第21話 夏と俺
続いて、蔵人。
6月の頭に行われた修学旅行は、京都奈良大阪の定番コンボ。
別のクラスになってしまった千愛と自由行動の時に合流して、太陽と三人で観光をした。
中学の時と全く同じで、面白みが全くない!
「蔵人は千愛といるだけで、十分幸せそうだが?」
「それはそうだが!大体の見所は既にチェック済みだろ?」
「まあまあ。優菜へのお土産を見ながら、ぶらりとすれば良いと思うわ」
神社仏閣は見飽きていて、USJは大混雑。
千愛の言う通り、ウィンドショッピングが一番楽しかった。
「真羅は、~大か。今の時点で十分受かる。むしろ、もっと上も目指せるが……」
先生。
そこは、家庭の事情って事で。
「このクラスに規格外がもう一人いるからな。先生はそいつの対応にかかりきりになりそうだ。だから……」
俺の役割は、自分の成績を落とさないよう気を配りつつ、周りの成績アップに貢献する事。
分かっていますよ。
「顔も良くて、勉強出来て、運動出来て、家が金持ちで、美人な彼女がいて」
「全く、ずるいよな」
「愚痴るヒマがあったら手を動かす!もう降夫と時雨しか残っていないぞ」
「「はーい」」
楡降夫と庭坂時雨。
通称、降雨コンビと呼ばれるこいつらは、正直言って俺のクラスで一番頭が悪い。
いや、学年で、と言った方が正しいかもしれない。
「蔵人センセー。ここ、分からないッス」
「俺はここ」
「今見てやる」
そんな二人と俺がやっているのは自主勉だ。
去年まで図書室でやっていたそれを、今年から教室でやっていた。
するとクラスメイトから次々質問が舞い込んできて、いつしか希望者全員に対して勉強を教える型になった。
(去年もやった事だし、それはそれで構わないんだがな)
評判を聞いて他のクラスからも人がきている。
秋になれば部活も引退するだろうから、もっと増えるだろう。
「千愛はどうしているかな?」
やる気があるのは良いが、学年下位のこいつらの参加は終了時間を遅らせる。
つまり、千愛に会う時間が減る!
「だったら辞めれば良いんじゃね?」
「やる気出して頑張っているお前らをほっとけるか」
先生からの頼みでもあるしな。
「助手に呼べば良いだろ?人が増えて手が足りないの丸わかりだぜ」
「ああ。それがあった」
もちろん千愛には部活がある。
他の部の引退に合わせて来てもらえば良い。
「よし!それまでは一人でなんとかするか!」
やる気が蘇ってくるぜ。
成績が軒並み上がった期末を終えて、夏休み。
「だと言うのに、すっかり寂しくなったな」
「あら。私と二人きりが不満?」
そういう訳じゃないし、千愛も分かって言っている。
「四人が当たり前だったからな。俺と太陽が友達になって、千愛を紹介して」
「太陽が優菜を連れて来てから、ずっと一緒だったもんね」
小中、中高の境でさえ、長い休みは四人で宿題したり遊んだり。
「去年からだよな。優菜が部活の合宿で来れなくなって、今年は加えて太陽が泊まりで大学見学」
このまま疎遠になりそうで、正直怖い。
「私はずっと側にいるわ。それは、あの二人にとっても同じ。4人組が2ペアになるだけ」
「そうだな。今更距離ごときでどうにかなる縁じゃないな!」
千愛は最高だ。
欲しい時に欲しい言葉をくれる。
「俺も太陽に負けてられねぇな!」




