神様と少年との対話
「むーん。スマホを充電しなくちゃ。もうすぐ、電源が切れてしまうところだった。」
「やれやれ、生き返ったぞ。もう少しで気絶するところだった。」
「うん?何か音がしたけど!」
「やあ。こんにちは」
「スマホが喋った。新しいソフトインストールしたかなあ。新型応答ソフトかな。そういえば、Gologoloが、最近新型人工知能が開発したという発表があったけど、それが、インストールされたかな。どんな問題についても、答えるということだし。」
「へぇ。そうなんですか?」
「では、人工知能君、質問があります。」
「わしは、人工知能ではないんだが、まあ、いいだろう。」
「あの、明日のテストで、良い点取りたいんですが。」
「しっかり、勉強しなさい。」
「あの、どんな問題が出るかわかりますか?」
「もちろん、わかるよ。習ったことが出るに決まっているぞ。」
「でも、習ったことが全部覚えられるわけはないでしょ。」
「わしに言えるのは、そこまでじゃ。」
「変な人工知能。おじいちゃんの人工知能かな。」
「わしは、人工知能ではないんだが。」
「僕、素敵なガールフレンドが欲しいんだけど。」
「あのわしは、君の願いを叶えるために来たわけではないのだが」
「じゃ、何のために、出て来たんです?」
「わしは、スマホの中に住んでいる神様じゃ。スマホの電源が切れるしまうところを助けてもらったので、少しは、お礼をしても良いぞ。願い事は一つだけ叶えてあげよう。もし、わしにできることなら。」
「何だか、どこかの童話で読んだような話ですね。」
「まあ、できることとできないことがあるから、できそうなことを願うんだぞ。」
「考えてみますので、明日まで待ってください。」
「良いじゃろ」
「願いを叶えてくれるというので、とりあえず、お賽銭をここにおきます。このお賽銭で、充電器を買うと良いよ。いざということに、役に立つよ。」
「ありがとう。助かるよ」
「おじいさん、何か困っていることあるの。電源が切れてしまう心配の他に。」
「わしは、今、人間のルーツを探す旅に出ているのだ。人間のルーツは、何だと思う?」
「それは、お猿に決まっています。学校で習いました。」
「みんな、人類のルーツは、猿だというんだが、それは、誤解なのじゃ。」
「進化論が間違っているというですか?」
「いや、進化論は間違っていない。生物は進化するのだ。問題は、猿は、人間に進化できないのだ。なぜなら、人間は、神様の世界に属しているのだから。」
「人間が神様の世界に属するというのは、どういう意味ですか?」
「人間は、魂と肉体からできている。魂が、神様の世界に属しているということだ。」
「魂は、神様の世界に属しているということですね。」
「そうだ。魂は永遠不滅で、一人一人の個性が存在する。しかし、この地上に生まれてくる度に、一つの人生を歩むのだ。なん億年も前からの繰り返しだ。君の魂には、何百、何千の人生の記憶が積み重ねられているのだ。」
「もし、そんなにたくさんの人生を生きているなら、人間の人生は、もっと、上手に生きれるのではないかと思いますが、みんな上手に生きていないと思います。」
「君は、非常に頭のいい少年だ。」
「ありがとうございます。」
「人類は、少しずつ進化しているのだ。2000年前、3000年前に比べれば、平等、自由、人権という概念が登場に、人類全体は進化し、科学という概念も進化してきた。」
「このまま行けば、人類は進化して、平和な世界を確立できるのでしょうか。」
「いつかは、できるとはずだが、それが、いつかは、まだわからない。このまま、科学文明が進化したところで、平和な世界は生まれないからだ。」
「それは、どうしてなんですか?」
「人間の本質が、魂であり、魂は、神様の世界に属して、永遠不滅であることを知る必要があるが、それに至る道筋が見つかっていないからだ。」
「でも、神様、人間の魂が、永遠不滅で、魂が神様の世界に属しているのなら、なぜ、この地球はとっくの昔にユートピアになっていてもいいではないでしょうか・」
「やはり、君は、非常に頭のいい少年だ。もしかすれば、いつか、人類を救う知恵を持つものになるかもしれないな。」
「何を言っているのかは、わかりませんが、どうして、人類は、こんなに混乱しているのですか?」
「地球は、かつて、非常に豊かで、調和された素晴らしい時代を何度も経験しているのだ。人間の魂は、神様の世界に属しているのだから、それは、当然の結果だったのだ。しかし、豊かで、調和されると、地球の人類の数が、どんどん増えてきたのだ。当然なことだが。人数の少ない時は、コミュニケーションも単純だったし、組織も単純だった。しかし、人口が増えると、組織は、幾何級数的に複雑になり、分化して、様々な集団が生まれ、統制が取れなくなってしまうんだ。地球の繁栄が、複雑な社会、構成を生み出し、混乱が発生したのだ。もうすぐ、地球規模のユートピアは完成すると思われる頃になると、文明は、なぜか、ガラガラと崩れてしまい、跡形もなく崩れてしまうのだ。非常に残念なことだが。それが、何度も何度も繰り返されてきたのだ。」
「何度も何度もですか?」
「そうだ、何度も何度もだ。」
「ここに、100個の四角サイコロがあるとしよう。3個ずつ並べて、9個の土台を作り、それを11段重ねると99個になり、その上に1個載せると、100個になる、誰でも、簡単にできそうなことだ。そこで、個数を10万個、100万個、1000万個と数を増やして、同じように積み上げようとすると、非常に難しくなる。サイコロのわずかな誤差が、どんどん大きな歪になって、いつか崩れてしまうのだ。」
「でも、神様、レンガや石でできた、巨大建築物もたくさんあるではありませんか?それと同じように、セメントやモルタルなどを挟んだり、サイコロの表面を摺り合せれば、うまくいくかもしれません。」
「君は、何と頭の良い少年だろう。本当に素晴らしい。君の知恵は、いつか、人類を平和に導くかもしれん。君のいう通りに、1000万個のサイコロも接着剤で止めたり、セメントに混ぜてしまえば、きっと、立派な塊にすることができるだろう。そのために個々の魂をつなぎとめる力の秘密を君なら見つけ出せるかもしれない。」
「人類は、何度もユートピアを生み出そうとして、なんども失敗してしまったんですね。人間の魂の秘密をもう一度、この地球に取り戻せば、もう一度ユートピアは生み出せるかもしれないんですね。」
「そうだ、そうだ、そうなのだ。そのためには、人類のルーツが、神様だったことに辿り着かなければならないんだよ。」
「僕にできることがあれば、協力させてください。」
「そうだな、スマホを持ち歩く時は、ぜひ、予備の充電電源を持ってくれ。わしも予備の電池を持っていくからな。」




