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第92話 町人Sは悪役令嬢を心ゆくまで甘やかす

 それからの十二日間を、私はサイファとエトランジュと、とても楽しく、幸せに過ごしたの。


 景色の綺麗な湖に出かけてボートに乗ったり。

 サイファの右腕の代わりに、右は私が漕ごうとしたけど、うまく漕げなくて、水神になってボートを走らせたら、サイファに「ずるしないで」って笑われたの。

 エトランジュを喜ばせようと思って、いろんな風に水を降らせたり、巻き上げたりして見せた。

 サイファに教えてもらいながら、その場で獲った魚を焼いて食べたら、とっても、美味しかったのよ。


 雪山にも行った。鍾乳洞にも行った。

 夜はかまくらをつくって、雪の中で星空を眺めたりもした。

 とても、綺麗だった。

 どうしてかな、夜空があんまり綺麗で涙が零れたら、サイファが「どうしたの?」って、胸に抱き寄せてくれたの。

 優しくて、心地好かった。


「――サイファ様、キス、してもいい?」


 そう聞くと、サイファはいつも、優しいキスを降らせてくれて、させてくれない。


「サイファ様、する方が好き?」


 聞いてみたら、サイファがくすっと笑った。


「だってデゼルが、されたがるから。デゼルの甘くて綺麗な啼き声を聞くの、好きだよ」


 わぁっ。

 私の震える手をとって、サイファがまた、私が感じるようにキスを降らせた。

 サイファにされてる時の私がどんなかなんて、私、知らないのよ。

 そんな、甘い声で啼いてるのかな。

 サイファに触れられると、甘さと苦しさしか、わからなくなるの。動けなくなって、何にも、考えられない――


「デゼル、この頃、僕にすごく甘えるね。可愛いからいいけど、何か、不安だったり、怖いことがあったりするなら、話してね?」

「……」


 サイファに言われて初めて、気がついたの。

 私、そうだったんだって。

 時々、たまらなく怖くなって、サイファに甘えていたの。

 私はこくんとうなずくと、サイファの優しい胸に頬をすり寄せた。


「話せないこと?」

「……ううん、わからない。私にも、わからないの。だけど、サイファ様に――」

「なに?」

「あまえたい」


 サイファがくすぐったげに、澄んだ翠の瞳をキラキラさせて吹き出して、左腕で私をきゅっと、抱き締めてくれたの。


「じゃあ、お姫様を心ゆくまで、甘やかしてあげようか」


 怖くなって、私はサイファにますます、頭を押しつけたの。

 サイファの抱き方は、優しすぎて怖いんだもの。

 失ったら、心が砕けそうなくらい、優しくて甘い抱き方ができるの。

 そうされて、怖くてしがみつくと、サイファはもっと、抱き方を優しくするから、もっと、怖くなって泣かされるの。


「デゼル、どうして泣くの?」

「サイファ様が優しくて、失ったら、心が砕けそうで怖いの」


 私の涙を唇ですくい取ってくれたサイファが、微笑んだ。


「じゃあね。もっとだね」

「――っ! や、サイファさ……」


 だから、サイファは隠れSなのよ!

 私がサイファを求めるように、すがるように、ぼろぼろに泣かせて、さらに追い込むような抱き方をするのよ。


「あっ……あぁっ!」

「啼き声が甘くて、とっても綺麗。デゼル、可愛い」


 びくんと私が震えると、「ここ?」って、指先をすべらせて様子を見た後、優しい口づけを降らせて、吸ったり、舌を這わせたり、サイファったら、懇切丁寧に攻めるんだもの。

 サイファが右腕を使えなくなってから、される時に、私が自分で自分を支えていないとならなくなって、なんだかそれって、私がされたがって誘ってるみたいなシチュエーションで、すごく、恥ずかしいの。


 でも――

 本当に、全部がとっても幸せだった。


 サイファが優しいことも、素敵なことも、たまに、意地悪なことも。

 エトランジュが全然、言うことを聞いてくれなくて困ったことも、泣き止まなくて途方に暮れたことも、天使みたいに笑ってくれて、めまいがするほど可愛かったことも。


 すべてが私のたからもの。

 最後のその時まで、サイファとエトランジュのすべてを抱き締めていたい。


 あと少し、このままで――

★☆ ============ ☆★

 【ご感想】羽海様より

★☆ ============ ☆★


サイファ、気づいてあげて…!

もう少しでデゼルの悩みを聞き出せそうなところまで行っているのですけれど…

でもサイファ様が優しく甘やかしてあげるからこそ、デゼルも安定した心で最後の試練に挑めるのかも。


☆ 返信 ☆

確かに!

さいふぁ様、言われてみれば、デゼるんが相談したいと思っていたら、相談できる聞き方をしてくれていますね。

デゼるん、「さいふぁ様の目と腕を癒して頂くために、神様に命を捧げようと思って…」なんて相談したら、絶対に反対されると思ってるから相談しないけど。

デゼるんの心の安定はまさに、さいふぁ様のおかげです。

さいふぁ様がいてくれれば何があってもじゅ。は大丈夫って、安心して最後の試練に挑むつもりです。



★☆ ============ ☆★

 【ご感想】しき様より

★☆ ============ ☆★


こういった何気ないデゼルさん一家の日常回ってなかったように思うので、ほのぼのします。(実はずっと待ってました)


ボートが漕げないから水神になって走らせるは、パンが無ければケーキを食べればいいじゃないに似た何かを感じますね!(違う)


デゼルさんとラブってる時のサイファ様はストレートだなぁ!!と実は思ったりしています。デゼルさんを恥ずかしがらせる為でしょうか。どちらも可愛く見えてきます。


サイファ様はデゼルさんが甘えたい時や頼りたい時に的確に見抜いて、ちゃんと甘えられる(頼られる)ように上手く誘導している様に感じます。デゼルさんはきっと甘え下手だけど、そういう部分も含めて好きなんだろうなとお見受けいたします。


☆ 返信 ☆

ありがとうございます♪(*´∇`*)

こういった日常回、需要があれば改めて、サイファ編や番外編で書いてみたい気がします。

なるべく文庫一冊で作品を完結させたい私的に、デゼル編だけで22万字は現状ですでに長すぎるので、本編に加筆はしませんが。


さいふぁ様はいつでもストレートです♪( *´艸`)

真っ直ぐな攻め方で、恥ずかしがるデゼるん可愛いよって♡(Sが隠れてない…)

他意はなく、変化球なんて考えたこともないそうです。


お察しの通り、さいふぁ様はほとんど初めて会った頃から、甘えられないデゼるんのリードがすごく上手で、デゼるんが一人で頑張りすぎないように誘導してくれています。

ガゼるんに対してもそうで、甘えるのが下手なデゼるんもガゼるんも、だから、さいふぁ様にはあっさり落とされてしまうみたいです。笑。

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