第14話 悪役令嬢はいつの間にか叡智を授かっていた
システム画面が開くなら、もしかして、私の部屋の水晶からメニュー画面を起動できるのかもしれない。
『星空のロマンス』のセーブオーブそっくりの水晶がデゼルの部屋にもあるの。
私の部屋のセーブオーブに手をかざして、闇の精霊に呼びかけてみた。
【メニューを選択してください】
やっぱり、起動した!
メニューは上から「ステータス」「なかま」「十三霊の神々」「ヘルプ」になってる。
悪役令嬢だからか、ゲームと全然ちがう。
まずは、ステータス画面を開いてみた。
レベル7で、ほとんどのステータスがF(下から二番目)なのに、知力と魅力がB、魔力と抗魔力がCなのね。
『なかま』も気になるけど、さっきの、メッセージが気になる。
『十三霊の神々』のメニューを開いてみたら、選べる神様が三霊。
確か、『慈愛と正義の女神ユースティティア』だったよね。
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【祝福と承認を与えられています】
【祝福】 すべてのステータスが一段階上昇し、カリスマ【Lv1】が付与されました。
【承認条件】 慈愛と正義を示すこと
【取消条件】 慈愛と正義に背くこと
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私、慈愛とか正義とか示したつもり全然ないのに、神様は何をもって示されたと判断したの!?
取消条件も、こんなの、基準が全然わからないよ。
悪役令嬢に慈愛と正義を要求するってどういうことなの。
他の神様も見てみよう。
えーと、『知恵の女神メティス』を選べるみたい。
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【祝福と承認を与えられています】
【祝福】 知力が三段階、魔力と抗魔力が二段階上昇し、叡智【Lv1】が付与されました。
・叡智 … ヘルプ画面を開けるようになります。
【承認条件】 ≪ Secret ≫
【取消条件】 承認条件を満たさなくなること
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ちょっと、待って。
承認条件の確認ができないのに、取消条件が『承認条件を満たさなくなること』なの!?
しかも、叡智ってヘルプ画面なんだ……。
あとは、『愛と美の女神アフロディーテ』を選べた。
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【祝福を与えられています】
【祝福】 魅力が三段階上昇し、容姿端麗【Lv1】が付与されました。
【承認条件】 ≪ Secret ≫
【取消条件】 国を傾かせること/世を絶やすこと
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あ、うん。
この取消条件は、ゲームオーバーになっても仕方がないと思う。
なんだか、承認条件も取消条件も、わからないのが多いなぁ。
ゲームオーバーって、どうなるんだろう。
今こそ叡智の出番?
私はヘルプ画面を開くと、『ゲームオーバー』で検索してみた。
【ゲームオーバー】 主神に三つの願いを叶えてもらう資格を喪失します。
あれ、なんだ。
割と、どうでもいいや。
現世に帰されるとか、そういうのかと思ったんだけど。
うん、これなら、条件がわからないまま一発アウトでもいいや。
そういえば、どうしたら現世に帰れるのか聞いてないけど、むしろ、強制的に現世に帰されることってあるのかな。
帰りたくないな。
だって、現世にはサイファがいないもの。
今度は、『現世』で検索してみた。
【現世に戻るには】 ゲームクリア時、または、ゲームオーバー時に『現世に帰還』を選択しましょう。
よかった、強制的に現世に帰される心配はないのね。
よし、じゃあ、最後に『なかま』を見てみよう。
なかまのメニューを開いて、私はかたまった。
サイファがいるのは、もちろん嬉しいのよ。
会ってもいないユリシーズが入ってるけど、まぁ、さっき、登場したものね。
ジャイロがいるのも、ギリギリ、許せる。
……スニールが『なかま』になってる……。
なんだろう、このガッカリ感。
サイファを開いてみると、好感度が★二つで、信頼度も☆二つ。
それぞれ五つが上限だから、今のタイミングなら上々だと思う。
レベル10なのね。年齢かな、これ。
ジョブは闇主で【Lv3】。
ほとんどのステータスが最低のGだけど、私もさっきまで、そうだったのよね。
一段階上がってFだもの。
アルファベットのステータスとは別に、数値のパラメータもあるんだけど、『星空のロマンス』のパラメータは忘れちゃったなぁ。
いいのか悪いのか、よく、わからない。
ジャイロもレベル10だった。やっぱり、レベルはきっと年齢なのね。
ジョブはガキ大将で【Lv4】。
ほとんどのステータスが最低のG。
数値のパラメータは、サイファの方がだいぶいいみたい。
それよりも!
■ クラスチェンジ ■
ガキ大将 >> ソードファイター >> ソードマスター
これ、『星空のロマンス』のシステムじゃなくて、私がハマってた戦略シミュレーション『聖戦の軌跡』のシステムよ!
つまり、京奈の望み通り『星空のロマンス』のシステムを原則的に採用しつつ、悪役令嬢向けのシステムみたいな、もともと存在していない部分には、私がやり込んでた『聖戦の軌跡』のシステムが限定的に採用されていたりするのね?
神様、グッジョブ!
ジャイロのソードマスターとか、全然、イメージじゃないけど、やっぱりきっと、ユリシーズのモブリーダーなんだと思う。
デゼルの取り巻きのモブリーダーも、あれ、サイファだったりするのかな。
『聖戦の軌跡』のシステムが採用されているなら、ジャイロには将来、世にも美しいペガサスナイトのお嫁さんを迎えて尻に敷かれて欲しい。それがお約束なのよ。聖戦のファンとして、そうでないと許せない。
ジャイロなら、本人グレートナイトで、お嫁さんはソードマスターの方がピッタリくるんだけど、乙女ゲームの世界に斧戦士なんてダサいジョブは存在を許されないから、仕方がないのね。
でも、そうか……。
ジャイロのこと、私、まだ、みくびってた。
ケンカは同格の人間がするものだって言うけど、ジャイロって、サイファと同格だったのね。
並の十歳児じゃなかった。
将来、サイファはデゼルの、ジャイロはユリシーズのモブリーダーになる予定なら、持って生まれたモノは、まさに互角。
あの二人、ほんとにケンカしてたんだ。
しかも、たぶん、ケンカを売ったのはサイファの方なのよ。
ジャイロが二対一でサイファを殴ろうとした時には誤解したけど、あの二人は、『スニールを殴るべきか、殴らざるべきか』でケンカして、我を張り合っていたんだと思う。
今日、ジャイロが私の提案を受け入れて、サイファもスニールももう殴らない約束をしたから、このケンカはサイファの勝ちだけど、私が加担して二対一だったもの。ジャイロが負けたってわけじゃない。
私がいない時に、ユリシーズがジャイロに加担するようなものだもの。
つい、テンションが上がって脱線したけど、シナリオの通りになんてさせない。
この命ある限り、私はサイファと一緒に、公国を滅亡から救うことを諦めないよ。






