昼下がり
「ーーふう、生き返ったあ」
「ケイト、口にご飯粒ついてるわよ。
恥ずかしいから口拭きなさいよ」
古臭い宿の食堂の隅で丸い木のテーブルに食べかけの食器。
同じく丸い木の椅子に冴えない黒縁メガネの男性と綺麗で可愛らしい紫色の髪をした少女が向かいあって食事をしている。
明らかに違和感を感じる組合せである。
彼女のいない男だったら、
「何であんな奴にあんなに可愛らしい彼女が」
ーーとか、思ってしまうような光景である。
それ位、可愛らしい女の子の名前はエレナ。
14歳。珍しい紫色の髪で瞳は青。身長は150センチくらい。
冴えない黒縁メガネの男の名前はケイト。
年齢不明。ボサボサ頭に黒縁メガネ。
頬に絆創膏を貼っている。身長は175センチ。痩せ型というよりやつれてる。
それでいて、職業は自称騎士だと言っている。
その事をエレナは、嘘だと笑っていた。
そんな二人を宿屋の主人は不思議そうに見てながら尋ねてきた。
「あんたらお二人は兄妹か何かかい?」
「全然違うから。こんなの兄だったら恥ずかしいよ」
迷惑といった表情でエレナは答えた。
普通におもいっきり否定されたケイトは苦笑いを浮かべている。
「ただの旅の付き添いですよ。僕は」
バツの悪そうな顔しながら愛想笑いを浮かべている。
宿屋の主人は、ふーんと言った感じの表情で二人を見ていた。
エレナがガタンと勢いよく立ち上がり、
「御飯食べたんでしょ。
ちょっと買い物手伝いなさいよ。
あんた荷物持ちなんだからね」
強制的に、荷物持ちを命じられたケイトは、
ーーハハハ。と苦笑いを浮かべていた。
そんな二人を宿屋の主人は、
ふーっと一息つきながら無いわっといったリアクションをとっていた。
古びた宿からエレナが足早に出てきた。
それを追うようにケイトが出てくる。
「ところで何を買うんだよ」
慌てて追いながら気怠そうにケイトが問いただす。
立ち止まり振り返りながらエレナは答える。
「ーーまずはあんたの服よ!!!」
ケイトは言われてマジマジと自分の服を確かめる様に見てみる。
確かに。と納得するしかない格好だ。
この服もいつから着ているのか。
最後に洗ったのはいつかと聞かれても答えられないくらいだ。
後は黙ってエレナの後をついて歩くケイトだった。