第96話 最後の願い
「待て、デゼル、願いをかけるな!」
神様の声が響いたら、私はふと、願いをかける前に、サイファとエトランジュの顔を最後にちゃんと見ておこうと思ったの。
サイファとエトランジュがどこに逝ってしまったのか、もう二度と、会えないところに逝ってしまったのかも、しれないと思ったの。
二度と会えなくなる前に――
冷たくなったエトランジュの頬と、サイファの頬をなでるうちに、また、涙があふれた。
サイファ、サイファ、ごめんね。
私が、私なんかが人を好きになったらいけなかった。
私が好きにならなければ、こんな――
「デゼル、私の願いがすべて叶うようにと君が願った。だから、願いのルールの変更だ。私はサクリファイスを望まない」
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第三の願いのサクリファイスがキャンセルされました。
死の宣告が解除されました。
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「断っておくけど、最後の願いをかけたら、君がこれまでに得た、すべての神々からの祝福を失うことは変わらない。それでもよければ、私に願いをおかけ。いいかい、願いのルールが変更された。――『叶わない願いはない』」
私は聞き違えたかと思って、神様を見たの。
怖い。
私、その言葉を聞きたいと思うあまりに、幻聴を聞いた?
それとも、私が考えるような意味じゃないの?
「最後の願いをかけます」
声が震えた。
叶わなかったら、どうしよう。
一人だけって言われたら、どうしよう。
「神様、どうか、サイファとエトランジュを返して下さい」
キンコーン
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闇巫女デゼルの第三の願いが叶えられます。
闇巫女デゼルは神々とのゲームをクリアしました。
与えられていた祝福が失われます。
GAME CLEAR
現世に帰還しますか?
≪はい/いいえ≫
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サイファが目を開けたの。
サイファの澄んだ翠の瞳が、不思議そうに私を見たの。
「サイファ……」
エトランジュも目を開けたの。
サイファと同じ、澄んだ翠の瞳で、きょろきょろと周りを見たの。
「エトランジュ……!」
あんなに、泣いたのに。
まだ、涙があふれるなんて思わなかった。
「うわぁああああん!」
私が大声で泣いたから、エトランジュをびっくりさせたの。
「サイファの目と腕も、サービスで癒してあげたから」
神様の優しい声を聞いて、私はしゃくりあげながら、サイファの顔と、右腕に手を伸ばしてみたの。
サイファの左目が、ちゃんと開いてた。元通りの綺麗な翠の瞳。
サイファが両腕で、私を抱き締めてくれた。
「サイファ様!」
「デゼル、どうして泣いてるの……? 僕の右腕、どうして動くんだろう」
「左目も開いたよ、神様が、助けてくれたの……」
私はしゃくり上げながら、サイファにぎゅっとしがみついたの。
生きてる。
動いてるんだよ。
サイファが冷たくないの。
エトランジュも生きてるの……!
ガクガク震えながら泣く私を、サイファが泣きやむまで、抱いていてくれた。
なかなか泣きやめない私に、サイファが優しく、キスを降らせてくれた。
「あおー」
エトランジュが小さな手で、サイファの真似をして私をなだめようと背中をぺちぺち叩くのよ。
可愛い。
よかった。
本当によかった。
「神様」
私がいっぱいの感謝を込めて笑いかけると、神様もにっこり笑ってくれて、そのまま、そのお姿を隠されたの。
現世への帰還を断ると、最後のシステムメッセージも、虚空に溶けるように、あえかな光の破片になって消えてしまった。
なんだか、寂しい。
ずっと、見守って頂いていたもの。
これまで、いつも感じていた優しい気配が消えて、寂しくて、心細いような気持ちになった。
でも、終わったの。
もう、私はただのデゼルで、神様に見守られてもいなければ、祝福もシナリオもないんだって、わかった。
だけど、サイファとエトランジュはいるのよ。
ずっと、一緒に――
【最終回予告】 エリス ~思い通りにならない貴方が愛しくて~
主神の世界に立ち入れなくなってから、ルシフェルはすっかり意気消沈して、なんだか、このまま滅びてしまいそうなくらい、塞ぎ込んだきり。
なによ、主神なんて。
あんなの、どうでもいいのに。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/971438146/episode/4634458
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【ご感想】しき様より
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サイファ様とエトランジュさんが戻ってきて本当に良かった……
よく考えたら三つの願いの内二つは正解が決まっている(且つそれを願わないと全て叶わない)ので、私的な願いは一つなのですね!
そしてそれも日常的な幸せを願うデゼルさん…
主神様はデゼルさんが何を願うか、三つ共全て予測していたのですね。
祝福が消えるのはシナリオが終わるからだったのですね…!
だからシステムも消滅すると! 設定が深いです!!
