第6話 蔵人と僕
飼育委員及び飼育エリアの廃止と、それに伴う里親募集は女王リヴァンネ先輩の主導の下、校内新聞にて大々的に告知された。
「大変そうだな、太陽。俺も手を貸そうか?」
「蔵人に頼めば一発だろうけど、これは僕の仕事だよ。ピンチのピンチにはお願いするから、その時はよろしく」
僕の高校の体育はクラス混合、男女別。
だから、普段活動が合わない親友ともこうして話が出来る。
「次。一組真羅、二組佐鳴」
「呼ばれた。行こうぜ」
「うん。今日こそ勝つ」
「負けねえよ」
真羅蔵人。
小学校からの親友で、付き合いは優菜に次いで長い。
成績優秀でスポーツ万能。
「真羅!今日こそ負けちまえ!」
「うっせ!そういうのは、自分の手でやりやがれ」
女子にモテモテで、男子の嫉妬の念を集めるが嫌われてはいない。
「位置について。用意、」
今日の体育は体力測定。
この短距離走を含め、蔵人の一人勝ちだ。
「太陽がそういうなら俺は関与しない。けど、何かあったら言えよ!俺も千愛も、お前の味方だ」
実家は大企業真羅グループの分家。
将来はその大きな柱の一つになる。
そして、撫子こと真嶋千愛は蔵人の許嫁だ。
(太郎さんどうかした?ずっと黙って)
「ん?いやなに。あの青年に憑いた眷族達と話しておったのよ」
そう言って視線を向けるのは、蔵人の方。
目の前がごちゃごちゃして私生活に支障が出るからと、普段弱めている霊視を強くする。
(え?あれ全部なにがしかの神の眷族?)
蔵人の周りには沢山の存在がいた。
嫌な感じがするものが一つも無い事がまた凄い。
「学問の遣いに武道の遣い。おお、経済に至っては使徒が憑いておるわ。あそこまで神に愛された者は滅多に見んの」
赤い糸も太く鮮やかに伸びている。
それを見るだけで伸びる先が見てとれる。
蔵人……、我が友ながら恐ろしい奴。
「でよ。婆様が千愛に……」
「愛されてるね。嫁入り後も安泰だ」
放課後。
珍しく蔵人が生物係を手伝ってくれると言うので、一緒に移動している。
「図書室での自主勉は良いの?」
「文芸部に追い出された。文化祭に出す冊子作りに入るから部外者立ち入り禁止なんだと」
蔵人は努力する天才だ。
放課後は図書室での勉強を欠かさない。
「あー、真羅。ちょっと良いか?」
「先生。またですか?」
声をかけてきたのは三年を担当する先生で、僕は面識無いが蔵人とは知り合いらしい。
「頼む!また補習に出てくれ」
「補習!?」
学年一位当たり前の蔵人に最も遠い単語に、思わず驚いてしまう。
「太陽。それ、多分違う。先生は俺に補習の講師を頼みにきたんだ」
「あ!講師の方なんだ」
いやー、びっくりした。
うん。蔵人ならありえるね。
「いや!ないよ!」
一人、自分にツッコミを入れる僕。
「太陽、気持ちは分かるがしっかりしろ」
「大丈夫か?佐鳴」
先生と蔵人に心配されてしまった。
「だって、この場合生徒って三年ですよね?先輩ですよね?」
「恥ずかしい話、先生より好評でな」
「既にやってる!」
そう言えば、またって言っていた。
「悪い、太陽。あっち行くわ。受験生待たせる訳にはいかない」
「しょうがないっか」
蔵人は先生について行ってしまった。
「上級生に教えられるほど優秀なんじゃな」
僕もそれほどとは知らなかった。
親友キャラは多少チートの方が動かしやすい気がします。