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第75話 悪役令嬢はヒロインの激怒を買う

「京奈、私よ! ユリシーズじゃない、私がそうなの」


 クロノスでサイファのところに戻った私が訴えると、京奈が目を丸くして私を見た。

 やっぱり、ユリアの記憶がないのね。


「お願い、話は私もしたい。でも、先に、サイファを解放して欲しいの」

「京奈、デゼルは蠱惑(こわく)の魔女だ。下手に話せば洗脳されるやもしれぬ」


 サイファに短剣を突きつけたままの蒼紫が言った。

 蒼紫の思慮深さ、仲間の時には安心できて素敵なんだけど、敵に回られると厄介(やっかい)なのね。

 ううん、蒼紫なら一時の感情でサイファを傷つけたりはしないだろうから、やっぱり、安心かな。

 蒼紫は切れ長の目をした、静かな印象の美青年。


「でも、闇主たちは確かに僕達に危害を加えようとしないし、信じてあげてもいいんじゃ」


 優しい胡桃(くるみ)色の髪の少年、翡翠が、助け舟を出してくれた。

 翡翠は優しくて可愛いの。


「翡翠、人質を解放してもそうだとは限らない」

「それは、……そうかもしれないけど」


 ごめんね、という目で翡翠が私を見た。

 うん、助け舟だけでも、出してくれてありがとう。


 蒼紫も翡翠も、私が気に入っていた光の使徒よ。

 京奈がユリシーズの私と話し合うつもりだったのは、きっと、本当なのね。

 ユリシーズの私がネプチューンの副官をやめて身を引くなら、蒼紫か翡翠を譲ってあげるとか、そういう方向かな?


「……いいわ、デゼル。落ち着ける場所で話しましょう。山賊達は、あなたの闇主達が片づけてくれるようだし。蒼紫、油断しないで。その人はまだ解放できない」

「わかった」


 少し離れた滝のそばで二人になると、京奈が口を開いた。


「本当なの? 嘘をつくとためにならないわよ? あなたが雪乃だとしたら、どうして、彼らにわざわざマワされたのよ」


 どうしよう、涙が出そう。


「わざとじゃ、ないよ」

「ユリシーズが隻眼(せきがん)ではないのは?」

「……私が、闇の十二使徒すべての闇落ちを阻止しようとしたの」


 軽く目を見張った京奈が、私の頬を鋭く叩いた。


「あなたらしいわ、確かに雪乃よ!」

「京奈」

「ええ、あなたはいつだって八方美人だったものね! そうやって私の邪魔をしてくれたあげく、あなた自身の闇落ちイベントの阻止には失敗したわけ? 二十七名もの闇主を従えているそうね? マワされて気持ちよかった?」

「……」

「なんとか言いなさいよ!」


 声を出そうとしたら、涙がこぼれて、また、京奈に叩かれた。


「被害者ぶらないで! 私の本命がネプチューン様なのは知っていたはずなのに、ひどいのは雪乃よ!」

「ごめん……なさい……」

「本当に悪いと思っているの? そのごめんなさいが嘘じゃないなら、ユリシーズを殺してきてよ!」

「そんな! 京奈、私、そんなことできない!」

「どんな話をしてるのかと思って聞いてみれば……」


 私も京奈も目を見張った。

 ネルが聞いていたみたいなの。


「意味のわからねぇ話をしていたが、往復ビンタのあげくにユリシーズを殺してきてとは、聖女様が聞いてあきれるな?」

「ネル様、違うの……違うのよ!」

「まぁ、女同士で好きにケンカすればいいが――俺はふけるぜ? デゼル、ユリシーズを殺せば、ネプチューンにサイファを殺されるかもしれないな」

「ネル様、待って!」


 私と京奈はネルを追って蒼紫たちのところに戻ったけど、見失ってしまった。


「京奈、ネルのことなら私が――」


 忘却(レーテー)をかければ、なんとかできると思うの。

 ネルがおとなしく、かけられてくれるかはわからないけど。


「デゼル、あなたの魅了スキルと私の聖女の力、どちらが強いかしらね?」


 怒りに震える声で、京奈が(ささや)いた。


「蒼紫、翡翠、話し合いに応じてはもらえなかった。ネプチューンとユリシーズに停戦の意志がない以上、ネプチューンの副官であるデゼルも見逃すわけにはいかない。ここで討ちましょう」

