第19話 隻眼の魔女
ずぶ濡れのサイファ達の姿と、焼けただれたユリシーズの顔を見て、私は息をのんだ。
確かに、ユリシーズは隻眼の魔女。
ゲームでも、美しい顔の右反面が無惨に焼けただれていたけど、私、ユリシーズの悲劇はデゼルと同じタイミングだと思っていたの。
戦争のせいじゃなかったなんて!
とにかく、みんなに体を拭かせて、着替えを渡して、侍女に温かい紅茶をいれてもらった。
私はその間、ユリシーズに手持ちの回復魔法と生命の水【Lv1】を試してみたけど、激痛と熱を引かせることしかできなかった。
マリベル様にも頼んでみるけど、たぶん、この火傷は癒せない。
癒せるなら、ゲームに隻眼の魔女として登場するはずがないもの。
ジャイロとユリシーズに、なんて、声をかけてあげたらいいの。
私、認識が甘かった。
「親父が、夕飯をつくってくれてた姉ちゃんを襲ったんだ。姉ちゃんが抵抗したら、あのケダモノ、姉ちゃんの顔をかまどの火に押しつけやがって……!」
チクショウと、ジャイロが何度も、何度も、こぶしを床に打ちつけた。
公国が滅亡するのは三年後。
だけど、闇の十二使徒の悲劇は、私が最後なのかもしれない。
私が最後に敵兵に連れ去られて、ネプチューンに助けられるまで、何夜にも渡って、ならず者達の慰み者にされて。
ネプチューンの魔力でデゼルの魅了スキルが覚醒した後、ならず者達はデゼルの闇主軍団となって、その多くがネプチューンの捨て駒にされるけど。
デゼルの参加で闇の十二使徒がそろうということは、残りの闇の十二使徒は、すでに悲劇に見舞われて闇落ちした後だったということなの?
それはつまり、今まさに、悲劇が進行しているということ――
どうしよう、私、『星空のロマンス』はそこまでやり込んでいないの。
攻略対象者のデータならともかく、闇の十二使徒のフレイバーテキストまで覚えていないし、名前だって、うろ覚えなのよ。
どうすることもできないの!?
私以外の闇の十二使徒が、闇の十二使徒になる前に助けてあげることはできないの!?
キンコーン
==============================
闇巫女デゼルに戦神アテナからの祝福が与えられました。
女神の祝福により、すべてのステータスが一段階上昇し、戦術【Lv1】が付与されました。
戦術【Lv1】により、スキル割り振りシステムが開放されます。
==============================
どういうこと!?
「……何か、方法がないか占ってみる」
私は寝室から客間に持ってきた水晶に手をかざし、ヘルプを起動してみた。
【スキル割り振り】 SPを消費して、神に与えられたスキルのレベルを上昇させます。SPは承認を獲得するごとに、10P付与されます。
念のためステータス画面を確かめると、確かに、【SP20】の表示があった。
たった今、アテナの祝福を与えられたことには意味があるのかしら。
ついさっき、私が考えたことって――
やり方次第で、闇の十二使徒を助けてあげられるの!?
私が今、持っている『神に与えられたスキル』は、『叡智』『容姿端麗』『カリスマ』『生命の水』『戦術』の五つ。
レベルを上げるべきはどれ?
……。
ここはもう、賭けよ。






