第22話 町人Sは悪役令嬢を守りたい
「デゼル、どうして、僕に前に出るなと言ったの」
マリベル様がユリシーズとジャイロを休ませるため、別室に連れて行くと、サイファが静かな怒りを感じさせる口調で言った。
「ジャイロに殺されると思ったの」
「デゼルは!」
「私は闇巫女だから、魔法には強いよ。――サイファ様、本来なら死鬼と互角の闇主であるあなたが、ジャイロに敵わないのは、私と契っていないから。サイファ様はまだ、闇主になりきれていないの。サイファ様を闇主にする私の力が足りないの」
強く、私の肩をつかんだサイファが、私を壁に押しつけて口づけてきた。
「…ん……」
押しつける腕が震えて、サイファが泣きながら、私の肩に顔を埋めた。
「――ごめん、こんな……でも、肝心な時にデゼルを守れない闇主なんて!」
「そんなこと、ないよ」
「今! デゼルがジャイロに切り刻まれるのを、黙って見てるしかできなかった!」
サイファが優しくて、私に向けてくれる想いが心地好くて、私はこんなに幸せなのよって、どうしたら、伝えられるんだろう。
「サイファ様は、サイファ様がいなかったら、私がどうなるか知らないから、つらいんだね」
「え……?」
「私、たたかえないよ。サイファ様が知っているデゼルは、サイファ様に支えられたデゼルなの。私は、サイファ様がいなかったら、学校にさえ行けないもの。行かなかったんじゃない、怖くて、行けなかったの」
「……」
「ねぇ、サイファ様。デゼルと一緒に『時の神殿』を探しに行こう?」
「時の神殿?」
私も、怖くなった。
死鬼が覚醒した時、本当に、サイファを殺されるかもしれないと思ったの。
ジャイロはサイファを殺そうとしてたわけじゃない。
それでも、殺されておかしくなかった。
私が闇の十二使徒を助けて回るのに、サイファを連れて行ったら――
ジャイロなんかより、ずっと、力のある人達が相手だもの。
『闇の十二使徒』が覚醒するようなイベントを阻止して回るのに、サイファを連れて行くことがどんなに危険なことか、思い知ったの。
今の私とサイファが何をしたって、サイファが闇主として覚醒することはできないけど。
時空の神クロノスの祝福を得られれば、もしかしたら――
「サイファ様、今夜は嵐だし、泊まっていく?」
「――そうだね」






