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始まりと終わりの快感

作者: とるすく

なんの変哲もないただの町。

しかし近頃、この町ではなぞの自殺者が増えてきている

理由はわからない。


キーンコーンカーンコーン

学校のチャイムが鳴り響く。

「あー、やっと終わったか」

教師のながながとした話しも終わり、下校時間になる

周りを見ると友達と仲良くしゃべっているもの、

先生と話しているもの、急いで部活に向かっていくもの

いろいろな人たちがいる。

そんな教室の隅に一人だけぽつんと立っている少女がいた。

「ん? あんな子いたっけか? 」

じっと見つめていると少女がちらっとこっちを見たが

すぐに目をそらされてしまった

「なーに見てんだ? おめぇ」

「ん? 」

振り返ると斉藤がいた

「誰かいんのかよ、そこに」

斉藤が教室の隅っこをを見る。

俺も一緒にみるがそこには誰もいなくなっていた。

「だれもいないやん」

「おかしいな。たしかにいたんけど」

「ふーん? まぁいいや、いこうぜ」

教室の隅っこにいた少女は消えるように

その場所からいなくなっていた



「最近さぁ? なんか自殺のはなし多くない? 」

「そー、そー。まじだるいって感じ?

別にいわれなくてもやりませんけど、みたいな? 」

「まじそれ。毎回自殺者出るたびに似たような話ししてさ。

 先生も飽きないのかね? 」

「ほーんと。てかそもそも最近まじで多すぎ。

どんだけ自殺願望者が集まってんだよこの期間に」

「ガチね。なに?最近会社でもつぶれたの?」

「さぁ。しーんない。でもなんかあれなら知ってるよ。幽霊の噂」

「なにそれ」

「ゆっても私も詳しくしんないけど、いきなり? 自分の近くに幽霊が

 出るようになって、その幽霊に気が付いたら殺されてるんだって」

「えー、なにそれやばっ。でもそれで死ぬって弱すぎでしょ」

「さぁ、あれじゃない? こう、魂をガッてとるみたいな」

「それ幽霊目の前に出てくる必要性ないじゃん」

「まじだ」

「ばかじゃん」

「うーるさい」


「なー、斉藤? 」

「なに?」

「こいつらよくこんな近くでしゃべれるよな」

「別に。見えてないんだろ」

街中の人ごみに紛れながら話しを続ける。

「まぁそーだろうけど。話しに夢中になると周りが見えなくなるって本当かね? 」

「さぁ。やってみたら? 」

「いや、話しに夢中になれねぇ。てかそんなこと考えながら夢中になれなくね? 」

「それが真実だろ。周りが見えてないじゃん」

「なるほど? てか最近は自殺の話しばっかだな」

「まぁ、件数が件数だからな。みんなそんなもんだろ」

「ふーん、そんなも…」

「どした? 」

「いた」

と俺は正面の人ごみを指す。

その先には…


「ほらあの子だよ、さっき言ってたの」

少女が立ち止まってこっちを見つめていた。

しかし目があったかと思うとくるりと振り返り、

人ごみの中へ消えていく。

「あ…。ちょっと待って」

俺は人ごみを抜けながら少女を追いかける。

「おい! ちょっと待ってってお前が待てよ。つかどこだよ少女は」

斉藤も俺の後ろをついてくる。

前を走る少女は時々こっちを振り返りながらも

人と人の間をスルスルと通り抜けていく。



はぁはぁはぁ

いったいどのくらい追いかけたのか。

あたりは薄暗くなり周りに人はいなくなっていた。

「どこまでいくんだよ」

後ろにいた。


斉藤と一緒にあたりをしばらく歩く。

追いかけていたはずの少女はいつしか見失っていた。

「いなくなった」

「いや、いなくなったじゃねぇよ、どこまで行くのかって言ってんだ」

「さぁ、そこまで考えてなかったな」

「はぁ。俺はもう帰んぞ…、ん? もしかしてあれか? 」

「え? 」

斉藤が指さす方向を見ると、そこには追いかけていた少女らしき姿があった。


「ほんとにいたんだな。んじゃもういいな俺は帰るから」

「なんでだよ、一緒に来いよ」

「やだね。さっき可愛い子いたんだよ、早くしねぇと見失う。とゆうことで」

じゃな~と斉藤は足早に来た道を戻っていった。

急にあたりがシンっと静まり返る。

