黒縁メガネと少女
賑やかな活気付いた街。
透き通るような綺麗な川。
吟遊詩人の癒しの歌声。
華やかな街並みと立派なお城。
行き交う商人や馬車。
ここはセラフィム王国、この世界で帝国に続いての二番目の規模の大都市。
その華やかな都に相応しくない男がふらふらと歩いている。
年齢は、二十代位だろうか。
ホザボサの頭に黒縁メガネ。
いつ洗ったかわからない汚い服。
いかにも絵に描いたような冴えない不潔な男である。
こんな見た目で絶対お金がないのにもかかわらず声をかけてくる商人達。
「兄ちゃん、どうだい1つ買っていかないかい?
たった五十エールだ!」
威勢よくオッさんが声をかけてきた。
「お兄さん、買っていってよ!」
「兄ちゃんみない格好だな!どっかの雇われかい?」
「見るだけで良いから寄っててよ!」
次々に声をかけられるが聞こえているのかいないのか、ふらふらと下を向いて歩いている。
よく見ると男の目は死んでいる。
その時、少女の大きな声が男を呼んだ。
「ケイトーー何してるのよ。シャキッとしなさいよ。」
紫色の肩までの綺麗な髪の毛。
吸い込まれるような大きな青い瞳。
淡いピンク色の頬。
綺麗で可愛らしい十代位の少女が先ほど男を怒鳴りつけている。
「もう三日も何も食べてないーー動けない・・・限界だよ。
エレナは、食べてるから良いよな。
僕はもう・・ダメだ・・」
バタンとケイトと呼ばれた男は地面に倒れた。
「当たり前でしょ。
私みたいな、か弱い女の子を飢え死にさせる気?
もう少しで宿よ。寝るにはまだ早いわよ。
シャキッとしないよ。」
つんつんしながら罵ると、さっさと歩き出した。
ケイトはそれを倒れながら見ると、やれやれといった表情で起き上がると、またふらふらとエレナと呼んだ少女の後を追いかけた。
燦々と太陽が照らす昼下がりの道をーーーー。