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第83話 悪役令嬢は神様のゲームをクリアしたい

 丸一日ゆっくりやすんだら、もやがかかったようだった心が晴れて、すっきりと整理がついたの。

 知らなかった。

 考えるより、やすんだ方が、心が答えに辿り着くことがあるのね。


「サイファ様、私、魔物に変えられてしまった人達を元に戻したい。サイファ様が一緒に来て守って下さるなら、月齢の首飾りをかけて欲しいの」

「デゼル、僕、月齢の首飾りはかけないと言ったよね」


 サイファが少し、怖い顔をしたけど、私は首を横にふった。


「今の私には、サイファ様を私の闇主から解放する力があるの。サイファ様が月齢の首飾りをかけて下さらなければ、いざという時、私は私の身を守ることより、サイファ様を私の闇主から解放することを優先するもの。それで、闇主の力をなくしたら、サイファ様はもう、私を守れなくなるよ」


 サイファが絶句して私を見た。


「だから、月齢の首飾りをかけて欲しいの。最後まで、諦めずに私を守って欲しい」


 私を真っ直ぐに見詰めたサイファが、利き手を口許にあてて目を落とした。

 真剣な顔で考えて、考えて。

 やがて、嘆息して、かぶりをふったの。


「――わかった。待ってて、ユリシーズから、返してもらってくるから」


 私がサイファに微笑みかけると、サイファも微笑み返してくれた。

 私、サイファを危険な目に遭わせる覚悟をしたの。

 サイファも、私を危険な目に遭わせる覚悟をしてくれたの。


 私達、今、それを確かめあった。


 ゲームのデゼルの気持ちがわかる気がするの。

 ヒロインが『二人とも見逃す』を選んでくれても、すべてのフラグが立っていない限り、死の運命に抗おうとしないデゼルの気持ちが。


 クライマックスのデゼルは、魔物に変えられてしまった人達をすべて元に戻し終えているもの。

 だから、あとは、自分さえいなくなれば愛する人を救えることに、気がついていたんだと思う。


 悪役令嬢であるデゼルの最後の仕事は『悪役として死ぬこと』よ。


 魔物に変えられたりして、つらい思いをしてきた人達には、悪役が必要なの。

 誰かが悪役として、断罪されなければならないの。


「みんなデゼルが悪かったのだ。そしてデゼルは滅ぼされた。めでたし、めでたし」


 わかりやすい物語が必要なの。


 悪役として断罪されるはずだった闇の十二使徒の闇落ちを、私が阻止してしまったもの。

 ネプチューンが悪役として断罪されたら、ユリシーズと京奈が泣くもの。


 ユリシーズの名を借りて、ひとつの村を呪いから解放した日、疲れたけど、向けてもらえた感謝と好意が、とても、心地好かった。


 デゼルでは駄目なの。

 デゼルが同じことをしても、向けられるのは嘲笑と中傷。

 それは、サイファやエトランジュにまで降りかかって、サイファはお母さんとなかば、絶縁してしまったんだもの。


 私が生きている限り、何をしても、この迫害からは逃れられない。


 だから、悪役には私がなるしかないの。

 私が断罪されればいいの。

 デゼルには両親もいない。縁者もいない。


 悪役令嬢が死ねば、モブリーダーをすべての呪いから解放できるの。


 魔物にされてしまった人達を元に戻し終えたら、私はどうしても、最後に、サイファを救いたい。

 私は十年も、サイファの傍で幸せに満たされた時を過ごせたもの。

 今度は、サイファとエトランジュに幸せを享受して欲しい。



 ――でもね、ただ一筋だけ。

 すべてのフラグが立って、ヒロインが『二人とも見逃す』を選ぶ時。

 その時だけは、生きてみたいと思うの、ゲームのデゼルと同じように。


 すべてのフラグ、十二霊の承認。

 私は十二霊の祝福と、十一霊の承認を集めた。

 京奈が『二人とも見逃す』を選んでゲームをクリアしてくれて、テュケー様の承認を得られる時まで、私が十一霊の承認を維持していられたら。


 私、神様とのゲームに勝ちたい。

 十三番目の神がどんな存在かわからないけど、挑むよ。


 神様に『世界からあらゆる呪いと悪意を拭い去って下さい』と願って叶えてもらえば、もう、私が生きていても、サイファもエトランジュも、嘲笑されたり中傷されたりしないよね。誰かを悪役にして断罪しなくても、きっと、ハッピーエンドを迎えられるよね。


