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目が覚めたら!?

ヤバッ

目が覚めたら、あたしの横には見知らぬ男がいた。


――――――って、軽く言っちゃだめだよ。

なぜなら、あたしは伯爵家の長女で、王太子様の婚約者なんだ。

見知らぬ男と朝を迎えちゃうなんて、ヤバイなんて言葉ですまされる問題じゃない。

ギロチン物の状況だ。


もし、隣に寝ているのが王太子なら!

ちょっとした望みを込めて、掛布団をペロッとめくってみた。


知らない。本当に知らない。

まったくの初対面の男だ。


優男風の王太子に比べて、野性味溢れるワイルド男子がスヤスヤと寝息を立てていた。


「ん? 朝か」

あたしの起きた物音に反応したの、隣で寝ていた男が身じろぎして、目を開けた。

「起きてたのか」

男はあたしを見て、何の疑問も持つ様子がなかった。


「あの、あたし昨日、何があったのか」

「覚えてないのか? チェージリア家の夜会のあとのこと」


――――――チェージリア家の夜会には行った。


間違いなく、行ったんだけど。

途中からまったく、といって良いほど、カラリと記憶がなくなっている。


「意識がない女を連れ込むなんて、ゲスのやりそうねことね」

「あぁ?」

男が上半身を起こして、あたしを睨みつけた。


「馬鹿が。俺を連れ込んだのはお前だ!」

「はぁ?」

伯爵令嬢ともあるあたしが、見知らぬ男をベッドに連れ込むなんて、絶対にありえない。

この男の陰謀か、他国の陰謀だ。

しかも、ここは見知らぬ部屋。

男くさい内装から、男の部屋であることは間違いないだろう。


「あんたの部屋にあたしがどうやって連れ込むっていうのよ!? あたしはあんたと初対面よ!?」

「しな垂れかかって、俺の部屋に行くって聞かなかったのはおまえだ!こら!?」


怒鳴る声には抜群の迫力があって、並みの令嬢なら震え上がってしまうほどだ。

だけど、残念ながらあたしは並みの令嬢ではない。


「百歩譲ってあたしがあんたを連れ込んだとしても、ベッドの上のことはあんたの責任でしょう!?」

言い返した勢いのまま、男が怒鳴り返してくる。


「だから、責任転嫁すんなや! 俺にまたがってきたのは、おまえだ!」


――――――キィッ

この男、伯爵令嬢をなんだと思ってるわけ!?


「下品なこと言わないでよ!」

「下品なことしたのは、おまえだって何度言わせんだよ!?」

「男なら責任とるとか、そのぐらいの見栄はりなさいよ。」


それが例え、嘘だとしても。

睦言のひとつやふたつ、吐いて欲しいものだ。

けれども、あたしがウッカリ引っかかった男は、その手の類にはまったく縁遠い男だったようだ。


「おれはあんたに詫びのひとつももらいたいもんだ」

いけしゃあしゃと言い返してくる。

「乙女の純情、舐めんじゃないわよ」

「舐めてんのはおまえのほうだろ?!」

打てば響く鐘の音。


「あー、もう、朝っぱらからいい加減にしよーや。疲れたわ」

先に音をあげたのは、男のほうだった。


「結構なことね。あたしは帰るから、あなたは寝るなりなんなり、勝手にしなさいよ」

「あー、帰れ帰れ。ここは俺の家だ」


男はまるで、猫を追い払うように、手をひらひらと揺らした。

「あんた、本当にゲスな男ね。釣った魚を手荒く扱うとあんたも、ぶっ潰されるわよ」

「釣った覚えがねぇよ!」


あたしの言葉に、男は最後まで勢いよく怒鳴った。

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