神様と大(おお)神様との対話
「わしは大神様じゃ」
「これは、これは、大神様。スマホの世界にようこそ。なにか、ご用ですか」
「なに、そこまで、用事があったので、ちょっと、スマホの世界に、おぬしが住んでいるのを思い出して、寄ったまでじゃ」
「そうですか」
「おぬし、仕事の調子は、どうじゃ」
「苦戦しています。なかなか、人間のルーツを探しあてられないんでございます。」
「そうか、それは、たいへんだな。ところで、人間のルーツとは、なにを探しているのだ」
「人間のルーツは、神様だったはずなのですが、その痕跡が、この地上から、消え失せているのでございます」
「アハハ、それは、いくら探してもみつからないぞ。人間のルーツは、人間じゃ。神様であろうはずもなく、がんばっていっても類人猿じゃ。もっと、正直に言えば、猿じゃ」
「え!、大神様ともあろう方が、いったい何を言いだすんですか?人間のルーツは、神様です。」
「おぬしは、間違っているぞ。わしは、大神様じゃ」
「でも、大神様、人間のルーツは、神様です。」
「やはり、おぬしは、誤解をしている。わしが通りかかったのは、幸いだったな。人間は所詮、人間じゃ。どんなに輪廻転生しようとも、進化などせん。どんどん、劣化するばかりだ。わしら神様は神様で、人間にはなれぬ。宇宙には厳然たる秩序、格というものが存在するのだ。人間の汚れた血を神様の仲間にするわけにはいかん。それに、この世界がすべてで、あの世というものは、存在せんのだ。よく、そのことを人間に言い聞かせなければならない。だから、おぬしが、人間のルーツを探しても見つからないのは、当然じゃ。人間も宇宙を隈なく観察し、細胞の中まで隈なく観察し、神の世界がどこにもないことを、十分納得済み。いまさら、おぬしがなにをいおうと聞く耳をもっておらんぞ。あきらめよ」
「あなたは、ほんとうに大神様ですか?」
「わしは、大神様じゃ。疑うなかれ。この威厳に満ちた顔、声をきけば、解るだろうに」
「そうですか、なんだか、疑問に思えてきました」
「そんなはずじゃない。」
「あれあれ。しっぽが見えていますよ。」
「しっぽ?、しっぽ?なんじゃ。なんじゃ。わしは、しっぽはちゃんと隠したはずじゃ。おぬしにみえるはずがない」
「やっぱり、あなたは、動物霊の九尾のキツネですね」
「知らん、知らん。しっぽは、絶対見えないように隠したので、おぬしに見えるはずがない。わしは、大神様の稲荷大明神であるぞ」
「私をだまそうとしてもだめですよ。もう正体はばれてしまいました。だれかに言われてきたんですか?」
「わし、一人で考えたことだ」
「いや、どうも、あなたの後ろに、大きな目玉の黒い龍神様が控えているようですね。あなたは、そのお使いで、私に合い来たわけですね。」
「いや違う。違うが、任務に失敗からには、龍神さまの元へはかえれないぞ。どうしたら、いいだろう」
「わかりましたよ。あなたたちが、人類から神様の痕跡やあの世の実態を隠したがっているんですね。どうしてなんです?」
「人間が、人類のルーツを知り、神様と仲良くなって、この世界がユートピアになってしまったら、地獄が消滅してしまうと、われわれが住む世界が無くなってしまうじゃないか。それは、食い止めなければならん」
「人間が、人類のルーツを見つけたぐらいで、簡単に地獄が消滅するとは思えませんが、長い時間をかけると消滅するかもしれませんね。でも、いまは、人類のルーツがみつかっていないのですから、地獄は、拡大傾向にあるかもしれませんね。そのいみで、あなたたちみたいな偽大神様は、すこし、活躍なんですね。」
「本来のわたしは、キツネなんですけどね、人間ほどではないのですが、すこし、神通力があるんです。あの世の世界で、人間と張り合うのは、とてもとてもできないのですが、この地球に生きる人間は、すべての神通力を失って生きるので、わしが大神様の稲荷大明神だというと、信じてくれる人間もおおいのだ。はじめ、おぬしも騙せそうだったのだがな。しっぽを見られてしまったようだ」
「実は、わたしは、しっぽは見ていないんですが、会話が矛盾してきたので、すこし、カマをかけたら、あたったというところですかね。でも、帰るところがないということですから、地獄の黒龍に仕えることはできないのでしょうから、私の知り合いの神様 ほんもの稲荷大明神を呼ぶので、その指導を仰いで、良き霊の修行をしなさい。」
「そうですね。本当は、わたしも、このスマホに出現するのは、嫌な予感がしたんですが、黒龍様が、大丈夫だ、行けというので、出ることになってしまったんです。あの、スマホの神様は、あまり位もたかくないし、とぼけたやつだから、お前なら簡単に騙されるって、言ったんです。わたしが言ったんじゃありませんよ。黒龍さまが言ったんですよ。それで、こんなことになってしまったんです。」
「まあ、いいじゃありませんか、わたしは、どうせ、おとぼけ神様です。最近、小学生の女の子に、すっかり、やりこめられて、人類のルーツ探しを私自身で、しなくちゃならなくなってしまったんじゃ。それが、どんなに難しいのかも、わからないまま。偽大神様なにか、良い手がかりはありませんか?」
「そうですね。過去世の記憶をもつ子供もいるでしょう。超古代文明の遺跡、海底もありそうだし。聖書や仏教の聖典、ダンテの神曲、スエーデンボルグの本などもいろいろあるじゃないか」
「でも、それらも研究し尽くされても、天国や地獄はなかなか、証明できなのじゃ」
「大奇跡でも起こしましょうか。わたしだって、皿やコップぐらいは、自由に飛ばせますよ」
「でも、マジックだ、トリックを言われてしまうだけなんです。モーゼの時のように。」
「本当は、人間が、本来もっている素晴らしい力に気づくのは、一番近道なんですけどね。」
「それに、気が付いてしまうと地獄がなくなってしまって、黒龍さまたちが生きる場所が小さくなってしまうんですけどね。わたしはもう、黒龍様のところへ帰れないので、地獄が消滅しても大丈夫ですけど。本物の稲荷大明神が来たようなので、わたしは、これで失礼します」
「では、元気でな」
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「えーと。ポケモンは捕まえすぎたので、博士に送って、アメに替えないといけなぁ。そういえば、あの偽大神様は元気になっているかなあ」




