第71話 悪役令嬢は悪の帝王の夜伽を断固として拒絶する
「……デゼル」
「おかえりなさい、サイファ様」
いつも通り、笑顔で出迎えたのに、サイファは黙ったまま、うつむいてしまったの。
どうしたのかな。
サイファの顔色がこんなに悪いことなんて、滅多にないのよ。
「サイファ様?」
「デゼル、その、ネプチューン様にされたことがあるって、本当なの」
「えっ……」
なに?
されたって、何を?
犯されたことじゃないよね?
だって、知ってる人なんて、どれほどもいないのよ。
「ネプチューン様が、今夜、デゼルを夜伽に寄越せって」
――は?
なに、それ。
「サイファ様、それ、誰に聞いたの……?」
「ネプチューン様ご本人に」
私は三白眼になってたと思う。
何なのよ、それ!
あの恥知らず、京奈とユリシーズはどうしたのよ!?
怒りにこぶしがワナワナ震えた。
「サイファ様、一緒に来て下さいますか。私が、ネプチューンに何かされそうになったら守って」
**――*――**
皇宮のテラスにネプチューンが一人でいる姿を見つけると、私は駆け寄るなり、力いっぱい、その頬を平手打ちしたの。
「ネプチューン、あなた、サイファ様に何を言ったの!」
ネプチューンもサイファも、あまりのことに、声もないほど驚いたみたい。
「ユリア様とユリシーズはどうしたのよ!」
ぶはっと、ネプチューンが笑う。
そうかと思えば、ネプチューンが私の右手首をつかんだの。
身の危険を覚えた私があわてて逃げようとしたのと、サイファが割って入ってくれたのは、同時だった。
「今夜なら、抱いてやってもいいぜ、デゼル? 何をもなにも、本当のことを教えてやっただけだろう」
「冗談じゃないわ! あなたの言うことなんて信用できない。本当のことって、死にかけてた十歳の私に何をしたか、させたか、言ったの!?」
「ああ。おまえ、気持ちよさそうにしてたじゃないか」
「してないわよ! あれが気持ちよさそうに見えたんだったら、あなたって可哀相な人ね。女の子を気持ちよくさせてあげられたこと、ないのね」
さすがに、ネプチューンの顔が強張った。
「ネプチューン、何のつもりか知らないけど、ふざけないで! 私にとっては、京奈もユリシーズも大切な友人なの、手を出すなら、きちんと大切にしてよ!」
「――俺の妃になるより、今のまま、サイファのものでいたいのか?」
「あたりまえよ!」
こんなことなら、無理にでも忘却をかけておくんだった。
さすがに、ネプチューンに忘却をかけるのは難しかったのよ。
「ふ、気持ちよかったんでないなら、何もかも、俺の言いなりになったのはどういうわけだ? ナカに出されて、甘い声で啼いたくせに」
「公国を守るためよ。おあいにくさま、あなたとしたのがどうだったかなんて、綺麗サッパリ忘れたわ。サイファ様とする時には、私、最初のキスから甘い声で啼くのに、あなたとした時には、最後までしてようやく啼いたの? それって、全然、気持ちよくなかったのね!」
忘却したもの。
なにひとつ、覚えてない。
神様に頂いたスキルは優秀よ。
「京奈が気に入らないなら、ユリシーズを大切にしてよ! 二人とも泣かせたりしたら許さない!!」
「ふうん」
ゾクっとして、私はネプチューンから距離を取って、サイファの背中に隠れた。
「こういうのも、面白いな? 俺を拒否する女は初めてだぜ? ますます、抱いてやりたくなった。本当に気持ちよくないんなら、一声も立てずに耐えてみせろよ」
「いやよ、さわらないで!」
【FanART】 羽海様からの贈り物
https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/971438146/episode/4253287
【悪役令嬢の舞台裏】 サイファ様を創造したのは
~知られざる、白いおひげのお茶目なサイの神~
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