第1話
「ねえ、第三京浜てあっという間に終わっちゃうね」
僕はぶっきらぼうに答えた。
「世田谷から横浜まで十五分で着いちまう高速だけどな特別な道なんだよ俺には。そうだ昔、杏里で第三京浜を歌った歌があったな知らないだろう?」
「杏里知ってるよ、ママがカラオケでたまに歌うよ。」
ママ、俺はいったいいくつだよと思った。よく考えれば茜よりも茜のママの方が歳が近いのだ。俺は40で茜は今年25だ、ママは確か50。納得だ。俺たちは横浜で暮らしている。
横浜は昔から特別な場所だった。学生時代、世田谷に住んでいた。免許を取って初めての遠出は横浜で初めて乗った高速も第三だった。このわずか十五分足らずの短い高速にいろいろな思い出が山ほど詰まっている。
「茜、たまにはマリンタワーに昇ってみるか?」
「なんで本牧に住んでるのにマリンタワーなんて行かなくっちゃいけないのいよ。それよりもバーニーズに行こうよ。買いたい服があるんだよね。それにねタラちゃん知らないだろうけど、今マリンタワーは改装中で入れないのよ。」
「そうか、改装中か」
僕はすぐ近所に住んでいてそんな事も知らなかった。20年前、横浜は特別な場所だったが今は日常になっている。時の流れは止まらない。