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悪役令嬢と十三霊の神々 ~悪役令嬢はどうしても町人Sを救いたい ~  作者: 冴條玲
第二章 魔神ルシフェル来襲 ≪永遠のロマンス≫
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第67話 公子様は悪役令嬢を救いたい

 先に使者を出して無事を知らせてはいたけど、私とサイファがようやくガゼルへの挨拶(あいさつ)に一時帰国したのは、翌月になってからのことだった。


「デゼル! サイファ! よく無事で!!」


 公邸のガゼルの私室に通されて、最敬礼した私とサイファを、ガゼルは順に抱き締めてくれたの。


「心配したよ、デゼルもサイファも邪神エリスに連れ去られたきりで」

「ガゼル様、ありがとう。ガゼル様は私とサイファの命の恩人。ごめんなさい、私、何度も、何度も、夜明けの守護を使ったの。ごめんなさい」


 優しく笑ったガゼルが、かぶりをふった。


「もっと、遠慮なく使うように伝えたかったよ。それでも、私の力でデゼルを助けられたならよかった」

「ガゼル様……」

「サイファと一生懸命に探したんだけど、見つけてあげられなくて、つらい思いをさせてしまったね」


 今度は、私がかぶりをふったの。


「私、見つけて欲しくなかった。エリス様に呪いをかけられて、ずっと、ガゼル様にもサイファにも、会うわけにいかなかったの。でも」


 ガゼルが優しいから、私もようやく笑顔になれて、ガゼルを見たの。


「ガゼル様、私達、公国の滅亡を阻止できたよ……! 神様がもう、大丈夫だって」


 ガゼルが喜びに顔を輝かせて、もう一度、私を力強く腕に抱き締めてくれた。


「よかった……! ありがとう、デゼル、サイファ、二人には、どんなに感謝してもしきれないよ。本当に、公国のために力を尽くしてくれてありがとう」

「ガゼル様だって、力を尽くして下さいました」


 顔を曇らせたガゼルが、真剣な瞳をして私を見たの。


「ねぇ、デゼル、私と駆け落ちしない……?」

「え」


 私はぽけっとしてガゼルを見た後、吹き出してしまったのよ。


「やだ、ガゼル様、どうしてそんな冗談……」

「私は本気だよ」


 ガゼルが怒った顔で私を見てた。でも、私に怒っているわけじゃなかった。


「公国を滅亡から救ったのは、間違いなくデゼルとサイファだ。それなのに、どうして、そのデゼルが淫売の魔女だなんだと(さげす)まれなければならないんだ! 私は……私はもう、公子の立場では、デゼルを妃に迎えることさえできない! デゼルより公妃にふさわしい令嬢なんて、公国中探したっているはずがないのに、この報いはどういうことなんだ!」


 エリス様が十二日目に私に見せた悪夢は、知っていたけど、本物だったの。

 私はもう、公国にはいられない。

 起きなかった戦争が起きるはずだったことを知っているのは、私とサイファとガゼルだけ。

 あとは、神様だけ。

 だから、私がみんなに感謝されることはなくて。


 それどころか、私は帝国の内戦による犠牲者を最小限に抑えるために、闇主たちを使ってしまったから。

 十数名の死者が出ただけで、内戦は終結したけど、まだ十歳の私が何十人もの闇主たちと交わったことが、みんなの知るところとなってしまった。

 公国の裏切り者、堕ちた闇巫女、淫売の魔女。

 公国の滅亡と帝国の内戦を阻止した私に与えられたのは、そういった称号と、苛烈な迫害だった。


 闇神殿もそのままでは到底、存続できなくて、水神を(まつ)る神殿に立場をかえて、そうでなくても公子のガゼルが、祭主まで務めなければならなくなったの。

 でも、私とサイファの部屋は、そのまま残してもらえているのよ。

 だって、私が水神なんだもの。


「ごめんね、ガゼル様。ガゼル様の御代には政教分離を求めたいって、私が望んだのに。結局、どちらもガゼル様に背負わせてしまった」

「そんなことはいいんだ。私は、もとよりデゼルを妃に迎えるつもりでいた、私の責任のことはいいんだ。だけど私には……! デゼルとサイファが公民から受ける迫害を、止めてあげることさえできない!」


 顔を覆ったガゼルの指の間から、涙が零れ落ちた。



挿絵(By みてみん) 【挿絵】カゴ様

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