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第22話 秋と私

そして、千愛。

初めての語り部。

高校三度目の体育祭。

私は少し憂鬱な気分。


「あ!千愛さ……じゃなかった、真嶋先輩!」


聞き慣れた声。

振り返る前から、声の主は明らか。


「優菜。今日も元気ね」


私の友人、有部優菜。

いつもは気安い間柄だけど、他人の前では私に配慮して先輩付けする優しい子。


「はい!わたしの数少ない取り柄ですから!」


優菜は何かと自己評価が低いのが珠に傷。


「優菜!先行ってるね!」

「うん!」


去って行くのは、優菜のクラスメイトの牧菜さん。

気を使わせたかな?


「千愛さん。大丈夫?体調悪い?」

「体に不具合はないわ。ただ、今年……」

「そっか。蔵人さんと離ればなれだからね!ロミオとジュリエットで良いんじゃないかな!」


私のクラスメイトにも一人残らず、そう言われた。

ロマンチックなだけなら、私も構わない。

むしろ、嬉しい。

でも……


「優菜。蔵人の弱点って、何か分かる?」

「弱点?勉強運動共に死角なし。太陽には劣るけど、家事もそれなり。好き嫌いも無かったはず……」


真羅蔵人。

私の恋人で、生涯共に生きると誓いあった人。

彼は誰から見ても、完全無欠。


「それは私。蔵人は私とそれ以外が天秤にかかると、それがなんであれ悩んだ末に私を選ぶ」

「それのどこが問題なの?」

「例えば。今日私が「手加減して」と言えば、蔵人は必ず負けてくれる。真羅の人間として、それは悪癖なの」


だから私は、蔵人のために敵になってはいけない。


「もしかしてさ。千愛さんと蔵人さんって喧嘩した事無いでしょ」

「え?ええ」

「やっぱり。良い!相手を思うなら時にぶつからなきゃ!」


優菜と太陽はそこそこ戦歴があると言う。

「わたしけっこうワガママだし、太陽も悪い事は悪いって言う方だし」と、笑いながら。


「ほら!夫婦喧嘩の予行練習。学校巻き込んでやっちゃいな!」


一つ年下のこの友人は、私より少しだけ大人。


「わたし達も今日の結果に放課後デートの奢りを賭けてるの!」


優菜達もロミジュリらしいけど、それを楽しんでいる。

私も楽しもう!






「体育祭からこっち。一人でいる事が多くない?」


クラスメイトの一人、須藤瀬里(すどうせり)さんが文化祭の準備の手を止めずに質問する。


「うん。あの喧嘩から互いに強くなろうって決めたの」


婚約に不満はないし、蔵人以上の人は考えられない。

でも、この感情が愛ではなく依存かもしれないと、あの日気付いた。


「あの真羅蔵人の側にいるために、私自身も強くならなきゃ」


私は一人で立てる強さ。

蔵人は必要ならば、私を後回しに出来る強さ。

今まで好調だった分、ここで成長が必要だった。


「あらそ。お幸せに」

「ええ。瀬里さんも」


瀬里さんには去年のクリスマスからお付き合いしている彼氏がいる。

同じくクラスメイトの伴田九朗(はんだくろう)さん。

二人は話し合い、笑い合い、共に作業に勤しむ。

寄り添い合う二人を見ていると、決意が揺らいでしまいそう。

仲睦まじい恋人達の姿が私と蔵人に投影されてしまう。






「極端だね。二人が良いなら止めないけど」

「でも、それも今日まで。文化祭が終わったら、一緒に勉強を教える約束だもの」


蔵人の親友で、私の友達。

佐鳴太陽と文化祭を歩く。

受験生である三年生は企画に力を入れず、これからの受験勉強のためにこの二日間、束の間の休みを満喫する。


「太陽は良いの?優菜をほっといて」

「あいつは二年だからね。クラスでも部活でも重要なポストに就いているから、去年みたくおいそれと連れ去る事は出来ないさ」


去年の今頃、二人は付き合い始めたから、今日は一周年の記念日のはず。

それでも相手の立場を考えて一歩引く。

優菜同様、強くて優しい人。

二人は本当にお似合い。


「勉強の進みはどう?」

「油断しなければ大丈夫」

「そっか。僕の方は後一押しってところかな」


太陽と二人きりというのも、久しぶり。

思えば彼の世界も狭かった。

私達と獅童先生と動植物。

その他は付かず離れずの距離を取っていたと思う。


「いた!会長、すみません!」

「何事だ!?」


それが今ではお祭り軍団の目附役。

世界も見識も器も、一気に広がった。


「悪い、千愛。呼び出しだ」

「気にしないで、蔵人によろしく」


太陽を見ていると思う。

私も強くなれると。

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