第7話 獅童先生と僕
結局、いつものように一人で飼育エリアにやって来た僕。
「遅かったな。佐鳴」
「獅童先生。いらしていたんですね」
先客……獅童顧問教師は、清掃を終えたばかりの様子でそこにいた。
「ふむ、老教師か。キャラが被るのう。」
獅童先生は来年定年を迎えるお爺さん先生だ。
顧問の後任が見つからなかった事も、飼育エリア撤去の理由の一つだったりする。
不況だけを理由に委員をとりつぶすほど、この学校は冷淡ではない。
「佐鳴の動物に好かれる才能は凄いな。長年世話をしている私より、来て一年少々の佐鳴の方になついている」
「小さい頃から動物をなだめるのは得意でしたね。家じゃ何も飼えないので、こいつらの世話は結構楽しいです」
日中家が空っぽになるから、世話が出来る人がいないのだ。
「そうか。だがそろそろ期末試験だろ。明日からは私が見るから家に帰って勉強するように」
「はい。よろしくお願いいたします」
先生と二人、餌をやって今日は終わり。
「どうだ?引き取り手は見つかりそうか?」
「何人か希望者が来ています。夏休み前に一度、動物達と会わせたいですね」
「よし。その日程合わせはこちらでしよう。試験終了日から終業式までの間で時間を取ろう」
委員長兼部長の僕と顧問の先生。
僕ら二人で飼育委員と園芸部の方向を決めている。
「中々の手応えだったようだの」
(太郎さんのお陰だよ)
あれから帰宅後、太郎さんに毎日勉強を見てもらった。
その成果はあったと思う。
とにかく、期末試験も無事に終え、久しぶりに生物係の仕事をしに飼育エリアに向かう。
「お。佐鳴、お前も向かう途中か」
「先生。奇遇ですね」
道中、獅童先生と合流する。
「済まんが、一学期中にまとまった時間をとるのは難しそうだ」
「そうですか。僕も来年は受験生。今年度中にあいつらの行き先を決めたいですね」
「そうだな。私の方でも引き取り手を探しておこう」
「ありがとうございます。ですが、ただ引き渡すだけでなく、飼育方法についてもしっかりレクチャーしておきたいですね」
道すがら、状況を報告しあう。
中々芳しくない。
「儂がなんとかしようかの?」
(それはまだ早いよ。まだ時間も方法もあるんだ)
きっと、なんとかなる。
「佐鳴は真面目だな。そこまで真剣に向き合った生徒は始めてかもしれん」
「そうですか?」
「そうだ。動物達も分かるのだろうな。本気か否かが」
手離しに褒められて、恥ずかしくなる。
僕としては、そんなに大層な事をしているつもりはないんだ。
「真羅や真嶋、有部が信頼し、リヴァンネが興味を持つ理由がよく分かるな。佐鳴には力を貸したくなる何かがある」
「よく分かっておるの、ご老人。儂の契約者は一味違うのじゃ」
先生も太郎さんも、その辺にして欲しい。
僕は小走りで、動物達の所に向かう。
一学期も後僅か。
先日、前作「異世界を九十九と一人旅」が完結しました。
応援して下さった方々、大変ありがとうございました。
まだ読んだ事の無い方、よろしければ読んでみて下さい。