帝国兵士ソルジャー
太陽が真上に来た昼下がり。
賑わう城下町に少女の声が響き渡る。
「ーーなんかダサいわね!
これも違う。これもイマイチ」
犯人はエレナだ。
洋服店であれこれ男性物の服をここぞとばかりに手に取り選んでケイトに着させている。
「僕は、どれでも良いよ」
「そうはいかないわよ。
恥ずかしいのはあんたじゃなく一緒に歩く私なの!!」
エレナの切り裂くような一言で、何も言い返せないケイト。
完全に諦めた顔だ。
それと全く同じ顔をしている洋服店の女性。
「ーーどれもこれ全然似合わないわね!
モデルが悪いのかしら」
苦笑いを浮かべるケイト。
ーー悪かったなと、心の中で言い返した。
結局、服を2着買うのに2時間ほどかかったのだった。
「まあ、あの店ならこの程度が妥当ね」
つんつんしながら店を出ながら言うエレナ。
完全に店の人に聞こえているぞと、思いながらエレナの後をついて歩くケイト。
たった2着の為に店の服をあれこれ持ってこさせて、最後に捨て台詞まで言われた店って一体・・・。
「さて、次はーー」
と、言いかけた時今まで賑わっていた街が何やら騒がしくなっていた。
「 勘弁して下さいよ。こっちも商売なんで」
「俺が誰だか分かってるよな?逆らったらどうなるか・・・分かるよな?」
「分かってますよ。ですがこちらも生活がありますのでーー」
次の瞬間、鎧を着た体格のよい兵士らしき人物が店の店主の胸倉を掴み持ち上げた。
「ソルジャーに逆らうのか?
誰のお陰で平和な毎日を過ごしてるんだ?
お前が商売できるのも飯が食えるのも誰のおかげだ?言ってみろ!」
馬鹿でかい、威嚇するような声が街中に響いた。
周りで聞いていた人々の顔が強張った。
「それは勿論・・・ソルジャー様のおか、おかげです・・・はい」
オドオドしながら歯切れの悪い言い方をし困った顔をしている。
「だよな!そうだろ!なら分かるよな。
どうするんだ?!」
周りの人々は見て見ぬフリを決め込んでいる。
誰一人近寄らず目も合わせない。
「ーーお代は・・いりません。」
目をそらし落胆して答えた。
「だよな!ありがとよ!」
そう言い放つと、パッと店主の胸倉から手を離した。
「また頼むな!ガハハハハ」
馬鹿笑いしながら立ち去っていく。
街の人々は慌ててその場を立ち去る。
先程までの活気の良い雰囲気はそこにはなかった。
「ちょっとなんなのアイツ、腹立つわね。
ねえ、ケイト」
むすっとしながら顔を膨らまし振り返りながらケイトを見た。
しかし、ケイトの顔を見たエレナはドキッとして逆に顔を強張らせた。
そこには今まで一度も見たことないケイトの顔がそこにはあったからだった。
「ちょっと・・・ケイト・・?」
困惑して、どうして良いかわからないエレナ。
ハッと我にかえるケイト。
「ごめん、ごめん。行こうか」
いつもの笑顔でエレナに微笑みかけまた歩き出した。
しかし、エレナにはさっきのケイトの顔が心に引っかかっていた。
ーー ケイトの表情の訳は? ーー