第25話(完) 太郎の爺さんとオレ
最終回です。
短い間でしたが、ありがとうございました。
オレはこの町が嫌いだ。
観光地でもなければ、特産品もない。
海が綺麗だが、海水浴に人が来る事もない。
そんな田舎なこの町がオレは大嫌いだ。
オレはいつも、悩みがあると近くの公園のベンチに座り、何もせずにボーっとしている。
高校進学を目前に控えた秋。
活気に満ちた周りに比べ、オレは特に感じる物が無かった。
進学する高校は、勉強にイベントに、なにかと熱心な校風だ。
そのわりに、真面目にしていれば落ちる事はほぼ無い、どこにでもある公立校。
オレの学力なら、下手しない限り問題ない。
「何のために生きているんだろうな?」
誰もいない公園。
オレの呟きは秋空に消える。
「ん、何急いでるんだ?あのオッサン」
公園に沿って、自転車で爆走するオッサンが一人。
その行く先を見ると、車が交差点にものすごい速度で近付いている。
「おいおい。このままじゃぶつかっちまうぞ」
だが、どちらも速度を落とす様子はない。
「そこのオッサン!車来てるぞ!!」
突然の大声に驚いて、それがオレ自身の声だと気付きまた驚く。
声が届いたのか、オッサンは自転車を止め周りを見渡し、オレの方を見る。
そして、オレに近付いてくる。
「いや、助かったよ。ちょっと急ぎの用事があってね」
オッサンはオレの隣に勝手に座り、礼を言ってくる。
「なら、こんな所で座ってて良いのかよ」
「良くはない。けど、君にお礼をしなきゃ僕が怒られるよ」
このオッサン、どこかで見たような?
「そうだ!自己紹介がまだだったね。これを」
名刺を貰った。
名前を見て、思い出す。
「オッサン、アニマルセンターの人か。この前テレビでみたぞ」
「はは。ありがとう」
照れくさそうに笑うオッサン。
この町で奥さんと二人三脚、動物愛護の活動をしているのだとか。
「さて、僕は行こう。命のお礼は………、うん。これが良い」
とだけ言い、オッサンは自転車で去っていった。
「これが良いって、何も貰ってねぇぞ」
「ほっほっほ。よもや恩返しに儂が差し出されるとはの。思ってもみなかったぞ」
今度の声はオレのじゃない。
間違いなく、爺さんのものだからだ。
「儂は神をしている太郎という。先ほどの男に憑いていたんじゃが、契約にのっとりお主に鞍替えしたのじゃ。よろしくの」
半透明。
浮いている。
何こいつ?
「聞いとるのか? 反応せんか」
「いや、そりゃ反応に困るわ!何?神様?普通信じられるか!」
オレはツッコミキャラじゃない。
だが、せざるを得ないだろ!
「じゃが。事実じゃ」
あっさり言う太郎とか言う爺さん。
「そうだ!さっきのオッサン。何か知ってるに違いねぇ」
名刺に書いてあるケータイ番号にかけてみる。
が、
「電源入ってねぇ!」
「今、あやつは病院じゃ。家族が増えると喜んどったからの」
急ぎの用事って、それか!
子供が産まれる日に死んだら元も子もねぇだろ!
てか、産気づいた嫁ほっといて、見知らぬ中学生と世間話すんじゃねぇよ!
「はぁ。しゃーねぇ。とりあえず信じるわ」
あのオッサンには、後でぜってぇ事情を聞き出す!
「で?太郎の爺さんつったっけ?」
「うむ」
「神様なら、なんでも出来るんだろ?」
「いや、格が高くないからの。なんでもは出来んぞ」
出来ないのかよ!
「でも儂は知識の亀神。なんでも知っとるぞ」
「あっそ。まぁ良いや。願いが見つかるまで、適当によろしく」
「うむうむ。因みに、一般の人に儂の姿は見えぬし声も聞こえん。重々、気を付けるのじゃ」
それはもっと早く言え!
「して。お主の名はなんじゃ?」
「オレか?オレの名は………」
これが、オレと太郎の爺さんの出会いだ。
次回作はだいぶ先になりそうです。
皆さんが忘れた頃に投稿すると思うので、その時はよろしく。




