転入7
7話です!
━━━━走る。
普通の人間はどの程度の速さで走るのかを知っているだろうか。
一般の男子高校生などは、100mを15~6秒で走る。女子高校生などはだいたい18~9秒辺りだと思う。
その中でもトップスプリンター、所謂陸上選手は100mを10秒近くで走る人もいる。
そう、普通の人間の限界はそこまでである。
しかし、
「くっ!!間に合えっ!!」
僕は現在『力』を発揮していた。
そのため、通常は出ないレベルの足の回転、ありえないレベルのストライドが実現できるのだ。
(ギリギリかっ……!)
そう思い今の限界のスピードで路上を駆ける。
僕はこの『力』等を使いこなす為、異能が発揮してから10年。里で訓練をしていた。
この訓練とは、人に能力を気づかれないようにするためのものと、力のセーブをする、などのようなものである。
長い訓練の中、僕は10年にてようやく『異能』を制御できるようになったのである。
そして今は力のセーブを9割抑えた状態の限界であった。
走り、走って、駆け抜けてようやく湯川の姿が見えた!
(まだっ!間に合う!)
僕は油断して、力を緩めた。
そう、僕は湯川の後ろ姿を見て、
油断をしたのだ。
走っていて気づいかなかったが、もう交差点に着いてしまっている。
悪夢で見たワンボックスカーが横目に映る。
そこで嫌な汗が出る。
再び、急に速度を上げて湯川の元へ辿り着き、
「湯川!!」
そう言って、交差点を駆け足で進む湯川は足を止めた。
そのまま、『能力』を使ってこちらに引き寄せる。
「わっ!わわっ!」
急に後ろに引き寄せられて湯川は驚きを持っているが、今は関係ない。
そして、湯川を引いてきて抱き寄せる。
そのまま後ろに倒れるが、まだ終わりじゃない。
歩道への道を『能力』で塞ぐため透明な壁を作る。
その数瞬遅れて勢いよく、ワンボックスカーが車道を通って行く。
(ま、間に合った〜)
何とか成し遂げて、干渉していた『能力』を解く。
僕が安堵して交差点を眺めていると懐から湯川が顔を出した。
「かっか、かか上井っ!なななにしてんの?!」
湯川が慌ててなにか言い出した。
(あーそうか)
僕は気づいて湯川を抱いていた腕を緩めて解放した。
「なっ何してんの!ひ人前でっ!」
僕は、湯川が助かったことに安心して笑って言葉を受け止める。
「何笑ってんの!んもう!上井なんて知らない!!」
そう言い残し、湯川は帰って行った。
その後ろ姿が、ちゃんと生きている、ということに嬉しさを含めて、ただ、
「良かった」
それだけしか言葉が無かった。
今日か明日に次の話を上げます。。