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あの手紙を貼ったのは誰なんだろうと。そんな犯人探しを少なくとも私だけはする間もなく、彼女は私に囁いた。
「あの手紙を書いたのは、私なの」
よくある青春ミステリのような幕は上がらなかった。
あの一文で、薄々彼女だろうなとはわかっていた。だけどこれで疑惑が確信に変わった。点と点が線で結びついて、あの手紙で何を伝えたかったのを理解した。
「それって、ここでしてもいいような話なの?」
彼女は押し黙ったまま答えない。沈黙は肯定と否定のどちらにも取れたので、自分の意志を優先する。
「放課後、秘密基地で会おう。そこで話したい」
彼女が一体どんな気持ちであの告白文を書いたのか興味があった。罪悪感からなのか、それとも陶酔感からなのか。
「わかった」
喧騒でかき消されそうな彼女の小さな肯定の返事を見届けてると、すぐに顔をそらす。口元を手のひらで覆い隠すように頬杖をついて、薄暗い窓の景色をぼんやりと眺めた。
*
あの女を殺して罪悪感に駆られた事は一度もない。ただ、この先どうしたいのかを考えあぐねている。