転入5
5話目ですね。はい。
「で、上井先輩と湯川先輩は何をしにこんな何も無い4階へ?」
先程から春本さんの棘が凄い。
「いや、転校初日だから湯川に案内してもらってたんだ」
と答える僕。
「ふ〜ん」
と特に興味も無さげで僕の話をあまり聞いていない。すると、湯川の方を向いて、
「それじゃあ、練習終わったんで帰りますから。お疲れ様です」
と挨拶をして階段を降りていった。
「かのちゃん悪い子じゃないんだよ。ただ、人付き合いが苦手なだけなんだ」
だろうな〜、と苦笑気味に僕は応じた。
それから、別校舎に向かっていく。
「上井は何か運動ってできるの?」
と湯川から質問を受けた。僕は少し考えてから、
「スポーツにもよるだろうけど、わりかしできる気がする」
そう自信あり気に伝えた。
「ほぅ、ちなみに体育は男女一緒だから、その時確認させていただきます」
ニヤリといった感じで僕に言ってきた。そのニヤケ面は妖しさも含めて可愛い表情だった。
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別校舎に行き、職員室や、美術室、被服室などを見回り最後に調理室にたどり着いた。
「ここが最後!調理室だよ!なんと今日は調理部が活動してるの!」
そう言って嬉しそうに微笑む湯川。
どうして微笑んでいるのだろう。
「あっ、その顔は分かってないね。それじゃあ中に入ってからのお楽しみだ」
そうして調理室の扉を開けた。
そこからはこおばしい香りが漂ってきて僕の鼻腔をくすぐる。
「柏木せんぱ〜い、お菓子頂けますか〜」
笑顔で1人の女子生へ近づいて行く湯川。
それに向こうも反応してみたいで、
「あ〜董ちゃん。また試食しに来てくれたの〜?」
と何だかのんびりした感じの雰囲気の女生徒だった。ゆるふわな感じで背は湯川さんより少し小さい。長くふんわりしている髪は奥で結んであり、とても魅力的な感じな美人さんだ。
「ん〜?そちらの彼は董ちゃんの彼氏さんかな〜」
と柔らかい微笑みで湯川に尋ねてくる。
「ちっ違いますよ!私はただ転入生の彼を案内してるんです!」
と強く言っている。そこまで否定しなくてもいいじゃないか、と内心思うも顔には出さない。周りの調理部の人達もクスクスと湯川を見て笑っていた。
「あら、そうだったの〜。それじゃあ調理終わったらお茶にしましょうか〜。どうせお昼も食べてないんでしよ〜?」
と湯川を諭した。この人はだいぶお姉さん気質のようで、振舞いから慣れているものだと分かる。
「あっ、はい、ありがとうございます!それじゃあ上井、私たちはお皿の準備!」
そう活気付いた表情でこちらに要請した。
「分かった、こっちのお皿大丈夫かな?」
と僕も準備を手伝う。時折、他の調理部の人達と助け合い、準備を進める。
「うん、大丈夫!」
と、そんな感じで手早く行われた。
「それじゃあ、皆い〜い?いただきます」
先輩?が音頭をとって僕達も、
「「「「「いただきましす」」」」」
皆一斉に食べ始める。
今日調理部が作っていたのはチョコレートケーキだった。僕は運が良いと頬を緩める。チョコは幼い時からの癒しであり、大好物だ。出来上がっているチョコレートケーキは外側にチョコのクリームが無いが、鋭角の部分に白いパウダーがかかっている。僕はフォークを手に取りケーキを分け、口に運ぶ。
「ん〜〜!上手い!なにこれ!すごい濃厚だよ!」
いつも口にしてたチョコレートケーキのは何かが違っていて衝撃を受ける。
「フフ、これはね。ガトーショコラっていって、濃厚な味わいが特徴のチョコレートケーキなのよ〜。」
先輩?が僕に答えてくれる。へぇーガトーショコラって言うんだ!
「何だか無邪気で可愛らしいわね〜」
と言われてしまい恥ずかしくなってしまう。
すると湯川が、
「それじゃあ、紹介しちゃうわね。こちらは3年の柏木空先輩ね。」
と紹介し始める。
「はい、3年の柏木空で〜す。よろしくね〜」
にこやかにこちらに挨拶をしてくれる。
「で、こっちが今日私のクラスに転校してきた上井智人君。」
「宜しくです柏木先輩」
僕も軽く挨拶を交わす。
すると、
「そっか〜、頭いいんだね。上井君は〜」
とこちらを褒めてきた。
僕はそれに気恥ずかしくなり、口ごもる感じで、
「あ、ありがとう、ございます」
と答えた。
何だか急に周りが静かになったので、慌てて調理部の人達を見渡す。そうすると、皆こちらに視線を向けていた。
「えっ?えーと?」
わけも分からず声を上げたら、
「上井君。のりくんって呼んでもい〜い?」
頬が蒸気している柏木先輩がこちらに同意を求めてくる。僕は再び恥ずかしくなり、
「い、いや急にはちょっと」
と俯いてしまった。すると教室中から、
「「「「「可愛い〜〜!!!」」」」」
と急に声が上げられた。複数からの発声に肩をビクリと反応し、驚いてしまう。こんなの村の調和でも滅多に無かった。
「上井君、一旦教室出ようか」
助け舟は湯川から来た。
湯川はそのまま僕の手を取り室外へと連れ出す。
僕には何が起こっているか検討もつかなかった。
ついつい時間を忘れて書いちゃいますね。反省です。