 私、神様とのゲームをクリアできるなんて、夢にも思わなかった。

 でも、気がついたら、ここまできてた。


 神様とのゲームをクリアしたいと思ったの。

 今、はじめて。

★☆ ―――――――― ☆★

 【ご感想】しき様より

★☆ ―――――――― ☆★


デゼルさんの決意が垣間見える回。この決断を下すのはとても勇気が要りますよね。守ってくれる、そして相手を守るという強い意志を感じます。

今迄自分が犠牲になることを厭わなかったデゼルさんが、自分が生き続ける事での幸せを考えるってとても大きな一歩だと思います。

きっとサイファ様とだからこそ、この考えに至ったのだなと思うと感慨深いです。


☆ 返信 ☆

すごく勇気がいりました。

シナリオ通りのハッピーエンドを迎えるためには、『悪役令嬢デゼル』の犠牲が必要なのはわかっているのに、迎えられるはずのハッピーエンドを危うくしてまで生を望むことなんて、考えられなかったデゼるんだけど。

だけど、それを言ったらシナリオ通りのハッピーエンドのためには、他の闇の十二使徒の犠牲も必要、公国の犠牲も必要。

他人事になると、「シナリオ通りにしなくても、きっと、みんなでハッピーエンドを迎えられるよ!」と言い出すデゼるん、利他的なダブルスタンダードのようでいて、たぶん、デゼるんはずっと待っていたのです。

「デゼルが死ななくても、きっと、みんなでハッピーエンドを迎えられるよ!」

その言葉を『責任もって』かけてくれる誰かを。

他の犠牲者たちにはデゼるんがその言葉をかけてきたけど、デゼるんにその言葉をかけてくれる人はいないとデゼるんは思ってきて。

だから、助けてしまった他の犠牲者たちの分まで、デゼるんは自分が犠牲を引き受けるしかないと思ってきて。

だけど、さいふぁ様にはその意志が、どんなに過酷な茨の道でも、笑顔で一緒に歩いてくれる意志があるって、ようやく、信じる勇気を持てたみたいです。

初めて会った十歳の頃から、ずっと、さいふぁ様はその意志を示してくれていたのに、『悪役令嬢デゼルが死を選ばない』ことの意味を知らないから言えること、いつかきっと後悔するんじゃないのかなって、信じる勇気を持てずにきたデゼるんだけど。

病める時も、健やかなる時も、じゅ。が生まれた後も、変わらず愛し続け、支え続け、いつでも傍にいてくれたさいふぁ様だから信じようって、なけなしの勇気を振り絞って、一歩を踏み出しました。


長い長い道のりでしたが、さいふぁ様の努力は実を結びました。

さいふぁ様、おめでとう~!ヾ(´∀`*)ノ



★☆ ―――――――― ☆★

 【ご感想】羽海様より

★☆ ―――――――― ☆★


デゼル、強くなりましたね…!

サイファ様を口で負かすなんて珍しい。

やっとデゼルにもサイファやユリシーズの気持ちが伝わったのでしょうか…

まだ自分を犠牲にしようとしていますけれど、でも、ハッピーエンドへの道が見えてきました…!


☆ 返信 ☆

……(・∀・)


Q.羽海様の目に、さいふぁ様はどう見えますか?(複数回答OK)

1.スーパーダーリン

2.悟りを開いた仙人

3.ハムスター

4.生き神様

5.町人SのSはドSのS

6.いずれにもあてはまらない


以前から一度、聞いてみたいなと思っていまして!

ご感想のテイストから言って、1か5でしょうか。

この考えが正しいか、とても気になります。

※ 上記の選択肢は作者的にすべて正解で、不正解はありません。

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