第70話 悪役令嬢は七年間の幸せな時を過ごす
それとね。
私、サイファと結婚式を挙げて、もう子供も生まれたの。エトランジュ一歳よ。
とっても、可愛いの。
天界で過ごした七年間は、本当に平和で幸せな時間だった。
神様とのゲームは豊穣の女神テラ・マーテル様の承認を頂いた後、今度は、風神エンリル様の祝福を選んでみたの。
だけど、承認条件が ≪Secret≫ で、もう三年間、承認を頂けないまま。
大地母神様の承認条件は、豊穣の力によって実った特別な収穫物を一万人以上に振る舞い、大地母神様に感謝を捧げる収穫祭を七年間に渡って行うというもの。
ガゼルの協力がなかったら、到底、無理だったくらいには大変だったけど、それでも、承認条件がわかっていたから、風神様よりは攻略のしようがあったの。
風神様の承認はもうお手上げよ。
ヒントも承認イベントも何にもなくて、たぶん、最後まで承認を頂けずに詰むとしたら、風神様で詰むんじゃないかしら。
つまり、七年の間に祝福と承認を一つずつ頂いただけで、あまり進んでいないんだけど。
攻略情報を確認したら、アフロディーテ様の承認に関わるイベントは、私が十七歳になることが発生条件だったから、これからね。
運命の女神テュケー様の祝福は『星空のロマンス』のシナリオ本編が始まった時点で頂けるそうだから、たぶん、もうすぐ。
御名も御力もすべてが謎に包まれた最後の神霊の祝福は、十二霊の承認をそろえた十三日後だから、まだ先ね。
これまでに頂いた祝福が十種で、承認が八霊。
ユースティティア様の承認取消条件を見た時には、ゲームクリアの可能性はないと思ったのに、もしかしたら、クリアできるのかもしれない雰囲気になってきているの。
もしも、クリアできたら、二つ目の願いは、エトランジュへのご加護にしたいな。
エトランジュが健やかに幸せに生きられますように。
どうか、エトランジュは、私みたいな目には遭いませんように。
私にはサイファがいてくれるから、もう、この上なく幸せで、満足なの。私のことでお願いしたいことはないの。
多くのことが順調なんだけど、順調だからこそ、気がかりなこともあるの。
『星空のロマンス』のシナリオ本編の悲劇は最後だけ。
ヒロインが活躍し始めた後の世界は、どんどん明るく、希望に満ちた方向に進むはずなの。
犠牲になるのはデゼルの闇主軍団と闇の十二使徒、そして、ネプチューンだけ。
闇落ちを阻止した闇の十二使徒のうち、クライスをはじめ四名は、私の勧めに従って、すでに、ネプチューンの配下を抜けてくれた。
そもそも、ネプチューンが最初からヒロインをユリアの転生だと認めてくれれば、すべての悲劇をキャンセルできるんじゃないかしらとも思うんだけど。
やっぱり、テュケー様がエリス様みたいにして、強引にシナリオを開始しないとも限らないし。
私を信じてくれた闇の使徒には、あらかじめ、皇宮を脱出してもらったの。
ネプチューンには教えてあるのよ。
聖サファイア共和国に、ユリアが聖女として転生するって。
だけど、何が気がかりかって、ネプチューンがユリシーズを愛人にして、子供までもうけていることなの。
ちょっと待って。
ユリアはどうしたのよ。
シナリオ通り、ネプチューンはユリアを正妃にするとほざいているけど、じゃあ、どうしてユリシーズに手を出したのよ。
そういえばあの人、私にも手を出したんだった。
『星空のロマンス』で、ネプチューンのための月齢の首飾りが必要だったわけよね。
いったい、ネプチューンはユリアを正妃にした後、ユリシーズと子供をどうするつもりなの? 男の子よ?
ユリシーズも京奈も、ネプチューンのどこがいいんだろう……。
そこだけが、とんでもなく、火種な感じがして不安なの。
京奈がネプチューンに愛想を尽かして、お気に入りの光の使徒に乗り換えてくれれば、丸く収まるんだけど……。
とりあえずは、シナリオ通りに二人を引き会わせるつもりよ。
ほとんど犠牲もなく、ハッピーエンドになるシナリオだもの。
なるべく、変更しない方がいいのよね?
★☆ シリーズ作品のご案内 ☆★
https://velvet-kazakiri.ssl-lolipop.jp/kaza/dezel/
【漫画】悪役令嬢と十三霊の神々
https://www.alphapolis.co.jp/manga/153000069/756507764
4コマ連作みたいな形式のコメディです。
【新連載】サイファ ~少年と舞い降りた天使~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/781509349
『悪役令嬢と十三霊の神々』をサイファ視点で書いた物語です。
たいへんなことになっています。
何を考えているのかわからないと言われがちなさいふぁ様が、
あの時、この時、考えていたのはまさかの――!?
【新連載】ガゼル ~夜明け前~
https://www.alphapolis.co.jp/novel/153000069/239523711
『悪役令嬢と十三霊の神々』シリーズの次世代編です。
オプスキュリテ公国の第二公子ガゼルは、
すべてに恵まれたような白馬の王子様。
けれど、大帝国の皇女様にその美貌を見初められ、婚約を強いられ、
初恋の少女エトランジュとは引き裂かれてしまう。
十年後、帝国側からの婚約破棄に、ほっとしたのも束の間。
ようやく再会したエトランジュと結ばれるチャンスは、再会からわずか数日。
手が届かない世界に旅立ってしまう直前のエトランジュ、
そうとは知らないガゼルは――