今までずっとあったシステムが消えて神様が遠く感じても、きっとデゼルさんのこと見守っているんじゃないかなと思います。
本当に色んな事があって、頑張っていたから幸せに暮らして欲しいです。
☆ 返信 ☆
ありがとうございます✨(´;∀;`)
正解はデゼるんが二つ目にかけた願いだけで、一つ目の願いが不正解かつ不要であることは、皆様お忘れとは思いますが、『第4話 主神 ~神の力を授かるべきは~』に指摘されています。
というわけで、私的な願いも二つかけられるのですが、デゼるんは三つの願いの中に正解を含めないといけないなんて知らないので、一つ目と二つ目の願いもまたデゼるんの『私的な願い』です。
それと、正解によってルールが変更され、『叶わない願いはない』になりました。
三つ目の願いで『願いをあと三つ叶えて欲しい』とかも実は叶います。
『願いを無限に叶えて欲しい』さえも叶います。
ただし、落とし穴があって、先に叶えられている正解が『神様の願いがすべて叶うこと』なので、神様に失望されるような願いをかければ、叶った直後に願いが転覆したり、次の願いをかける前に絶命したりします。
願いの量については無限に叶えてもらうこともできるけれど、質についてはとんでもない制約がかけられているのでした。
(何を隠そう、デゼるん、あらかじめ100万件を超える願いを叶えてもらっています。主神の御心に適う願いであれば、ほんとに数の制限はありません。100万人を超える救命、すなわち、百万件を超える脇役の皆さんのシナリオを、すでに主神に書き換えてもらったのです。その中には、十一歳になる前に命を落とすはずだったさいふぁ様のシナリオの書き換えや、公国が滅亡するシナリオの書き換えも含まれています。主神ではなくデゼるんが書き換えたという考え方もできますが、そのために必要な神々の祝福と承認を授かっていたことこそが、願いを無限に叶えてもらう資格そのものであり、最初からずっと、承認取り消しが質の制約だったのでした)
最後の願いもまた、デゼるんにとっては日常ではないものです。
愛し合える人とずっと一緒に暮らしたい、それは、現世の雪乃がどんなに切望しても叶えることができなかった、夢そのもの。
さいふぁ様はデゼるんにとっては、誰よりも素敵な王子様。
じゅ。は奇跡そのものです✨(笑)
ところで、私も、
「もう、見守ってなくていいんだよ~?」とか主神に言われながら、
「でも、人の一生なんて瞬きする間だし!」とかレーテー様が言ったりして、
イツメンの皆さん、うっかり、無駄にデゼるん達を最後まで見守っていそうな気がします。(何を隠そう、デゼるんよりさいふぁ様の方が、神々にとってはすごく珍しくて、その生涯に注目せずにはいられない、摩訶不思議な人の子だったりします)
たぶん、デゼるんが寂しく感じたのは、主神がちらっと留守にしていたエピローグの時じゃないかなって。
主神、すぐに帰ってきますから!(笑)
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【ご感想】羽海様より
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なんだか天からの助けのようですけれど、そもそも主神がサイファとエトランジュの命を奪ったのですよね?
デゼルも喜んでいて、感謝していて偉いけれど…
そもそももともとは主神のせいですよ?
まぁ、デゼルが、幸せそうなので、結果オーライですね…。
☆ 返信 ☆
点目のじじ様が「よく言った! その通り! 一緒にキャンプファイヤーしようぜ! マイムマイムを踊ろう!」と、拍手喝采しておられました(ノ∀T)
ええと、一応、主神をフォローしておくと、苦難という苦難の連続ではありましたが、デゼるんがかけたかった願いはすべて叶っています。
さいふぁ様と出会ってからは、苦難の日々だけでなく、平和で幸せいっぱいな日々もたくさんありました。
三年間幸せでした、七年間平和でお子様も生まれましたと、一行で済まされてしまっただけなのです(汗)
本編があまり長くなると読者様の負担になるだろうと、そうでなくても長いので割愛しましたが、読み足りない読者様には、シリーズ作品の方もお楽しみ頂けましたら、とても嬉しいです✨(*´∇`*)
点目のじじ様をはじめ、羽海様と同じように感じる読者様も珍しくないので、「納得行かないよねー!」「ねー!」と、アンチ主神派の皆様におかれましては、ご遠慮なく、マイムマイムを踊っちゃってください。
主神支持派の皆様もたくさんいるんですけどね?
そもそももともとはさいふぁ様なんて、十一歳になる前に命を落とすはずだったモブでしかなく、じゅ。が生まれるはずもなかったのですが、神様の慈悲で幸せになれたという見方もできるのです。
感じ方は読者様の自由、点目のじじ様は最古参。
作者と感じ方が違うからといって、どなたも、排除されることはありません。
そんな読者様も大歓迎です♪
長い物語に最後までおつきあいを頂きまして、本当にありがとうございました。
ご縁がありましたら、是非また、よろしくお願いします✨(*´∇`*)