俺は正面の少女を見る。

先ほどまでとは違い下を向きただ淡々と歩き続けている。

そんな時、


カンカンカンカン

と小気味のいい遮断機の下りる音が鳴る。

先には踏切が見える。

しかしよく見ると遮断機は下り始めていなかった。

なんでだ? と思うと同時に少女が目に入る。

少女は顔を上げしかし淡々と踏切へと近づいていく。

カンカンカン

顔を上げ歩いていく。


まさか…。

心の中がざわっとする

嘘だろ…。いや、はやく!

俺は急いで少女に向かっていく。

少女はもう踏切まで到達する。

よし、間に合う!

すると

少女は立ち止まった。


そしてゆっくりとこっちを振り返った。


俺は必死に手を伸ばす。

その手をつかむ

しかし少女の手に触ることはできなかった。


「え !?」

そんな声がでた。

少女は俺の手を振り払うかのごとく

線路の中へ足を踏み出していた


キィィザァザァン

ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン

キィィ


目の前を電車が通りすぎていく


俺は線路の前にいた。

そして今起こった出来事をじっと見つめていた。


少女は線路の上にいた。

電車の通りすぎた線路の上に…

体が震えるのがわかる。


「お、おい」

声をかける。

声が震える

少女は動かない。


震える体を動かしながら少女に近づく。

「おい…」

俺はそっと少女の肩をさわる

ようやく気が付いたのか少女はゆっくりと

俺のほうへ振り返った

「っ! 」

視点が一か所に集中する。

振り返った少女の顔

それはこの世のものとは思えない。

なんとも表現のしようのない顔そのものであった。


「…」

声は出なかった。

ひくひくとしながらおもわず口角が上がる

やばい。

そう思った瞬間さっきまで震えていた体は動き出した。

今までの来た道を戻る。

やばい

やばいやばいやばいやばいやばい

やばいやばいやばいやばいやばい


道を戻って行くとそこにはさっき分かれた

斉藤が女の子と歩いていた。

「斉藤! 」

声をかけると斉藤は立ち止まった。

「どうした? 」

斉藤がこっちへ振り向くその顔は…。


俺は震える。

斉藤の顔は斧で何度もズタズタにされたような顔だった。

その瞬間となりの女の子が倒れこむように襲い掛かってくる。

俺もその場に倒れこんだ。

おなかのあたりが痛い。

体が震えて動けない。

体の限界がきているのがわかる。

視界が涙でにじむ。

呼吸が…。







「くくくくく! かっおまっ! 」

腹が痛い。

「お前。俺、お前のその死んだときの顔ツボなんだからやめろよ」

「しょーがねーだろ。ちょうどその子ビビらせようとしてたんだからよ」

斉藤が指さす先にはさっき倒れこんできた女の子がいる。

気絶しているようだった


「んで? あなた様はなんでまた急いでこんなところに? 」

「そーだよ、それ。さっきの子殺ったんだけどさ、もう最高」

「はやいな。どうやったんだよ」

「それがさ、なんか奇跡的に踏切の遮断機がおりてこなかったんだよ。

 それ見て今しかないと思ったね。んで後ろから近付いて脅かしてやろーと思ったら

 直前で振り返んの。したら向こうが勝手にびっくりして声出しながら後退り、

 あとは来た電車でドンよ」

「あぁ、やっぱ帰らんかったらよかったな」

「だから言ったろって。しかし即死はいいなぁやっぱ、幽体がその場に残ってくれるから。

 あの子の死と生と希望と絶望と困惑の混ざりきった顔。笑いが止まんねぇ」

「ったく。一人で満足してんなよな」

「わりわり、つってもその子いんじゃん。どうすんの」

「どうすんのっていつも通り自分で顔ズタズタにして死んでもらうよ」

「はっ。やっぱ最高だわお前」




なんの変哲もないただの町。

しかし近頃、この町ではなぞの自殺者が増えてきている

理由はわからない。

ただし、これだけは言える。

自殺とは理由もなしに死ぬことではない。

そして殺人者が必ず見えるとは限らない。




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