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第84話 悪役令嬢は役割を果たす

 それからの日々、私とサイファは闇主たちを引き連れて、フィールドやダンジョンを回った。

 魔物に変えられてしまった人達を元に戻すために。


 最後かもしれない日々を、大切に、大切に、過ごした。

 夜が明けてから日が暮れるまで、サイファと一緒に仕事を続けて。

 夜にはエトランジュを抱いて、サイファに抱いてもらって眠った。

 サイファとエトランジュのどんな表情も覚えていようと思った。


 大好きな優しい微笑みも、イタズラをたくらんでる悪い顔も。

 嬉しそうな顔も、悲しそうな顔も、楽しそうな顔も、寂しそうな顔も。

 エトランジュが泣きやまなくて困ったことも、サイファが上手にあやしてくれて、笑ったエトランジュが天使みたいに可愛かったことも。


 そのすべてが大切な、私の奇跡の宝物。



 本当は、いくら忘却(レーテー)したと言っても、闇主たちの顔なんて見たくもないの。

 だけど、この役目のために必要だった。

 魔物を傷つけず狩り出すのは、ふつうの人に任せるには危険すぎる仕事だもの。

 闇主たちなら、全員がヒールを使える上に、ステータスもふつうの人よりはずっと高い。

 みんなを元に戻してあげるまでは、いてもらわないと困るの。

 だからね。

 神様とのゲームに勝てた時には、彼らも解放してあげるつもりなの。

 私の第一の願いが叶えば、彼らにはもう、再犯の可能性がなくなるもの。(つぐな)いはこの七年、私の奴隷として、命を懸けてみんなのために尽くしたことでいいと思うの。


 ハッピーエンドの可能性は、たぶん、とても低いけど。

 たぶん、私は遠からず死ぬことになるし、闇主たちはそれで、私と一緒に全滅。

 可哀相かもしれないけど、仕方ないの。

 私にしたことを別にしても、殺人や強盗をなりわいにしてた、ならず者達だもの。



 ネプチューンの魔力で魔物に変えられてしまった人達は、ちょうど、三千人。

 ついに、デゼルの最後のイベントが発生したのは、元に戻してあげられた人の数が、京奈が戻してくれた分も含めて二千人を超えた頃だった。



  **――*――**



 ネルも一緒の京奈たちと遭遇(そうぐう)した私は、真っ先にサイファをクロノスで逃がそうとして、想定はしていたけど、最悪の事態に慄然(りつぜん)としたの。


===============================================

 闇巫女デゼルの時空【Lv7】は、聖女ケイナの災禍【Lv8】により無効化されました。

===============================================


 災禍【Lv8】の効果は『神に与えられた一般スキルの封印』。

 京奈が私に殺意を持っているなら、使ってくるとは思っていたの。


誘惑(テンプテーション)――私達を追わせないで!」


 私は取り囲む光の使徒にまとめて誘惑をかけると、サイファと手をつないで囲みを突破しようと走った。


「イレイズ!」


 京奈が聖杖イレイズで誘惑を解除してきて、進行方向にいた彩朱がサイファに斬りつけてきた。


「闇よ、我らを守れ!」


 サイファが闇魔法でなんとか切り抜けようとしたけど、京奈たちは十人以上で、その全員が、剣でも魔法でもサイファを(しの)ぐ精鋭部隊。光の使徒から次々と剣閃や魔法が飛んできて、あえなくサイファをとらわれてしまったの。

 駄目、京奈にはもう、シナリオ通りにする気なんてない。

 ここのイベントは、全員でデゼルを追い詰めるような内容じゃないのに。


「デゼル、後ろ暗いことがあるから逃げるのかしら? 話も聞いてくれないなんて、つれないじゃない?」

「……京奈、どうして災禍(エリス)を封印しないの!? そのままじゃ、みんなに災禍が降りかかってしまうのに!」


 京奈があきれた顔で私を見た。


「あなた、まさか封印したの!?」

「もちろんよ!」

「私は聖女よ、ネル様も光の使徒様も、必ず、私がお守りしてみせる」

「え……」


 私、そんな考え方、思いもよらなかった。


「降り注ぐ災禍から、京奈が守るから問題ないというの!? 無茶よ、みんなを四六時中なんて守れないよ!」

災禍(エリス)【Lv7】があるじゃない。そんなことより、あなたとサイファの心配をしたらどうなの? どうしてあげようかなァ」

「……京奈?」


 ぞくっと、私は背筋が冷たくなった。

 京奈はどうしたの?

 いくらなんでも、聖女様のセリフじゃない。

 まさか、光の使徒にもネルにも、災禍(エリス)【Lv9】をかけて支配しているの!?

★☆ ―――――――― ☆★

 【ご感想】羽海様より

★☆ ―――――――― ☆★


自分に酷いことをした闇主にも、解放できる、償いは果たしたと考えられるデゼルは優しいです。闇主たちにさえその権利があるのだから、自分にもなおさら幸せになる権利があると分かってほしい…!

ケイナはもう、聖女というより悪魔の使いのようになってきましたけれど、大丈夫でしょうか…?


☆ 返信 ☆

『悪魔の使い』!

エリス様がまさに悪魔なので、京奈ちゃんは現在、悪魔の使いそのものです。

それらしく書けたみたいで何よりです♪(*´∇`*)


デゼるんは自分には幸せになる権利がないと思っているわけではないのですが、ハッピーエンドを迎えるためには生贄が必要なシナリオなので、誰も生贄になりたがらなくてみんなが不幸になるくらいなら、『私が生贄になってさいふぁ様とじゅ。を幸せにしたい』です。

大好きなさいふぁ様の傍にいたい思いと、大好きなさいふぁ様だから、傷物じゃない、綺麗な女の子と幸せになって欲しい思いがせめぎあって、生贄が必要なら私がなるから、さいふぁ様とじゅ。が幸せになれますようにってなってます。涙。


デゼるんの幸せを願って頂けて嬉しいです、ありがとうございます!(`;ω;´)



★☆ ―――――――― ☆★

 【ご感想】しき様より

★☆ ―――――――― ☆★


京奈さん完全にエリス様に心酔してますね…。袋叩きだなんて、翡翠さんや蒼紫さんも疑問を感じそうなシチュエーションですが従っているという事は何か魔法をかけられているのでしょうか。


☆ 返信 ☆

あ、袋叩きじゃないです。

光の陣営はデゼるんを捕獲するつもりで動いています。

闇巫女デゼルは何の罪もない人々を魔物に変えた悪の帝王に仕える悪役令嬢。

しかも、侮れない実力者。

光の陣営から犠牲者が出ないよう、総勢で捕獲することに疑問を感じるシチュエーションではないのですが、さいふぁ様を捕獲した後の京奈ちゃんとデゼるんのやり取りは異常で、このやり取りに光の使徒たちが疑義を呈さないのは、お察しの通り、『何か魔法をかけられている』からです。

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