第24話 卒業と僕
太陽のお話はこれで一区切り。
次が最終回です。
「おはよう」
「よ!太陽。手応えどうだ?」
遠い地で入試を受けてきた翌日。
教室に入るなり、蔵人に声をかけられる。
「解答欄全部埋めて来た。けど、あちこちケアレスミスがあるような気がして不安」
「太陽なら大丈夫。俺が保証するぜ」
「ありがとう。蔵人の入試ももうすぐだろ?」
蔵人は親の紹介も推薦も拒否して、一般で受けると言う。
しかも滑り止めなし。
蔵人以外がやろうものなら、殴ってでも止める暴挙だ。
「佐鳴!そろそろ真羅返してくれ」
「悪い。自主勉中だったか」
蔵人を自主勉組に返し、僕はホームルームまで入試の不安と格闘する。
「太陽はいつも心配性じゃのう」
二月末。
入試の結果はまだ届かない。
もしかしたら落ちたんじゃ?
そんな不安で体が重い。
それでも日々は流れていき、卒業生を送る会。
「なあ、太陽。祭り部はなにしてんだ?」
後ろから蔵人が小声で話しかけてくる。
この晴れの日に、祭り部が何もしないのはやはりおかしい。
「バレンタインもハブだったろ。先代にこの仕打ちはないんじゃね」
恋人達の祭典、バレンタイン。
僕と優菜、もしくは蔵人と千愛は、参加すれば上位確定で盛り上がりに欠けると、現外長の猿藤自ら参加しないよう頼みに来た。
二人きりで過ごしたかったから、二つ返事で受けたけど。
そのまま送る会も終了。
後はクラス単位で順次退場か。
「祭り部見参!佐鳴太陽はどこだ!」
このタイミングで!?
何考えているんだ?
「太陽ならここだぜ」
「蔵人! 何を!」
唐突の裏切りだ。
蔵人は立ち上がり、僕の場所を周りに知らせる。
「確保!!」
僕はあっという間に祭り部に囲まれ、外に連れ出される。
「な!何事だ?」
「これはこれは。面白くなったのう」
僕の質問は全て無視。
ただ連れていかれるまま、学校の敷地内を移動する。
「到着!皆さん、主役の登場です!」
万雷の拍手で迎えられる。
「ここは………」
「懐かしいのう」
そこはかつて、飼育エリアと呼ばれていた場所。
ゲージの類い一切が昨年度のうちに撤去済みとなったただの空き地に、沢山の人が詰めかけていた。
「この人達は………」
「分かりませんか?今日来てもらった彼らは、先輩から動物を譲って貰った人達ですよ!」
言われて思い出す。
僕は全員と会って、話もしている。
他でもない、ここで。
「いかがですか?」
「先輩の為に集まってくれたんですよ」
「どうしても難しいって人からは、写真と手紙を預かってます!」
言葉もないよ。
人も笑顔で、動物も健康そう。
この光景こそ、僕が望んだものの姿だ。
皆さんは口々に、動物との生活の様子を語ってくれる。
「皆さん。今日はありがとうございました。これからもお元気で」
「もっと気の効いた言葉は言えないのか?」
後ろを見ると蔵人と千愛、そして優菜。
「案ずるな。佐鳴はこの光景だけを信じればいい」
獅童先生も当然いた。
結果の届かない僕を気遣って、僕以外全員で企画してくれたようだ。
その日の放課後。
家に大学から郵便が届いた。
合格通知だ。
「卒業おめでとう!」
「先輩!お元気で!」
三月。
まだ少し肌寒い日。
僕らは高校を卒業する。
あちこちで卒業を祝い、別れを惜しむ声がする。
「俺達もこっからバラバラだな」
「蔵人と千愛も町を出るからな」
校門で蔵人と語る。
その間、クラスメイトや祭り部といったメンバーと挨拶を交わす。
蔵人にも、沢山の人が寄ってくる。
「何かあったら連絡くれよ」
「ああ。困り事の時には助けを求めるよ」
「困り事だけじゃなくてだな」
話す事は尽きない。
小学校からの付き合いは伊達じゃない。
「お待たせ」
「こっちも終わったよ」
それぞれ挨拶をしてきた優菜と千愛が合流する。
これから僕の家で卒業祝いだ。
「じゃ、行こうぜ」
「待った!ふう……、間に合ったか」
家に向かおうとするタイミングで、獅童先生がかけてきた。
「佐鳴。私の最後の生徒であるお前に、挨拶なしはありえないからな」
「先生、定年おめでとうございます。先生方で集まると聞いたので、挨拶は控えてました」
「要らん遠慮を。これが、私の住所だ。年賀状ぐらい送ってこい」
手渡されたメモ用紙を受け取る。
「高校にけっこう近いんですね。あれ? 天船獅童?」
「言ってなかったな。獅童は名前だ。名前で呼ばれる先生に憧れていたからな」
三年間、全く気付かなかった。
良い笑顔を浮かべる天船獅童先生と別れの挨拶をして、先生は職員室に。
飲み会が企画されているらしい。
「よし!今度こそ行こうぜ!」
そして僕らは、まずはデパート。
「僕は獣医になって、人と動物を繋ぐ!」
「俺はグループ内で出世して、広兄と世界に座す!」
「私は蔵人を助け、真羅を護る!」
僕らはジュースを片手に夢を叫ぶ。
それぞれの道を行く為の決意表明だ。
「決めた! わたし、アニマルトリマーとトレーナーの資格を取る!」
「優菜。それって」
「そ! 太陽が動物達の健康を守るなら、わたしは見た目をキレイにするの」
公私に渡って僕を助けてくれるのか。
「調べてみたら、太陽が行く大学でも取れるみたい。だから、来年もわたしは太陽と一緒だよ」
「そっか。待ってる」
「うん! 一緒に暮らそ」
つまり実質結婚だな。
おじさん達に挨拶しなきゃな。
僕と優菜と動物達。
時々、蔵人達もくる生活。
楽しいだろうな。




