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第79話 悪役令嬢は究極の美青年に出会う

 翌日。

 私は先に、アフロディーテ様の承認に挑戦することにしたの。

 山賊に襲われた村には、まだ、京奈たちがいるかもしれないから。


 神様の上位スキルである『昇華』を獲得する前に京奈に会っても、私達が殺されるかもしれないだけで、助けてはあげられないもの。

 それに、私、怖いの。

 昨日、ユリシーズが助けてくれなかったら、私、サイファに殺されてた。

 誰かから殺意を向けられたのなんて初めてで、気持ちの整理がつかないの。


 だから、もし、アフロディーテ様の承認が一日で獲得できるようなものなら、『聖なる衣』を獲得するためにも、スキルポイントをもらっておきたいの。


 完全攻略ガイドの情報によれば、アフロディーテ様の承認は、星ロマの吟遊詩人イベントが発生する町を訪ねて、承認イベントをクリアすることで獲得できるそう。

 一番、なかよしな光の使徒様とのデート・イベントが起きる歓楽街よ。

 悪役令嬢でも、デート・イベントが起きたりしないかなぁ?


「サイファ様、この町の吟遊詩人の愛の歌は、恋人たちに祝福を与えてくれるんだよ」


 昨日のことを気にしてるのか、表情の暗かったサイファが、少し、微笑んでくれた。


「聴いて行く?」

「うん!」


 よかった。

 いつも通りのサイファに戻ってくれたのが夢じゃなくて、本当に、よかった。

 私の笑顔に救われたような顔をしたサイファが、微笑んで、優しくキスしてくれた。


 サイファと手をつないで広場に向かうと、広場の噴水のところに人だかりができていて、そこに噂の吟遊詩人がいたの。


 ――あれ?


 美術館に飾られた一枚の名画のようだけど、こんな容姿の吟遊詩人だったかな。

 緩く波打つ白金の髪(プラチナ・ブロンド)を片側におしゃれに結い上げた、世にも優麗な美貌の青年――だったっけ?

 どこかで見た顔なんだけど、ここじゃなかったような気がする……。


「すごい。あの人、すごく綺麗だね」


 サイファが感嘆して、吟遊詩人に見入ってる。

 もちろん、サイファだけじゃなくて、その場所に集まったみんなが吟遊詩人の(たぐい)まれな美貌と、妙なる美声にうっとりしてるんだけど。


 まぁ、いいか。

 思い出せないし、他人の空似だもの。

 この町の吟遊詩人に会うのは、間違いなく初めてよ。


 だから私は、彼の愛の歌を聴きながら、うっとりとサイファの肩に頭をもたせたの。

 彼の愛の歌のヒロインになったつもりで、サイファとのロマンティックな夜を心に描いて、静かに聴き入っていたら、悲しいこともつらいことも、少しずつとけて、流れてゆくよう。

 穏やかに、気持ちがやすらぐの。

 そういえば、サイファに寄り添って、こんな風にゆっくり過ごせたことは、『星空のロマンス』のゲームが始まってしまってからは、ほとんどなかったかもしれない。

 忘れかけてた、幸せな気持ちが心に満ちてくるの。妙なる優しい調べに乗せて、サイファとの思い出がよみがえるの。


「サイファ様……」

「なに?」

「私……サイファ様にずっと、傍にいて欲しい」


 サイファがぎゅっと抱き締めてくれて、私に優しくキスしてくれて、ずっと、この時が続けばいいと思ったの。


 キンコーン


=============================================

 闇巫女デゼルに愛と美の女神アフロディーテの承認が与えられました。

=============================================


 あれ。

 何にもしてないのに、承認された。


 ティコンティコンティコン


 あ、エラー音。


========================================

 エラーです。

 愛と美の女神の承認は間違いです。キャンセルされました。

========================================


 うん、何にもしてないもんね。

 昨日からエラーが多いけど、大丈夫かな?


「そこの美しいお嬢さん、お名前を聞かせて頂けませんか?」


 サイファにもたれて、うっとりと目を閉じていたから、声をかけられて、少し驚いたの。

 間近に見ると、ますます綺麗だけど――


「あ」


 思い出した。


「神様?」


 吟遊詩人が吹き出した。


「私が神様に見えますか? そこまで褒めて頂けたのは初めてです。それも、あなたのような美しい方からとは、とても光栄ですよ」


 あれ、違うのかな。

 私、思い出したの。神様の顔だって。

 昨日からエラーが多いことについて、何か、教えにきて下さったのかと思ったの。


「ごめんなさい、人違いだったみたいです」

「……え?」


 比喩じゃなくて、本物と間違えたとは言えないよね。


「サイファ様、そろそろ、行きましょう」

「彼はいいの? デゼル」

「うん、人違いだったの。エリス様のことを知っている方と間違えたの」


 軽く目を見張ったサイファが、どうしてなのか、吹き出した。


「うん、行こうか」


 私にそう答えた後、サイファは神様によく似た吟遊詩人の方を見て、礼儀正しく挨拶をしたの。


「すみません、先を急ぐ旅の途中なので失礼します。心憩う、妙なる調べに乗せた、優しい歌をありがとう」


 吟遊詩人の姿が見えなくなる頃、私はサイファに聞いてみた。


「サイファ様、さっき、どうして笑ったの?」

「だって、デゼル、あんなに素敵な人に声をかけられて、少しはときめいたりしないの?」

「……? サイファ様にときめいてる時に?」

「デゼルって、なんで、そんなに僕がいいのかな。――でも、ありがとう」

「???」


 キンコーン


=============================================

 闇巫女デゼルに愛と美の女神アフロディーテの承認が与えられました。

=============================================


 あ、また。

 だから、何にもしてないのよ。

 システムがすごく不安定みたい。大丈夫なのかな。


 でも、すぐにまたキャンセルされると思ったのに、今度はいつまで待っても、エラーにならなかった。

 本格的にシステムダウンしたのかと思って、心配になってシステムを起動してみたら、きちんと起動して、アフロディーテ様からの承認もきちんと確定していたの。

 慈愛と正義の女神ユースティティア様の承認も謎のままだけど、このゲームの承認条件は、私なんかじゃ、まだまだ、理解の及ばない領域にあるみたいなのね。

 神様の御心だもの、きっと、とても深遠で崇高なものなのよ。

★☆ ―――――――― ☆★

 【ご感想】羽海様より

★☆ ―――――――― ☆★


さすがアフロディーテ様、イベントがとても楽しそうです!

でもデゼルが完全にサイファにしか関心がないのが、予想以上のデゼルらしさです。もうゲームが始まる前から、デゼルにはアフロディーテ様の承認を与えてあげてもよかったのでは…?


☆ 返信 ☆

楽しそうですよね!

アフロディーテ様はスキル(↓)もとっても楽しそうなのです✨(*´▽`*)

https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/801455171/episode/4287061

せっかくのときめきイベントなのに、デゼるんがここまでさいふぁ様にしか関心がないのは、神様にとっても予想外でした。

むしろ、ガゼル公子が選ばれなかった時点で、主神にとっては痛恨の想定外だったのですが。

一話ごとのご感想、とても嬉しいです。ありがとうございます!(∩´∀`)∩

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