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三人の精霊と俺の契約事情 【白銀の騎士編】  作者: 望月 まーゆ
始まりの書
16/26

帝国帰還

15、 帝国帰還


東の空がまだぼんやり明るくなり始めた早朝。冷んやりとした空気が肌を刺激する。


村全体が静まり返ってるーー


その静けさを遮るように馬車を出した。

馬の鳴き声と共に軋む車輪の音、そして紫色の髪の少女の寝息ーー


ケイト達は、帝国に向かい馬車の出した。

荷台にはナタリアと寝ているエレナ。


村から8時間もあれば着く計算だ。

朝の4時に村を出てたので丁度正午には間に合う。


「ーーケイトごめんね。エレナ様、何度も起こしたのですが・・・」

申し訳なさそうに寝ているエレナの寝顔を見ながらナタリアが言った。


「いつもの事だよ。朝起きないなんて日常茶飯事だよ。」

ケイトは、笑いながら答えた。


「ケイトとエレナ様を見ていると本当の兄妹のように思います。」

寝ているエレナの髪を撫でながらナタリアは少し羨ましそうに微笑みながら言った。


「ナタリアとエレナも姉妹のように見えるよ。これからもエレナをよろしくね。お姉ちゃん。」

ケイトが少し後ろを振り返りながら悪戯っぽく言った。


ナタリアは、頬を赤く染め照れていた。



東の空が明るくなって来たーー



ーーヴィル・クランチェ・・・待ってろよ


お前の思い通りにさせない。


必ずお前の陰謀を阻止してやる。


ケイトは鞭を入れ馬車のスピードを上げた。

何処までも続く草原を足早に駆けて行った。




* * * * * * * * * * * * *


「ーーバンディッツの動きはあった?」


「いえ、依然動きはありません。」


「ーーそう。ケイト・ローレントの現在の動きは?」


「帝国領土周辺のマーベル草原を帝国に向かって来ております。如何致しましょう?」


「ーーケイトが来てる・・・良いね。」

不敵な笑みを浮かべる。


「ケイト・ローレントは、放っておいて良いわ。今のケイトは何も出来ないから。」

演説のような口調で更に続ける。


「今日は素晴らしい日になる。歴史上これほど素敵な日はもう訪れない。失敗は許されない。分かっているわよね。」


「ーー御意。」


「ーー十字軍(クルセイダーズ)の準備を」


「御意。ヴィル様に御加護を・・・」

黒十字の男は、さっと、姿を闇に紛らせて消えた。


ヴィル・クランチェは、笑みを浮かべていた。


それは全てを見透かしたような笑みで。

それは全てシナリオ通りだと思うように。


ーー今日で世界は変わる。

新しい世界の始まりです。ーー



* * * * * * * * * * * * *


「凄い。こんなに大きいお城なんて初めて見たぁ」

エレナは、青い大きな目を真ん丸にしていた。


そう、遂に帝国に着いたのだ。

時間も余裕を持って着くことが出来た。


「ーーケイト、帝国国境ゲートで身分証明書を全員分見せないと中には入れないようですよ。どうするの?」

ナタリアは心配そうにケイトに聞く。


「心配ないよ。偽造工作はバンディッツの得意分野だ。伊達にいろんな国に進入したり情報収集してないよ。」

そういうと用意してあった3枚の身分証明書カードをチラつかせた。


エレナとナタリアは、怪しいという表情を浮かべ、じーっとケイトを見た。


= = = = = = = = = = = = = = = = =

【 身分証明書・入国許可 】


名前: クレイン・クレスト

職業: 商人

出身国: パステル


有効期間: ○△年○月〜○△年○月まで

特記: 特に無し


= = = = = = = = = = = = = = = = =


「ーークレインさんね・・・了解。」


「お連れの方は・・・?」

怠そうに入国手続きをしているお兄さんが言う。


「ーー妹二人です。どうしても一目、勇騎士称号授与式を見たくて。

今日は、人が凄いですね。」

ケイトたちの後ろにも凄い列が出来ていて遊園地のアトラクションを待っているかのような例だったーー


「ーー参ったよ。こんなこと今まで考えられないよ。前代未聞とはこのことだ!

もう、行っていいよ。」

ゲートのお兄さんは適当にしっ、しっと手を振り行かせてくれた。


荷台に乗っていたエレナとナタリアは二人で顔を見合わせてやったあ、といった表情を浮かべて笑みを浮かべていた。


ーー帰ってきたぞ。帝国。

さあ、お前の思わく通り来てやったぞ。

ヴィル・クランチェ!!!!ーー



ーー勇騎士称号授与式まで後、2時間

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