少年星を愛す
昔々、ある日の事。
青い星と呼ばれた地球に小さな隕石が落ちた。
その小さな隕石の威力は叡智を持った人々の予想を遥かに上回り、地球の表面は太陽のように炎の海と化す。
海に飛び込んでもマグマが襲い、空へ逃げても竜巻が襲う。
もう逃げ場はない。ひたすら逃げ惑うしかない地球上の生命体は落ちてきた隕石を怨んだ。
何故こんな目に。何故ちっぽけな隕石が。何故。何故。
その様子に口元に笑みを浮かべる者がいた。
「壊してくれてありがとう。」
感謝の言葉を隕石に捧げる、深い青髪の少年。
彼はこの星を壊した隕石に手を伸ばした。
青の星が滅んで何億光年たっただろうか。
今この時代の人間は一人一人宇宙の星と繋がっていた。
人が死ねば星が消え、星が消えれば人が死ぬ。
星の環境は繋がっている人の体調でもある。
星が汚染されれば人は病にかかる。
星が消えればそこに住む多くの生命が消え、そしてまた星が消える。
そんな連鎖を起こさないためにも、管理者という役割が存在していた。
「おい、そこのお前。この星の住民か?」
いかにもガラの悪そうな男が、煙草をふかしながら問いかけた。
「そうだけど、外部からきたの?ここ禁煙なんだけど。」
ピンを大量にとめた金髪に、赤い眼の少年が不機嫌そうに立ち上がって答える。
ついでに壁にある火気厳禁の張り紙を指差して抗議した。
「ははっ細かいこと気にすんなや。なんだお前、何かやらかしてゴミ拾いさせられてんのか?」
少年が軍手に黒い袋を持っているのを見て、大変だなぁ〜と男は笑い飛ばす。
フゥーッとあたりに撒き散らされる煙に少年は顔をしかめたが、男は自信満々に語り始める。
「オレはこう見えてもいくつもの星を管理していてな。最近数個なくなる予兆があったから新しい星を探していたんだ。この星のルールはかなり厳しいと聞いてたがな。確かに娯楽が少なすぎるが、かなり広いし色々改良のしがいがある。」
男は煙草を地面に擦り付けた。
少年は微かだが、ピクリと肩を動かした。
「あ、知ってるか?聞けば管理者はまだガキらしいじゃねーか。こんな星、さっさとオレが管理権限を奪ってもっと住みやすくしてやるよ。」
男が最高の笑顔でそう言い切り、何か欲しいものはあるかと尋ねた瞬間、少年は目に見えぬ速さで黒い袋の口を広げ、男に飛びかかった。
ー数分後。
「ああ、良かった。今日は燃えないゴミの日で。」
しかもちょうど近くに処理場があって運ぶ手間が省ける。
少年はうごうごと動く黒い袋を積み上げ、満足気に口角を上げた。
次回ヒロイン目線です