「京奈!?」

「京奈、待って! それは可哀相だよ、デゼルは抵抗しないみたいだし、捕虜にしたんじゃ駄目なの?」

「翡翠、ネプチューンがしたことを忘れたのか。デゼルもまた、無辜(むこ)の民を魔物に変えたネプチューンに(くみ)する者だ、少女の姿に惑わされるな」


 翡翠が泣きそうな顔で、私とサイファを見た。


「京奈、聞いて! ネルのことなら私が――!」

「黙って、蠱惑(こわく)の魔女であるあなたに、それ以上の口をきかせるわけにはいかない」

「待って下さい、デゼルは、皇帝の悪事に(くみ)しては――!」


 訴えかけたサイファに、京奈がぜんまいを組み合わせたような、奇妙な形状の杖をつきつけた。

 このイベントの重要アイテム、魅了を解除する聖杖イレイズ。


「安心していいのよ、サイファ、だったわね? 私達、無抵抗のデゼルを討ったりしない。蒼紫も翡翠も聞いて、デゼルの裁きは闇主に任せましょう。デゼルの魔力に心を奪われ、奴隷とされてきた者にこそ、彼女を裁く権利があると思うの」


 翡翠が大きくうなずく横で、蒼紫も小さくうなずいた。

★☆====☆★

  ご案内

★☆====☆★


アルファポリス様にて、

【R18】 続41話 悪役令嬢は町人Sと契る

10/6までの期間限定で公開中です。

このため、同作品のレーティングが一時的にR18となっているのでご注意下さい。

https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/971438146



【FanART】 カゴ様からの贈り物

https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/971438146/episode/4448885



【次回予告】第76話 悪役令嬢は町人Sに切り裂かれる

 どうしてなのか、胸がドキドキするけど、私もサイファも、蒼紫も翡翠も、京奈を見守った。

災禍(エリス)【Lv9】――サイファ、デゼルを殺しなさい」


↓ 物語だけ楽しみたい方はこちらから ↓

https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/971438146/episode/4338231



★☆ ============ ☆★

 【ご感想】羽海様より

★☆ ============ ☆★


翡翠は良い子なんですね……

翡翠の優しさが心にしみました。

雪乃には完全に京奈の考えが読めているのに、京奈から雪乃への理解が足りていないので、やっぱり雪乃は普通の子ではなくて、普通の子が転生したら京奈のようになるのだろうなと思いました。

ネプチューン大好きな京奈が雪乃まで敵と判断したのが悲しいです。


☆ 返信 ☆

翡翠の優しさに目をとめて頂けて嬉しいです(*´∇`*)


親の心子知らず。

上位者の心が優しい場合、実は、上位者の方が悲しい思いをさせられることが多いリアルを書きたかったので、悪気はない京奈ちゃん、理解が足りないだけというのが伝わって嬉しいです。

(下位のつもりの人も、親になれば上位なので、誰もが当事者ですよね)


あと、京奈ちゃんを普通の子と思って頂けたことも嬉しいです。

思い込みが激しくて自己中心的ではあるけど、京奈ちゃん程度のそれは割と普通だと私は思っています。

それなのに、京奈ちゃんみたいなヒロインを手段を選ばず陥れ、世紀の悪女に仕立てて断罪するWeb小説が流行っているのが気に入らなくて。

偏見のない目で見た場合、彼女たちがいかに《《普通》》かを書いて、もちろん断罪なんてされない物語にして、「他人をバカという人間がバカなのだ。ピンク頭のヒロインを断罪しているあなた達こそが断罪されるべきなのだ」と、真正面から説教してやりたくなったのが、この作品を書いたきっかけだったりします。


私自身は京奈ちゃんよりも雪乃に共感するけど、誰かを悪役にしてまで雪乃に好感を持ってもらう必要はなくて。

さいふぁ様だって、悪役令嬢の婚約者の王子様(公子様)をポンコツにしなくても、読者様からのご支持は得られているわけで。


雪乃に好感を、京奈ちゃんに共感を頂ければ嬉しい物語だったので、ご感想、とても励みになりました。

ありがとうございます♪(*´∇`*)

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