【Side】 京奈 ~乙女ゲームが始まらない~
私は京奈。
聖サファイア共和国に認められた聖女よ。
私は聖女として認められた日に、洗礼を受けて、すべてを思い出したの。
ここは夢にまでみた『星空のロマンス』の世界!
私は、本当にヒロインとして転生したのね。
あの方は、本物の神様だったんだわ。神様ありがとう。
何かしら、このデジャ・ビュ。
私、随分前にも、同じことを考えたような気がする……。
ゲームを遊んでいた頃の記憶と混乱しているのかな?
雪乃はどうしたかしら。
現世で、急にいなくなった私を心配して探してくれてるのかな。
ごめんね、雪乃。
でも私、もう、元の世界には戻りたくない。
この世界で愛しのネプチューン様と幸せになりたいのよ。
……。
でも、待って?
なんだか、色々とおかしいわ?
世界は平和そのもの。
ネプチューン様に蹂躙されていないわ?
さすがに、ゲームのオープニングまでは詳しく覚えていないけど、これからだったかしら?
**――*――**
気のせいじゃなかった!
絶対におかしい!
見て、このトランスサタニアン帝国情報誌を!
愛しのネプチューン様のお姿をスクラップにしようとして取り寄せたら、ユリシーズとの間にご子息がいるってどういうこと!?
ユリアはどうしたのよ!
だいたい、ユリシーズは隻眼の魔女のはずなのに、火傷の痕がないどころか、風神の巫女、トランスサタニアン帝国の聖女ってどういうこと!?
あなたは闇幽鬼のはずでしょ!
顔の半分が醜くただれた悪役令嬢のはずでしょ!
なんで聖女なの、なんで庶民出の女があつかましくネプチューン様の隣で微笑んでいるのよ!
……まさか、ユリシーズも転生者なの!?
そうよ、それなら説明がつく。
デゼルは違うわね、明らかにゲームのキャラよね。
可哀相に、二十七名もの闇主を従えているんですって。
そんなに大勢の悪い男達に犯られちゃったの?
でも、あなたはそうでなくっちゃ。
ネプチューン様の傍にいる美女達は、かたや汚され尽くし、かたや顔が焼けただれていて、ネプチューン様のお相手になんて、なれない状態でないとならないの。
二人とも、ネプチューン様に恋焦がれているのよね。
でも、駄目よ。
麗しのネプチューン様は、ヒロインである私のための方なの。
そのはずでしょう!?
どういうことなのよ、ユリシーズ!
まさか、雪乃なの!?
でもあなた、ネプチューン様のことは好きじゃなかったはず、蒼紫様と翡翠様がお気に入りのはずでしょう!?
あ、わかった。
わかったわ、私。
雪乃ね? ユリシーズは雪乃ね?
ネプチューン様のことはそんなに好きじゃなかったはずだけど、嫌いなはずはないものね。
私がヒロインに転生してしまったものだから、ユリシーズに転生してしまって、ユリシーズの立場では、ネプチューン様を狙わざるを得なかった、そういうことね?
いいわ、光の使徒の二人くらい譲ってあげる。
ネプチューン様の妃ではなく愛人なのね、うん、許してあげる。
雪乃のお気に入りだった蒼紫様も翡翠様も譲ってあげるから、ネプチューン様のことは忘れてちょうだい。
それでいいわね。
**――*――**
いつになったら、シナリオが始まるのかしらと思っていたら、もっと、おかしなことが起きたわ。
世界が平和なままで、光の十二使徒の誰にも会えないうちに、デゼルが闇主軍団を連れて私を襲いにきたのよ!
「きゃぁああ!」
ちょっと、待ってよ!
いくら聖女と言ったって、まだ、レベル1よ!? ソロで勝てるわけないじゃない!
そう思っていたら、長身のスーパーイケメン、ネル様のご登場よ!
ああ、ゲームで見たより、もっとカッコイイ!! ネル様、ネル様、最高に素敵よ!!
「あら、聖女様は運がいいのね。今日のところは退くことにしましょう」
冷たく微笑んだデゼルが、シナリオ通りのセリフを言って、モブリーダーと一緒に去ったわ。
デゼルもさすが、凄絶な氷の美貌ね。
だけど、少女のうちにあんなにたくさんの悪人達に汚されたんじゃ、台なしよ。
おかげで、モブリーダーごときのために命を捨てる人生を選ぶのよね。
デゼルのモブリーダー、思ってたより、若くて整った顔立ちをしてたけど、もちろん、ネル様とは比べものにならないわ。
安心して、デゼル。
私、あなたを殺すようなところまでシナリオを進めるつもりはないの。
だって、あなたを殺してしまったら、次はネル様だもの。
ユリシーズもデゼルのようにおとなしく、シナリオ通りにしていてくれれば、私、何をするつもりもなかったのに。
雪乃が聞き分けなかったら、戦わないとならないかもしれないわね……。
【シリーズ新連載】サイファ ~少年と舞い降りた天使~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/781509349
今、勇者でも転生者でもない町人Sが邪神と相対する――!
みんなは、イセカイテンセイって知ってる?
僕が住むこの世界は、二柱の神様のゲームの舞台だったんだって。
世界の命運を懸けて、光と闇のテンセイシャが試練を与えられて、僕はそのど真ん中で巻き込まれていたらしいんだけど。
僕がそれを知ることは、死ぬまで、なかったんだ。
知らないうちに、僕が二つの世界を救ってたなんてことも。
だけど、僕にとって大切なことは、僕のただ一人の女の子が、死が二人をわかつまで、ずっと、幸せそうな笑顔で僕の傍にいてくれたということ。
愛しい人達を、僕もまた助けてもらいながら、きちんと守れたということ。
僕は、みんな、大好きだったから。
たとえ、僕が町人Sっていう、モブキャラにすぎなかったとしても。
僕はこの世界に生まれて、みんなに出会えて、幸せだったし、楽しかったよ。
もしかしたら、あなたも、知らないうちに神様のゲームに巻き込まれて、知らないうちに世界を救っているかもしれないね。






