神様が人類の先祖である神様を探しに行く
「あのー、そこを歩いている人」
「なんだね」
「探し物をしているんだが、いっしょに探してもらえんかね」
「何を探しているんですか」
「人類の先祖」
「それは、日本にはありません。たしか、200万年前の化石がアフリカで見つかったという記事をどこかで読んだ気がするので、アフリカにいくと見つかるかもしれません」
「それは、たいへんですね」
「じゃ。上野にある国立科学博物館に行きなさい。たしか、地球の歴史、人類の歴史が展示してありますよ」
「そうか。わしは、今、スマホの中に住んでいるんじゃ。すまんが、そこにつれていってくれないか」
「いいですけど。私も国立科学博物館は好きで、何度も行きましたから」
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「着きましたよ。どこからみます」
「地球の誕生からだ」
「すると、地球館の地下2階かな。40億年前に生命が誕生して、絶滅や進化をした歴史が解りますね。」
「40億年前に生命が誕生した。たしかにそうだの。何もない地球に来ることはできないので、宇宙の根源的な神様が、生命の住める地球の環境を整備はじめたのだ。人類が住めるようにな」
「そうですか。でも、国立科学博物館には、神様は登場しませんよ。隣の国立博物館には、いろんな仏像などがあるので、そっちへ、ヒマな時にいってみたらいいと思いますよ。次は、恐竜のフロアで地下1階に行きます。どうです、すごい大きさですね。この間、誰かの対話で、このでかい恐竜をモンスターボールで捕まえていたとか言っていましたよね。嘘ですよね」
「嘘ではない。昔、モンスターボールという、恐竜を捕まえる道具があった。」
「本当ですか、しんじられませんね」
「あったような、なかったような」
「ほうら、だんだん嘘がばれてきましたね」
「嘘じゃないぞ。ないかもしれんじゃないか」
「だいたい、人類は、恐竜の時代にいないんです。」
「いや、確かにいたぞ。」
「いません。いたら、どうして、恐竜の骨といっしょに、人間の骨が見つからないんですか?恐竜の骨がこんなにたくさん見つかっているんですから、人間の骨の1つや2つ見つかったっていいじゃありませんか?」
「いたはずなんじゃ。どうして、人間の骨が見つからないんじゃろうな」
「それに、神様は、何億年も前から、超古代文明があったっているそうじゃないですか。恐竜の時代と同年代なわけですよね。どうして、その超古代文明の痕跡が、恐竜と一緒に見つからないんですか?」
「おかしい、どうして、超古代文明は見つからないのか。」
----「神様よ、それは、大いなる大神様が、封印されて、まだ、封印を解除する時期になっていないからじゃ。見つからないように結界を貼っているんじゃ」
---- 「あなた様は上級の神様ですね」
----「そうじゃ」
「超古代文明が見つからない理由がわかりました。大いなる大神様が、封印して、封印の解除がされていないからだそうです」
「それって、どんな言い訳にも使えるじゃありませんか。あれも見つからない、それも、見つからない。それは、みんな、その大いなる大神様が隠しているといえば良いんだから簡単ですよね。」
「大いなる大神様がなさることは絶対なので、わしらが、その結界を破ることはできん」
「わかりました、わかりました。お家の事情があるというわけですね。その事情は教えてくれないけど、あるというわけですね」
「すまん、そのようだ」
「神様 まだ、人間の先祖を探しにいきますか」
「せっかく、入場料を払っているいるんだから、全部見て回ろう。」
「やれやれ。歩くのは僕なんですよ。それにしても、スマホの電池、ちゃんと持つかなあ。現在、66%まで下がっているぞ。」
「では、人間の先祖をさがすぞ」
「えーと、人類は、700万年前に生まれて進化したと書いてありますよ。ちゃんと古代人の頭蓋骨がありますよ。よく読めないけど、アルディピテクス・ラミダスというには、一番古い化石のようですよ。」
「すっかり、化石に騙されておる。人間はUFOに乗って、この地球にたどりついたのじゃ。」
「あの、最初にたどり着いたのがアルディピテクス・ラミダスですか?」
「そんな訳があるわけがなかろう。わしら神様だったんだぞ。またたくまに、高度な平和な文明がうまれたのじゃ。われわれは、非常に調和された星からやってきたのだから、当然、高度の文明、平和の世界を生み出すことは簡単だったのじゃ。しかし、その平和の世界を求めて、たくさんの人たちがやってくると、だんだん、混乱を始めたのじゃ。最初は、少数精鋭、トップクラスの人類の集団だったが、この星にやってくる人間が、1万、10万、100万となってくると、混乱しはじめたのじゃ。何度も何度も、文明の立て直しをおこなって、うまく行きそうになると、崩れるのじゃ。」
「またまた、嘘を言っていますね。この国立科学博物館の中には、超古代文明もUFOもありません。神様はきっと、夢をみているんです。ありもしない過去を夢見ているんです」
「トランプのカードでタワーを作ったり、サイコロを積み上げて、タワーをつくることができる。最初の数段は、問題ないが、だんだん上に積み上げて行こうとするとある程度まで、積み上げると、どこかで崩れ始めてしまうんじゃ。はじめは調子がいいのだが、だんだん文明も高度になると、崩れて、最初の一歩に戻ってしまうんじゃ。ここの展示は、その最後の高度な文明が崩れた後の最初の一歩が展示されておる。」
「神様は屁理屈がお上手です。そうやって、多くの人を騙してきたんですね。」
「わしは、だれも騙しておらん。おらんはずじゃ。対話したみんなを勇気づけ、励ましてきたはずじゃ。」
「嘘で固めてね」
「そんなはずはない。みんな真実なのじゃ」
「そう、神様がひとりで真実をおもっているだけでしょ。」
「いや。真実じゃ」
「でも、神様、現代の日本は、どこの国も負けない教育と科学の知識があります。この国立科学博物館は、人類最高の知識と知見に基づいて構成されています。世界最高峰です。これ以上、地球の歴史、生命の歴史、人類の歴史を解説している博物館はありません。しかも、国立です。日本の国が、その権威をかけて、展示しているんですよ。どこに、超古代文明がありますか、どこに、UFOがありますか、どこに神様はいますか。どこにも、そんなものは無いんです。ダーウィンは、神様なんかよりズーッと研究して、考えて、考えて、今の結論に至ったのです。悔しかったら、反論してください。」
「うーん。どこかに証拠の化石や超古代文明の痕跡やUFOを見つけなくてはならなくなったぞ。わし一人でみつけることができるだろうか」




