第4話 クラスメイトと僕
僕こと、佐鳴太陽の朝は早い。
両親共に仕事が忙しいため、家事は僕の仕事だ。
「ほほう。手際が良いの」
「婆ちゃんの教えが良かったからね」
洗濯を済ませ、同時進行で朝食と弁当を作り食べて出る。
丁寧語が取れているのは、昨晩太郎さんからの要望があったから。
「行ってきます」
一人の家でも挨拶は欠かさない。
これは母さんの教えだ。
「ここがお主の通う学舎か」
(そうだよ)
グラウンドや体育館からは、運動部が朝練に精を出している。
朝練をするには遅く、普通に登校するには少し早い時間。
それが僕の登校する時間。
「花壇に水やり。お主は緑化の役職に就いておるのか?」
(それだけじゃないけどね)
一通り水をあげ、道具を片付ける。
それから今日の学業が始まる。
「はい。では、始めてください」
本日の二限目は調理実習。
先生が手順の説明を終え、僕らは調理に入る。
「佐鳴と一緒の班か。アタリだぜ」
「本当よね。佐鳴くんに率いて貰うと良い物出来るし」
「彼氏にするなら一組の真羅くんだけど、ダンナにするなら佐鳴くんって感じ?」
家事に慣れているからか、裁縫や工作も含むこの手の授業だとよく便利使いされる。
「良いのか?それで」
(うん。別に気になっていないよ)
僕だって班のメンバーを遊ばせるつもりはない。
容赦なく、指示を飛ばす。
「本当、佐鳴って器用だよな」
「慣れているだけだよ。君だってやれば出来るじゃないか」
「そのやる気が起きないんだよ」
一般の高校生、特に男子は家事に無関心なのは仕方ない事なのだろう。
「きれいに作るのう。太陽や。少し分けてくれんか?」
(神も物を食べるの?)
「うむ。神前に供えられた物は食べられるのじゃ」
僕の分を太郎さんにお供えしてみた。
「うむうむ。ありがとうのう」
お供え物は、その後人が食べる。
それが常識らしい。
「授業はここまで。じゃ、この前の小テスト返すぞ」
クラス中から小さく不満が漏れる。
「番号順に呼ぶから、呼ばれたら取りに来るように」
答案が順次返却されていく。
「以上だ。よく復習しておけよ」
科目担当の先生が教室を出ると、早速答案の見せ合いが始まる。
「よ!佐鳴はどうだ?」
「まあまあ、かな?」
「どれどれ……、確かにまあまあだな。結構ケアレスミスが目立つな」
「僕自身そう思うよ。そっちはどう?」
「赤点ギリギリ。今回の難しくね?」
僕の成績はあまり良くない。
赤点圏内は科目こそ無いが、お世辞にも優秀とは呼べない。
「なんじゃ。この程度の問題に躓いておるのか」
(太郎さん解るの!?)
周りからクラスメイトが散ったタイミングで太郎さんが言う。
「儂は知識の神と言う側面もあるのじゃよ。神には複数の顔を持つ者もおる。中には荒ぶる悪神と善良なる守護神を両立させとる奴もおったの」
(亀の甲より歳の孝……か。太郎さん、勉強教えて)
「構わんよ。それが願いその1じゃな」
太郎さんは日本生まれの神だけど、意外と世界史や英語にも詳しく、分かりやすく教えてくれた。