神様と経済学者との対話
「神様、経済って不思議ですよね」
「おまえは、経済学者じゃろ。なにを寝ぼけたことをいっておる」
「考えれば、考えるほど、わけがわからなくなってしまうんです」
「世界の経済は、複雑だからなのう。わけがわからなくなってもしかたがないかもしれんな」
「複雑ですよね」
「この複雑は、欲、利益、損、快、不快、国家の存亡、国家の権力、時間的問題、国家の多様な通貨など、考えれば、考えるほど、多くの要素が関わっている」
「経済なんて、人間や国家の欲望のかたまりのようなものですね。」
「そうばかりとはいえないが、その要素もある。」
「ここに、1枚の金貨があるとする。10人の人間が、この金貨を見ている。そして、一人だけ、この金貨を手に入れることができるとしたら、どうなるだろうね」
「日本人なら、くじ引きか、ジャンケンあたりで、きめるかもしれませんね」
「でも、この1枚で、生死や会社の破産などを免れたり、人生を変換する人もでてくるとしたら、くじ引きやジャンケンなどというのんびりしたことでは、きまらないかもしれん。戦いがはじまるかもしれん。会社や家族のため、国家のためとなったら、なんでもしなければならない。」
「経済はやっかいですね」
「金とは、力である。紙幣に印刷された数字には、呪が掛けられておる。それが、力の源泉じゃ」
「なんですか。突然、比較的な言葉が登場しましたね。それって、陰陽師の時の言葉でしょう。」
「そうじゃ。人間の作り出したものすべてに、呪が、かけられている。」
「まさか、そんなことはありませんよ」
「そうかな?たとえばだが、道路交通標識は、たんなる図だ。しかし、そこには、様々な呪がかけられているので、人間を拘束する力さえ持つようになる。ここは、駐車禁止、速度制限、一方通行など、人間の意思を超えた力をもって、存在する。まさに呪が働いている。現在も、家を建てるときの地鎮祭や、神社のおまつりのときのしめ縄など、呪をつかっているぞ。」
「あれって、呪なんですか」
「物質や文字、図には、それ自体、意味をもたないが、人間が、それに意味や目的、役割を与えるとき、人間が意識する、しないに関わらず、呪を与えて、意味をもとせすのじゃ。それは、陰陽師と同じことなのじゃ。」
「人間のすべての活動が、呪であるといっても過言ではない。」
「まさか、地獄を形成している力も呪であるというんじゃないでしょうね」
「死んだ人間は、肉体を離れ、魂だけになる。魂の存在できる場所は、われわれの神様の世界じゃ。しかし、魂には、重さやエネルギーが存在する。水の中で、石ころや鉄は、沈むが、木は浮かぶことができる。ヘリウムは、空気より軽いので、空の上にいくことができる。魂の集まりが、天国と地獄を自然につくっているにすぎない。しかし、地上に生きた魂は、地上で生きている時に、たくさんの呪を飲み込んで生きているので、呪の飲み込み具合によって、魂を重くしている場合がほとんどじゃ。呪は、地上のいきるためのシステムなので、天国、神様の世界では、必要ないのだが、それが、手放せないのじゃ。」
「呪は、地上の秩序を生み出すシステムで、天国、神様の世界では必要ないのですか」
「必要ないというのは、すこし、ちがうかもしれん。呪を与えているのは、魂の力、意思なのだ。その意味では、呪は、魂と同義でもある。魂が悟れば、大いなる神にもなる。その悟りとは、自己認識でもあるので、自分にたいする理解 呪でもある。神様の世界では、自分がすべてであるから、自分に対する理解 呪が、自分のすべてで、そのすべての場所に自然にいるのじゃ。」
「じゃ、あなたも、あなた自身が理解している自分の世界にいるというわけですか?」
「そうじゃ。天国にいるものも、地獄にいるものも、自己認識している世界に自然にいるのじゃ。その自己認識が変化すれば、そこに居られなくなり、自分の適した世界にいくのだ。ヘリウムが、水の底にとどまることができず、空高く舞い上がって行く。水の底の石ころや鉄が、本当の自分が、ヘリウムだと気がつけるかどうかに、かかっている。まわりが同質の世界なので、ほとんど、気がつくことができない。」
「地国でさとるのは、ほとんど不可能というわけですか」
「たしかに難しい。しかし、唯一の希望は、この地球というシステムじゃ。人間の住む地球は、天国と地獄と密接にしている、宇宙のなかのパワースポット的存在なのじゃ。だから、わしもお前と対話をしとる。」
「地球はパワースポットだったんですね」
「そうだ。わしがお前と対話するように、地獄の世界からも対話や接触ができるのじゃ。もし、地球がユートビアなれば、地上のあたたかなエネルギーが、地獄をいやして、解消してしまうんじゃ。まだまだ、先の話だがなあ」
「そうですか、地獄はいつか、なくなるんですね。地上がユートピアになったときに。そうしたら、どうなるんです」
「お前とは、その話をしてなかったようだが、未開の星に冒険の旅にでるのじゃ。この地球に何億年も前にやってきたように」
「一つの星がユートビアになるのに、何億年もかかるんですか?」
「この地球も、はじめは、かなり順調にスタートした。超古代文明も繁栄した。しかしだ。繁栄すると堕落がはじまるのじゃ。お前たちはわすれているが、人間の魂の力は、神に匹敵する力だから。つい、それを過信すると、とんでもない方向に暴走してしまう。」
「まさか、それは、幻魔になってしまうとか」
「幻魔? 変な言葉を知っているなあ。」
「子供とき、009や幻魔対戦の漫画をむさぼり読みましたら。」
「幻魔が、そこに登場したのか?」
「ええ」
「まあ。人間の魂のパワーは、神にも匹敵するので、幻魔にもなれるだろう」
「そうですか」
「まあ、一度乱れたシステムはなかなか修復でないのだ。何度も超古代文明はできたのだが、完成というわけには、いかず、失敗して、現在に至っている。」
「さっきから、人間は神に匹敵する力があるといいましたけど、そうとも、思えませんが」
「超古代文明の反省から、人間の力の一部を封印しているのじゃ。今は、神様のこと、魂のことがさっぱりわからないことになっているが、現代人には、封印されている。その封印が解けるのは、大いなる神の意思による。だから、現在は、物質文明という、地球の歴史数億の中では、非常に異質な文明ができつつある。」
「封印はいつ解かれるのですか?」
「わしは、そのようなことを知る立場にはないので、わからん」
「そうですか。わからないのですね」
「そうだ。ところで、経済学者よ、お前の自己認識がお前のすべてじゃ。自分とはなにかと、考えてみよ。そうすれば、何十、何百、何億の多重の呪を通り抜けた、本当の世界がみえてくる。経済や貨幣は単なる呪にすぎないのだ」
「それって、ほんとうですね?」
「だから、人間とはなにか、自分とはなにかと、もう一度、考えてみよ」




