゲームだから落とし主は見つかるし、落とし主は壊れたイヤリングを探しているの。

 そう、デゼルよ。

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