第5話 校内三大美少女と生物係
放課後。
今日の学業を終え、皆それぞれの部活に散らばっていく。
「じゃあね。生物係」
「生物係先輩、さようなら」
帰宅部の生徒に挨拶を返しながら、僕も部活に向かう。
服装はジャージ、行き先は飼育エリア。
「生物係、とはなんじゃ?」
(僕の部活動、みたいなものだよ。)
僕が通う学校には小さな飼育エリアがある。
そこにはオウムや亀、ウサギなどが飼われている。
代々の生徒達が拾ってきた動物達だ。
「やっほ、みんな。今日も元気だな」
動物達に挨拶して、まずは小屋内の清掃。
その後、餌をあげて業務は終了。
(後は愛でたり観察したり、散歩させたりね)
「なるほどの。して、お主一人か?こういう物には同士がいるものだが?」
(書類上はいるにはいるんだけどね)
一人飼育委員で一人園芸部。
そんな僕はいつしか生物係と呼ばれるようになった。
(今は僕と顧問の先生の二人で、花壇と飼育エリアを管理してるんだ)
「寂しいのう。優菜ちゃんに手伝って貰ってはいかんのか?」
(優菜も義理で登録してくれたけど、陸上部の方が忙しいみたい。あいつ、走り高跳びの期待の新人だから)
僕の通うこの高校は、運動系と文化系にそれぞれ一つずつ部活に入れる。
勿論一つだけでもいいし、全く入らない帰宅部もいる。
二つ入っても、どちらを重要視するかは個人の意志と周囲の期待による。
(それにまったく人が来ない訳ではないんだ。そろそろ……)
「こんにちは、太陽。今日も持って来たわ」
「いつもありがとう。助かるよ」
僕の予想通り、一人の女生徒がやって来る。
その手には、野菜クズの入ったビニール袋。
「誰じゃ?婆さんの若い頃にそっくりなこのお嬢さんは?」
彼女の名前は、真嶋千愛。
僕と同じ二年生。
僕の友人の一人で、料理部と薙刀部に所属。
動物達の餌にと、料理部から野菜クズを持って来てくれる。
家が老舗旅館をしているお嬢様で、撫子と呼ばれ学校中で人気。
「太陽。料理部に来る気、本当に無いの?部長がうるさいのだけど」
「無理だよ、何度言われてもね。こいつらの世話を辞めたくないし、今問題もあるんだ」
「問題?」
「問題とな?」
千愛と太郎さんの言葉が被る。
僕が説明しようとしたその時、
「女王陛下のおなーりー」
何人もの男女を引き連れて、その人はやって来た。
「久しぶり、太陽」
「お久しぶりです、リヴァンネ先輩。勧誘なら受けませんよ」
「わたくしの大いなる目的の為あなたの力は欲しいけど、今回は新聞部部長として来ているの」
三年生のリディア・リヴァンネ先輩。
去年転入してから瞬く間に人気を集め、彼女のファンからは女王と呼ばれ敬われている。
と言うのも、彼女は重度の世話焼きで、特に独り身の人間の相談に乗り、相手を見つける事に使命感を感じている。
多数の生徒が集まる彼女のファンクラブは、一部の崇拝者を除き、恋人を求める男女が所属している。
「先日の委員会で決定した経営不振による飼育委員廃止の件について、現委員長として率直なコメントを頂戴」
「そうですね。こいつらの里親を探すのに、手の空いている人の協力が欲しいな、と」
「それだけ?」
「それだけですよ」
先輩は何か劇的な物を期待していたのだろう。
少々落胆して様子。
「はいはーい。わたし協力する!てか、サンちゃん。そういうのはわたしに相談してよ!」
優菜が話に入ってくる。
ロードワークの途中なのだろう。
少し息があがっている。
「揃ったぞ!」
「ああ!校内三大美少女が揃い踏みだ」
先輩のファンが大袈裟に騒ぐ。
「嬉しいけど、優菜は大会が近いだろ」
「でもー」
「応援に行くからさ。頑張れ」
「うん!」
優菜は機嫌を良くして、ロードワークに戻っていく。
「あなた達も相変わらずね。じゃあ、私も部活に戻るわね」
千愛と
「何故くっつかないのかしら?リア充は拡散すればいいのに」
リヴァンネ先輩もファンを引き連れ去っていく。
「お主の側は退屈せんの」
太郎さんは賑やかなのがお好みのようだ。