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第23話 冬と僕

締めは当然、主人公の太陽。

文化祭の後始末も終わり、文科系の部活も世代交代の時。


「じゃ、次の会長は猿藤ね。よろしく」


僕は祭り部の二年、猿藤迅(えんどうじん)の肩を叩いて教室を出る。

出ようとする。


「ちょっと待った!何で俺なんですか?」


その猿藤が僕を引き止める。


「不服か?」

「はい!納得出来ません」


事実、猿藤は提案を数出す事もなければ、舞台を盛り上げる事もない。


「理由はだな。君が調整役だからだ」


だが、活動を円滑に行うために必要な事をわきまえており、そこに全力を尽くす事が出来る。


「お祭り好きには責任感を与えず、好きに言わせた方が輝く。それに伴う厄介事を処理するのが、上の仕事さ」


それが僕のリーダー論。


「君の代から伝説のあの人の影響もなくなる。僕がそう言われたように、君も君の思うがままにやれば良いさ」


こうして会長の座を押し付けて、他の三年と共に祭り部を引退した。






「あー。期末返すぞ」


やる気なさそうな態度に反して、とても有能な僕らの担任が宣言する。


「名前呼ぶ前に、お前達に言う事がある」


珍しく真剣な口調に、クラス中が静まりかえる。


「今回の期末だがな……」


あちこちで息を飲む音がする。

何かトラブルでもあったのだろうか。


「赤点0人だ。よくやった」


さらっと言い放った言葉に一瞬ポカンとする僕らだったが、その意味を知って喜びが爆発する。


「毎年この時期になると、泣く泣く大学のランクを下げる生徒が出るもんだが……。ほとんどが志望圏を維持。中には上方修正も出来る奴もいた」


「楡と庭坂、お前らの事だぞ」と、特に騒ぐ二人を名指しする。


「今年は真羅のおかげで楽ができた。礼を言う」


降雨コンビも蔵人に頭を下げる。

実際蔵人によって、クラス全員が特訓を受けていたからな。

千愛が合流してからは、学年全体を相手にしても問題なかった。


「ま。後は健康第一で。学力伸びても風邪をひいたら意味ないからな」


そう締めくくり、先生は返却するために生徒の名前を呼ぶ。






「うん。噂は聞いてるよ。今年の三年が出来すぎて、皆プレッシャーを感じてる」


クリスマス。

受験勉強の息抜きに、優菜と町の中心部を散歩。

一般とは違うだろうけど、僕らにとっては十分デート。


「優菜はどうだ?キツイか?」

「ううん、大丈夫だよ。それに忘れたの?わたしも小さい頃から蔵人さんに勉強を教わっているんだよ?」


そう言えばそうだ。

僕も優菜も、小学生の頃から蔵人と勉強してきた。

中学に上がる頃には、蔵人から勉強を教わっているようなものだった。


「だから心配せずに夢を追いかけてよ。必ず追いつくから」

「優菜」


目頭が熱くなり、他所を向く。

神様と天使さんが涙を流しているのが見えて、僕のは引っ込んでしまった。


「そう言えば。父さん達、正月休み取れるって」

「おじさん達が帰ってくるのも久しぶりね」

「ああ。それで、元日は蔵人の所だろ。でもさ。二日か三日に正月ができたらなと思うんだ。おじさん達も一緒に」

「良いね。うん。お父さん達に伝えておく」


そんな話をしながら、僕らはただ歩く。






年明けて、一月三日。


「優菜ちゃーん!いつ見てもかわいいわねー」

「おばさん!そんなに抱きつかないで!」

「いいじゃなーい!」


普段はキリッとした女教授である母さんは、酔うと途端に抱きつき魔となる。


「変わらないわね、この子も」


同い年の親友をこの子呼ばわりするおばさん。

自分の娘がピンチなのに、助ける素振りもないんですか?


「ほら、その辺にしてあげな」

「やー」


結局、助け船を出したのは父さん。

母さんを優菜から引き離そうとする。

それに抵抗する母さんだったが、


「やり過ぎると、嫁に来てもらえなくなるぞ」


の一言で沈黙した。

しぶしぶ優菜を解放する。


「でも、嫁に来てもらってからなら大丈夫だと思うぞ。姑にいじめられて離婚する嫁はいても、可愛がられて離婚する嫁はいないからな」


父さんのこの発言に、母さんはまた元気になる。


「太陽。お主は庇わないのかの?」


僕が行くと、矛先は一人息子に向かうんだ。

中学生になってからは、酔った母さんに近寄らない事にしている。

おじさん?

酔い潰れてソファで寝てるよ。

恨めしそうな優菜の視線を浴びながら迎える、両家の正月。


大学入試まで、およそ一月。

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