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悪役令嬢と十三霊の神々 ~悪役令嬢はどうしても町人Sを救いたい ~  作者: 冴條玲
第一章 悪役令嬢はナイトメアモードを選ぶ
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第6話 悪役令嬢は編入試験を受ける

 編入試験の翌日。

 合格の通知が届く前に呼び出されて、落ちたかなと思った。

 問題が多くて、ちょっと、致命的なミスをしたのよ。


「こんにちは、デゼル」


 先生が困り果てた顔で私を見た。


「デゼル、最後の問題の解答、同じのふたつ書いてるだろう。なんで、解答欄がずれたの直さなかったの」

「チャイムが鳴ってしまったので」


 先生が頭を抱えた。


「解答欄を間違えていなければ97点なのに、これじゃあ、33点だよ」

「33点だと、編入試験は不合格でしょうか」

「不合格のわけはない、そうじゃなくて、算数が97点だったら、君は国語も90点で、生活は筆記と実技で124点、合計311点のトップ合格なんだよ」


 うわぁ。

 一週間の付け焼き刃だけど、予習までして頑張ったのに、200点満点のテストで124点とか、できのいい十歳の子供に敗北する生活力だったんだぁ。私、さすがすぎる。

 ひきこもりでも、十年、独り暮らししてたのになぁ。

 国語は漢字が書けなかったの。文章はキーボードで打つばかりで、手書きなんて、もう、何年もしていなかったもの。

 ひらがなを忘れたと言ってた国立大学の友達を思い出すよ。


「それだったら、どちらでもいいです。デゼル、忙しいので帰っていいですか」


 焼け石に水かもしれないけど、なるべく、闇巫女としてのレベル上げを頑張っておきたいの。

 なるべく、サイファの傍にいたいの。


「え、ちょっと。そんな。ああっと、他にも聞きたいんだけど、『48×52=2500-4=2496』って、この計算方法は誰に習ったの。サイファに家庭教師を頼んでいるそうだけど、サイファは知っているはずがないぞ、こんなのは」

「えーと、その、……闇の神の声が聞こえて……」


 苦しいかな。

 真面目な先生なのね、途中計算までしっかり見るなんて。

 七歳児が因数分解をしたのはまずかったみたいだけど、二桁のかけ算の小学生のやり方なんて、覚えていなかったんだもの。

 正解さえすれば、いいと思ったんだけどなぁ。


「……そうか、さすが闇巫女様だね……『20以下の偶数の合計を答えなさい』の問題で『(2+20)×10÷2=110』と答えたのも、闇の神様?」

「はい、闇の神様です」


 私はもう開き直って、自信を持って答えた。


「こんな解き方は先生も知らないんだけど、合ってるんだよね……」


 この世界、高校と大学がなくて、中学を卒業したら、あとは大学院みたいなところと専門学校だけなの。

 だから、庶民向けの小学校の先生は、だいたい中卒。

 先生が知らないってことは、数列は高校で習ったのかな。


「よかったら、先生に教えてくれない?」

「先生、デゼルは忙しいので帰りたいです」

「ああ、わかった。そうだったね、帰っていいよ」


 そう言いながら、先生が合格通知と新しい教科書を渡してくれた。


「明日からおいで」

「サイファと同じクラス?」

「闇巫女様の強いご要望だからね。だけど――」


 つい、嬉しくなって頬が緩んだ。

 学校は嫌いだけど、サイファと同じクラスなら、私、通う。


「サイファは少し、生活態度に問題のある子だよ? 何かあったら、マリベル様か先生に言うんだよ」


 先生が私に、真剣な顔でそう言った。

 先生、何か、知ってるんだ。


「どんな問題ですか?」

「まぁ、いろいろだけど。サイファはよく頑張っていて、テストの成績もいいんだけどね。母子家庭で、生活が苦しいストレスか、悪いことをするんだよ。ケンカがちで怪我も多いし――君には優しい?」


 知らなかった、母子家庭なのね。だから、あんなに優しいのかな。

 デゼルの家庭教師をお願いしてよかった。

 ふつうの子供には稼げないくらい、お給料はいいはずだもの。


 だけど、そういう、陰険なのがいるのね。

 よく、わかった。

 私はにっこり笑った。


「私にも、他の誰にでも、サイファは優しいです」


 先生には、わかりませんか。

 おかしいって、思いませんか。

 だから、学校は嫌いなの。


 でもきっと、先生にだって、悪気はないと思う。

 私が先生の立場だって、わかる子と、わからない子がいるに決まってるもの。



 犯人は割とすぐ――

 私が編入して十日目の、生活の授業でわかった。

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