ソルジャーハンター
セラフィム王国の城下町は昼間の賑わいと違い夜の街はまた少し違った顔を見せる。
静まり返った街にランプが灯り昼間は閉まっていた酒場に兵士、冒険者いろんな人種、職業の輩が集まってくる。
しかし、最近この街の酒場という酒場にある職種の人達が集りだし治安が悪化していた。
「おい!酒を持って来い!」
「まだか、まだか、酒を持って来いって言ってるだろ!!」
鎧を身に付けた兵士達10人程が酒を持って来いと騒ぎたてている。
この酒場には他に兵士以外の客は数人しかいない。
「すいません・・・もう、今夜仕入れた酒は出ているだけになります・・・」
おどおどしながら店の店主が兵士に言う。
「何だと!!!俺らに出せる酒がないだと!」
「なんだ?なんだ?酒がないだと?
」
兵士達が店の店主を煽り騒ぎたてる。
「おい!あそこのテーブルに酒があるじゃないか。
持って来いよ!」
兵士が指を指して指示した場所のテーブルには一人の男が座っていた。
そのテーブルには酒が数本置いてあった。
「ーーいや、しかしあそこの酒はあのお客様の物で・・・」
店主は困り果てていた。
それは兵士達に煽られて脅されている事ではなく、そこの座っている客を煽って酒を奪おうとしている行為事態をである。
何故なら店主は、気付いてしまったのだ。
その男の正体をーー。
「ーーオイ!酒を貰って行くぜ!」
ヘラヘラと笑いながら当たり前のように男のテーブルから酒を持って行こうとした。
「待てよ!何勝手に人の所有物を持っててんだよ!」
男が冷静に言い放った!
「貴様!俺たちが誰だか知ってて楯突くのか?」
「知ってるよ!酒泥棒だろ?
自分達の物がなくなれば平気で人の物を持っていくんだよな」
「貴様!俺たちがソルジャーと知ってての無礼か覚悟しろ!!」
店にいた兵士全員が一斉に立ち上がり剣を出し、
男に向け剣構える。
全員、顔が怒りに満ちていて今にも襲いかかりそうな雰囲気である。
酒場の主人もひひいと、悲鳴をあげ頭を抱えてバーカウンターの下に隠れる。
「貴様の無礼!死んで詫びてもらおうか」
兵士の剣は男の顔の前に剣を突き出し言い放った。
しかしーー男は表情一つ変えずに、
「ソルジャーねえ・・・国民の平和を守るのが仕事のはずのソルジャー様が堂々と国民を脅しやりたい放題。逆らえば問答無用で斬り捨てる・・・」
酒場の中が静まり返る。
酒場の主人はカウンターの下でガタガタと震えている。
それは兵士達ではなく今喋っている男に対しての震えである。酒場の主人にはこれから起こることが予測出来てしまったのだ。
男はゆっくりと黒縁眼鏡を外しながらまた喋りだした。
「お前らソルジャーハンターって知ってるよな?」
兵士達の顔が一瞬で凍りつく。
「まさかお前は?あの・・・」
兵士達、全員の表情が恐怖に変わる。
唾を飲みこみ、兵士は男の名前を口にした。
「ケイト・ローレント・・・」
「ご名答!!」
まさに一瞬だった、
10人程の兵士が一瞬で倒されたのだった。
風が吹きぬけるようなスピードで兵士達の間をすり抜けバッタバッタと倒していった。
兵士達は何が起こったか分からずに倒れていった。
ケイト・ローレントかつての聖騎士は今は帝国兵士狩り、ソルジャーハンターとして帝国兵士の間で恐れられていた。
「正義の名を語る悪魔め!国民の平和を守れないならソルジャーを語るなよ。国民に剣を向けるな。その剣を向ける矛先は国民じゃなく明日の未来だろ!」
チカラのこもった強い口調で言い放った。
それは兵士に問いただすように、それは兵士の心に響くように。
ケイトは黒縁眼鏡をかけ直すとカウンターに飲み代を置き、倒れた兵士達の間を通り抜け店を後にするのだった。
店を出た夜空にはキラキラと輝く星空と月の光が綺麗だった。