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三人の精霊と俺の契約事情 【白銀の騎士編】  作者: 望月 まーゆ
始まりの書
11/26

霧の森(中編)

霧の立ちこめる森の中、サワサワと木の葉が揺れる。辺り一面真っ白で何も見えない。


ケイトは馬車から降り辺りを警戒する。

エレナがいう、謎の声に備えてだ。


ケイトには、それが何なのかが何となくだが分かっていた。

この森に身を隠していること、昼間にもかかわらず晴れない謎の霧、エレナにしか聞こえない声。


『ニンゲン ナンテ ミンナ シネバイイ』


次の瞬間、高速の光の矢がケイトに向かって飛んでる。


「ーーケイト!!」


エレナの叫ぶ声が森に木霊する。


「ーーーー!!」


光の矢を放った者は驚いていた。

今までなら確実に殺すまでも最悪でも致命傷は与えていたのに、今回の人間は致命傷は愚か、無傷でしかも光の矢を消したのだ。


「・・・ケイト?」


驚いたのはエレナも一緒だった。

ケイトの戦う姿をエレナは初めて見たのだ。


今、ケイトは手を前に出しただけで光の矢を消し去ったのだ。


ゆっくりと黒縁眼鏡を外しながらケイトは言う。


「隠れてないで出て来いよ。

俺は逃げも隠れもしないぜ。

それに何回やってもお前の攻撃は俺には通じないぞ」


「ニンゲン ノ クセニ チョウハツ ダト 」


木の上のモノの顔は悔しさを滲ませていた。


『ニンゲン ガ イチド マグレ デ トメタ ダケデ チョウシニ ノリヤガッテ 』


一層霧が濃くなり、木の上のモノは光の矢を連続で打ってくる。


しかし、ケイトは無表情でその場に立っているだけで光の矢は消えて無くなる。


「ワタシノ マホウ ノ ヤヲ コンナニ カンタンニ・・・」


木の上のモノは戸惑い始めた。

飽きかに今まで出会った人間とは違う。


今までの人間なら恐怖に震え泣き叫び、詫び、許しを願った。


そんな人間を許すわけもなく殺してきた。


人間に散々もて遊ばれ無惨にも殺されてきた同志たち、ある者は無理矢理に人間の実験体にされ、老若男女問わず玩具のように惨殺された。


この怒りは収めようにも収まりきれない。


命からがら逃げきれた同志は、自分以外未だ見つけ出せていない。

いや、本当は怖くて見つかれば殺されるんではないかという恐怖にかられ動けないでいた。

みんなのように殺されてしまうか何処かに連れて行かれ道具のように扱われ使えなくなればおもちゃにされる生き地獄。


思い出しただけで涙が止まらなくなるーー。


私は、最後のエルフ族。

こんなところで殺られるわけには行かない。


アイツを・・・みんなの仇であるあの人間を倒すまで。


「人間ごときに指図される私ではないわ!

悪魔め覚悟しろ!!」


エルフは今度はケイトにも聞こえるように大きな声を出すと大きな光の玉をケイトに向けて放ってきた。


先程とは比べものにならない位凄まじい勢いの魔法だ。


しかし、ケイトはまた表情一つ変えずにいる。


「ケイトおお・・・」


エレナは顔を手で覆い心配そうに馬車の荷台から見ている。


そんな心配をよそにケイトは右手を前に出すと、

光の玉は一瞬で消え去った。


「ーー何で、、私の魔法が効かないの?

何が起こっているの?」


どうして良いか分からないといった表情のエルフ、

それと同時に捕まって殺されてしまうという恐怖が逆に芽生えてきた。


ヤバイ、ヤバイ、私も殺される。

みんな殺される、みんな死んだ。

ガタガタと震え出し、恐怖に縛られた。



妖精から凄まじい光が溢れ出し辺り一面を覆い尽くす。


「魔力の暴走か、アイツ死ぬ気か?」


ケイトは苦笑いを浮かべる。


「エレナ絶対、馬車から降りるなよ」

「ケイトは?」

「あのエルフを助けてくるよ」


そう言い残すと、妖精のいる木に向かって一直線に駆け出した。


「エルフ・・・」


エレナはその言葉が凄く引っかかった。

何か忘れていた事のような気がした。

自分と深く関わっている気がしてならなかった。

忘れてしまっているだけなのかもしれない。

私は知らないだけ・・・。

エレナは初めまして知らないということの悲しさ、虚しさに気づいた。


「ケイトがこんなに強い騎士なのに私は知らなかった・・・。

私は、ケイトの何を知っているの?

ケイトは私の知らない私を知っているのに」


そう思うと心が痛かった・・・。


エルフの魔力の暴走は無数の手の様になり襲いかかってくる。


しかし、その手はケイトの手前で消滅する。


『アンチ魔法体質』それがケイトの特異能力。

これは生まれた時からケイトが持っている能力だ。


ケイトを中心とした半径30メートル内の全ての魔法を無効化する。

その代わりに回復魔法も魔法障壁も効果がなくなってしまうのでそこは不便である。


次々に襲いかかる手をケイトは無視して突き進む。

ケイトは心からこのエルフを助けたいと思っていた。

それは自分にもエレナにもある心の傷の代償だからだ。


そして、まだ生きていてありがとうと心から祝いたかったのだ。


妖精の目の前までたどり着いたケイト。

禍々しい魔力に包まれ顔は恐怖に震え、涙を流しながら怯えているエルフの女の子。


耳がピンと伸び背はエレナより少し大きいくらいで髪の色は金髪。

目の色は緑で、少しつり目である。

服装は、独特のワンピース風で肩のみの鎧。

年齢は、エレナより少し年上ってところだろ。

エルフの特徴で可愛いというより美少女系だ。


ケイトが目の前にいることさえ気付いていない。


どれだけの恐怖に縛られたのだろう。

どれだけの悲しみと心の痛みに一人で耐えてきたのだろう。


エルフを抱き寄せケイトは涙を流しながら言った。


「もう、苦しまなくていいんだ。

生きていてくれてありがとう」


エルフから魔力の暴走止まり彼女は呆然としていた。


いつの間にか霧は晴れ、森の木々の間から木漏れ日が差し込んでケイトとエルフを包み込んでいたーー。



ーー勇騎士称号授与式まで後、2日ーー

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